パートナー召喚
「まずは騎竜・ワイバーンでいいですか?」
お姉さんが騎竜・ワイバーンの説明と確認の文字が表示されている。
騎竜・ワイバーン:普通のワイバーンとは違い、初めから専用の鎧を装備しているワイバーン。口から放つ強力なブレスや尻尾による攻撃の他、両翼にガトリングが設置されている。己を鋼に変えることも可能。
ランクはSS級。かなり強い方に分類される。
「ああ、大丈夫だ」
確認をタッチする。
「それでは、召喚を開始します。ーー我が主の名に基づき、彼の者と契約を交わすために召喚されよ!」
いつもと違う雰囲気で何やら呪文を唱えるお姉さん。ちょっとカッコいい。
カッと地面に現れた魔方陣が光輝き、俺はその眩しさに目を瞑る。
「……?」
召喚されたんだろうか。
「俺を召喚したのはお前か」
そんな声が降ってきて、俺は目がチカチカするのに耐えながら、そいつを見る。
「はい。ですが、契約を交わすのはそちらの方です」
お姉さんが片膝をついて言う。
「……ふん。こんな奇妙なヤツが俺の主だと?」
召喚されたのは、巨大な蜥蜴のようなヤツだった。鱗が身体の隅々にあって、長い尻尾があり、細い。立派な二翼もある。……ここまではドラゴンのようだが、翼に手がある。腕と翼が一体化している。全長は目測で十メートル、高さは普通の一軒家ぐらいだから、四メートルぐらいだろうか。記述通り、全身に金属鎧を纏っていて、翼にガトリングが設置されている。
「会っていきなり奇妙って……失礼だな」
乗って飛ぶイメージと違う程大きい魔物に対して、タメ口をきいた。
「ふん。いきなり無礼な口をきくか。……俺の姿を見て平伏さない人間は初めてだな」
騎竜・ワイバーンはニヤリ、とズラリと並ぶ牙を見せながら言った。
「……契約の有無はどうしますか?」
「しよう。こいつに従うのは、スリルのあるバトルが出来そうなんでな」
クックックッ、と笑いながら言う。怖いが、気さくないいヤツかもしれない。
「では契約します。騎竜・ワイバーン様、お名前は?」
「ワイバーンの王の中の王、グランディアだ」
「それでは、詠唱を開始します。ーー我が主の名の下に、ワイバーンの王グランディアを緋崎柊耶のパートナーとします」
お姉さんが詠唱を終える。特に変化はない。
「契約完了です」
「王って……。召喚していいのか?」
俺はグランディアに聞く。
「大丈夫だ。俺の下に、愚か者はいない」
自信たっぷりにそう言った。……王になると、態度も偉そうだよな。
「次の契約に移ります。白皇竜・カイザードラゴンでよろしいですか?」
再びウインドウを開く。
白皇竜・カイザードラゴン:竜の種類でもマイナーなドラゴン。ただし強力な力を秘めている。数少ない貴重なドラゴンで、回復の出来る希少種。白い鱗の鎧で身を包み、防御が堅い。やや攻撃が低い珍しいドラゴン。
ランクはSSS級。希少価値でグランディアより上らしい。
「ああ」
頷いて、確認をタッチする。
「それでは。ーー我が主の名に基づき、彼の者と契約を交わすために召喚されよ!」
カッと地面に現れた魔方陣が光輝き、俺はまた目を閉じる。
「……」
目を開ける。
「……召喚、ですか。私の主はどなたですか?」
落ち着いた雰囲気の声だった。
召喚されたのは、巨大なドラゴン。グランディアよりも一回り大きく、ワイバーンのような細かい鱗ではなく、大まかで鎧のような白い鱗に覆われている。かなり頑丈そうだ。
「多分、俺のことだな」
白皇竜・カイザードラゴンを見上げて言う。
「私の名はディメロウス。白皇竜・カイザードラゴンの王……と言うよりは生き残りですが」
ディメロウスは頭を下げて言う。
「白皇竜が人間に頭下げるなんて信じられんな」
「……白皇竜は私一体。絶滅を防ぐには人間に頭を下げることなど些細なことですよ」
白皇竜はそっちの世界じゃ有名なんだろうか。グランディアも知ってるみたいだし。
「契約しますが、よろしいですか?」
お姉さんがディメロウスに聞く。
「はい、もちろんです」
頷く。
「では。ーー我が主の名の下に、白皇竜の王ディメロウスを緋崎柊耶のパートナーとします」
お姉さんが詠唱を完了する。グランディアの時とは違い、変化があった。
「「「えっ?」」」
俺、お姉さん、グランディアの声がハモった。
「どうかされましたか、主」
ディメロウスが、人間の女子になっていた。
白いロングヘアで右目を隠していて、出ている左目が白い。なかなかスタイルも良く、それがわかる程度に白い鎧を着ている。左腰に白い長剣が差してある。服も白く下はスカートだった。顔も良く、美少女だが、無表情だ。
「……いや、何で人になってんの?」
「これですか? これは主が接しやすいように変化した姿です。表向きには主のパーティーとして行動しようかと」
なるほど。よく考えてるんだな。