チュートリアル終了
「続いては、メテオグラビトンレックスですね?」
メテオグラビトンレックス:主に重力を操る黒い恐竜。他にも隕石を落としたり出来る。見た目はTレックスのイメージ。地上ではかなり強い。
ランクはAA級。ドラゴンには劣るらしい。
「主」
「ん?」
ディメロウスが声がかけてきた。
「何故レックスなんです? 総合的にドラゴンの方が上回ると思うんですが」
まあ、らしいけどな。
「そうだな。だが、最後のヤツを選ぶにはドラゴンじゃ厳しかったし、レックスでもドラゴンに勝てることだってあるだろうしな」
ディメロウスには悪いが。
「召喚しますよ。ーー我が主の名に基づき、彼の者と契約を交わすために召喚されよ!」
カッと再び魔方陣が光輝き、俺は目を閉じる。
「ふぇ?」
と、戸惑った声が聞こえた。
「……」
目を開けて召喚されたメテオグラビトンレックスを見る。
……俺の想像していた、黒いTレックスとは違い、普通に少女だった。ウェーブのかかった金髪に碧眼。背の低い気弱そうな美少女だ。ローブを着ていて、簡素なドレスのようなモノを着ていて、その上からでもかなりの巨乳だということがわかった。
「……召喚、ですか?」
少女はキョトンとして言う。
「ああ。だが、ホントにメテオグラビトンレックスか?」
そこは疑問だ。
「はい! ……と言っても、ずっとこの姿でいようと思います。主様のパーティーの魔法使い、という位置でいいですか?」
契約してくれるらしい。
「では契約します。メテオグラビトンレックス様、お名前は?」
「は、はい。メティラティと言います。メテオグラビトンレックスの突然変異です」
突然変異?
「類い稀なる能力を持って生まれてくることです」
俺が不思議そうな顔をしていたからか、ディメロウスが説明してくれる。
「契約しますよ。ーー我が主の名の下に、メテオグラビトンレックスのメティラティを緋崎柊耶のパートナーとします」
お姉さんが詠唱する。
「よろしくお願いしますね」
メティラティが上目遣いで言う。……本来は恐竜みたいな姿だとわかっていても、可愛いな。
「次で最後です。……本当によろしいですか?」
「ああ」
「……わかりました。最後のパートナーは、戦女神・ヴァルキリーです」
「「「っ!?」」」
三人(?)が目を見開いて驚いた。
戦女神・ヴァルキリー:女神だが、神ではない。魔物に分類される女神。戦闘専門の女神で、美しい乙女の姿。魔物の中では一位二位を争う存在だとされている。
ランクはXY級。最高ランクに位置付けられた、最強の存在だ。
「ああ、これでいい」
確認をタッチする。
「主! 戦女神・ヴァルキリーは伝承のような心優しい女神などではないんですよ!?」
ディメロウスが声を荒らげる。
「そうだ。性格が悪いヤツだと、召喚された瞬間に俺達を殺しかねん」
グランディアも怒ったような声で言う。
「あんな怖い存在に会いたくないです!」
メティラティもふるふると首を振って訴える。
「よしっ、わかった。さっさと召喚しよう」
「「「人の話を聞いて!」」」
三人(?)が叫ぶが、無視する。
「……はぁ。ーー我が主の名に基づき、彼の者と契約を交わすために召喚されよ!」
お姉さんが似合わないため息をつき、現れた魔方陣が光輝く。
「あら? 召喚なんて珍しいわね」
少なくとも、召喚された瞬間に殺すことはないらしい。
「……そこの色男が私のご主人様?」
「色男?」
俺は咄嗟にグランディアを見る。男は俺とグランディアだけで、俺は色男なんて呼ばれたことはない。
「違うわよ。あなたよ。人間の少年様」
……俺か。
黒い長髪のポニーテールに黒い瞳。白地に黒い模様が付いている和服を着た美人だ。大人っぽい雰囲気があって、妖艶なオーラを放出している。和服の胸元が大胆に開いていて、目がそっちにいきがちになる。どう見ても戦女神って感じがしない。
「……イメージと違うな」
「そう? まあ、ヴァルキリーは自由に服装を変えられるのよ。これは私の私服。似合う?」
戦女神・ヴァルキリーがクルッと一回転する。
「ああ。似合うと思うぞ」
聞かれたので、正直に答えておく。
「ありがと。それで、契約はしないの?」
……意外と言ってたよりもマシだぞ?
「しますよ。戦女神様のお名前は?」
「フィネアよ。戦女神・ヴァルキリーのはぐれ者。黒髪がいい証拠でしょ?」
そうなのか?
「戦女神・ヴァルキリーは普通、黒髪は有り得ません」
ボソッと小さな声でディメロウスが俺に囁いた。
「それでは契約します。ーー我が主の名の下に、戦女神・ヴァルキリーのフィネアを緋崎柊耶のパートナーとします」
「よろしくね、ご主人様」
にっこりと微笑まれて言われると、ドキッとするよな。
「これで終わりです。一通り終了したので、自分の名前を設定してください」
「名前を変えられるのか」
「はい。私のレティア・マクサーヌのように本名と関係なくてもいいですし、シューヤ、などの本名でもいいですよ」
……ふむ。ここは簡単に、
「シューヤにするか」
俺はシューヤ、と入力して、決定をタッチする。
「それではシューヤさん、異世界でも頑張ってください。あと、異世界はゲームではありませんので注意してくださいね」
レティアさんが笑顔で言うと、俺達の足下に魔方陣が現れる。
「俺も姿を変えよう」
グランディアが灰色の鷹になって、俺の左肩に止まる。
「んじゃ、いってきます」
「はい、いってらっしゃい」
最後まで笑顔で見送られ、俺達は光に包まれーー転移した。