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英雄、やります(仮)  作者: 星長晶人
アンドゥー教編
6/85

初バトルと術式

「……」


 俺はしばし呆然としていた。


 次々と木々が薙ぎ倒されていく様に。


 グランディアは、両翼に装備されているガトリングを乱射して、木々を片っ端から燃え滅ぼしていく。


 ディメロウスは、白い高熱の光線を口から放ち、木々を焼き払う。


 メティラティは、さっきのように重力で潰したり、上空から隕石を召喚したりと、恐ろしいまでの破壊力で木々や土を壊していく。


 フィネアは、一振りで数百の木々を薙ぎ払う。最早、斬撃というより波動に近い。黒い波動が剣を振るう度に放たれている。


 ……俺はグランディアのいる方にボーッと立ってそれを眺めている。


「……はぁ」


 何だろうな。この四人がいるせいで、異世界に呼ばれてちょっと喜んでた俺がちっぽけで不要な存在に思えてくるぜ。


「……主なのになぁ」


 面目ない。


「……術式でも試すかぁ」


 若干ネガティブになりながら、とりあえず当初の目的を思い出す。初バトルで術式を試す。それはいつかやらないといけないことだ。


「……どうやって発動させるんだろ?」


 そこからわかんないんだが。


「……術式発動」


 それっぽいことを言ってみる。……が、反応なし。


「むぅ……」


 もう案が切れてしまった。


「……念じたり、とか?」


 ーー術式発動。


 しー……ん。


「もう無理だ」


 何も起きねえ。


「……メティラティのグラビティみたいに技を言うとか?」


 それだったら、発動しないのも頷ける。術式ではダメなんだろう。


「……こういう時はウインドウか」


 お姉さんもとい、レティアがやってたように手を軽く振る。どちらの手でもいいらしく、右手の時も左手の時もあった。


「……術式でいいんじゃ?」


 ーーいや。雷術式らいじゅつしきとか炎術式えんじゅつしきとかがあるな。これを言ってみよう。


「雷術式」


 カッと左腕が光る。何かと思い袖をまくると、黄色の筋があった。


「おぉ、発動したぞ」


 これで発動の仕方はわかったぞ。あとは使い方だが……。


「適当に振ってみるか」


 物は試しだ。


「ふっ」


 軽く、左腕を横薙ぎに振るう。


「……へ?」


 俺は何が起きたのか一瞬わからず、間の抜けた声を出してしまう。


 森だった景色が、一変して荒れ地に変わっていた。……というか、焼け地とも言うぐらいに、地面が焦げていて森はなかった。


「……雷出たよな?」


 出てなきゃこんな風にはならないだろう。


「……」


 試しにブンブン振ってみるが、何も起きない。……さっき起きたのは、俺の左腕から雷が出て、森を破壊したという光景なんだが、一瞬の出来事だったしな。パートナーの誰かがやったのかもしれない。


「っ!」


 ーーと、ブンブン振っていた左腕からまた雷が放たれた。


「……おぉ」


 連発が出来ないらしい。何秒かの溜めというかタイムラグというかがあるから、それを数えないとな。バトルでいざって時に使えないんじゃ困る。


「……はっ!」


 三十秒経って左腕を振るう。そして、雷が放たれてから自分の中で左腕をブンブン振りながら数を数える。


「……三十!」


 三十秒か。バトルだと長いよな。ウインドウで術式の横にあった熟練度ってのを上げてけば縮まるんだろうか。


「術式を変えても三十使えないんだろうか?」


 変えて使えば連発出来るのか、の実験だ。


「炎術式」


 左腕に赤い筋が走る。


「はっ!」


 振るう。……が、何も起きない。


 術式を変えても、三十は使えないんだな。


「それは気を付けないと」


 バトルで三十は命取りになる。


「主」


「おわっ!? ……って、どうした?」


 パートナーの四人が揃っていた。


「そんなに驚かれるとは思いませんでした。……グロウウィングフォレストがだいたい片付け終わったので」


 そういえば。周りは草木一本生えていない荒れ地になっていた。


「さすがだな。んで、どこ行こうか?」


 四人は無傷だ。俺も、一応は無傷だが。まあ、まともに戦ったとは言えないしな。


「見たところ街や村はなさそうだったな」


 ふ~む。どうしようか。


「……グランディア、道らしきモノはあったか?」


「あったが、今の戦闘で消えてうろ覚えになってしまうぞ」


 うろ覚えでも覚えてるんだったらいい。


「んじゃ、その道がどっかに繋がってることを信じて、グランディアが案内してくれ」


「了解した。だが、その道を辿るより飛んだ方が早いぞ」


 ……そうだな。この世界には、便利な乗り物があった。


「よろしくな、グランディア」


 鷹の姿になっているグランディアの頭を軽く叩く。


「俺か」


「ああ。速そうだし、遠目で見たらただの飛竜騎士だと思われるだろ?」


「……俺の大きさじゃ、近くで見たらただの飛竜騎士とは思えんがな」


 ニヤッと、鷹の姿で器用に笑っていた。


「じゃあ、よろしく頼むな」


「了解した」


 グランディアが姿を変える。本来の、ワイバーンの王としての姿に戻った。


「全員乗れるか?」


「シューヤは誰に言っている? 俺はワイバーンの王の中の王、グランディアだ」


 要するに、余裕だと。


「……乗れ。道を辿って街に向かう」


 グランディアはしゃがんで乗りやすくしてくれる。


「はいよ。……ところで相談なんだが」


「……どうかしました、主?」


 グランディアの背に乗りながら言う。


「グランディアとかディメロウスとかメティラティって長くないか?」


「「「……」」」


 相談がこれとわかって残念な顔をする四人。


「グランとかディメスとかメティとかそんな感じで短くしたいんだが」


 愛称ってか、あだ名みたいなもんか。


「俺は構わん」


「私もです」


「はい、大丈夫です」


「私にはないの?」


 三人はいいらしい。一人不満そうなヤツがいるが。


「フィネアはフィネアでいいだろ」


 まあ、呼び名を決めてちょっとは仲良くなったかもしれない。


 というわけで、あるかもわからない街を探しに空の旅を始めた。

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