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プロローグ

「……?」


 俺ーー緋崎あかさき柊耶しゅうやは、驚きで固まった。


 だってそうだろ? 居間でテレビを見ながらポテチかじってたら、いきなり大草原だぞ? 誰だって固まるだろ。


「……どこだよ、ここ……?」


 掠れそうな声で呟く。一つ言えるのは、日本じゃないどこかってことぐらいだ。


 山の陰さえ見えない、辺り一面が草原だ。


「あの……」


「っ!?」


 いきなり、後ろから声をかけられて、ビクッとなる。


「驚かせてしまってすみません」


 振り向くと、藍色のストレートヘアに蒼い瞳を持ち、胸元が大胆に開いた簡素なドレスを着ている物腰の柔らかそうな美人のお姉さんが立っていた。


「……え、え~っと?」


 上手く言葉が出てこない。この人が何者かもわからないし、さっきの混乱もあまり落ち着いていない。


「落ち着いてくださいね」


 美人のお姉さんにそう言われて、ゆっくりと深呼吸をする。


「……ふぅー」


 大きく息を吐くと、普通に話せる程度には落ち着いた。


「落ち着きましたか?」


「はい、大丈夫です」


 学校の教師連中にも敬語は使わないのに、思わず美人のお姉さんには使ってしまった。お姉さんの持つ、穏やかな雰囲気がそうさせるのだろうか。


「敬語じゃなくてもいいですよ」


 微笑して言う。……俺が普段敬語使わないってバレた? まさかな。


「じゃあ、普通に喋るけど。……お姉さんもここに連れて来られたのか?」


 正直な疑問をぶつける。お姉さんが何者なのかは、大きく分けて二通りあるが、どちらだろうか。


「……いいえ。私があなたを召喚しました」


 ……。

 …………。


 俺が考えた二通りの正体は、俺と同じくここによくわからずに連れて来られた。もう一つが、俺をここに連れて来た側の人。


 どちらかだとは思ってたが、まさか後者だったとは……。


「召喚?」


「はい。あなたがいて、私の故郷のある、地球のある世界から召喚しました」


 ……。お姉さんも俺と同じところから来たのか。


「地球のある世界ってことは、ここは異世界……なのか?」


「そうとも言えません。ここはあなたのいた世界と、もう一つの世界との境目に位置する亜空間、と言えばいいんでしょうか」


 要するに、地球じゃないってことだろ?


「……何で俺が呼ばれたんだ?」


 それが一番の疑問だ。世界には数多くの人々がいて、俺は普通の高校二年生。俺より優れた人だって、世の中にはたくさんいる。


「私をここに召喚した、神様の召喚リストに載っていたからです」


 召喚リスト?


「神様は私に、召喚リストに載っている人間全てを、記された順番通りに召喚しなさい、と」


 俺が怪訝そうな顔をしていたからか、お姉さんは説明を加えた。


「基準はあるのか?」


「……わかりません。ですが、選んだ理由のようなモノが書いてあります」


「書いてあるのにわからない?」


 共通性がないんだろうか。


「はい。ある人は政治家。ある人は殺人鬼。ある人は詐欺師。またある人は、中高生だったりします」


 いいヤツを集めるでもなく、悪を集めるでもなく、か。


「俺のところには何て書いてある?」


「印象的だったので覚えていますよ。高校二年生。そして、決めゼリフ、でしたっけ?」


 お姉さんは言って、意地悪く笑う。


「ちょっ! まさかーー」


「人を助けるのに、理由がいるのか?」


「っ!!」


 ハズい! 確かにそれをよく使うけど、正面から言われると凄いハズいんだけど!


「他の人は性格や趣味などが書かれているのに、一人だけ決めゼリフって……。凄い印象的でしたよ」


 くすくすと笑って言う。……神の野郎、個人情報筒抜けの上に人のハズい部分を狙うとは、いい度胸だ。いつか絶対に殴る。


「……そういや、神って何?」


 結構重要なとこスルーしてたな。


「神、ですよ。異世界を創造し、異世界で最も崇高されている神です」


 つまり、神は神だと。


「何で他の世界から人を呼ぶ必要があるんだ?」


 創造した神なら、例えば、俺とそっくりなヤツを生み出せばいいだろ?


「……詳しくは知りませんが、英雄を生み出すため、世界の綻びを直すため、と言っていました」


 それなら、そこにいる住人でもいいだろうに。


「異世界は剣と魔法の世界。そこには当然魔物もいて、外に出れば命の危険が伴います。人も進化しますが、魔物も進化します。魔物の成長が早いと住人に被害が及びます」


「……そういう被害を食い止めるってことか。それが召喚リストに載っている人間。英雄になる可能性のある人物ってわけか」


「はい。地球でもある程度能力があり、魔法と武器で異世界に行っても活躍出来る可能性のある人物、が召喚リストの共通点だと思っています」


 ……それはいい。だが、俺はどうだ? さっきの決めゼリフだって、お人好しだとよく言われるだけだし、最初はただカッコつけただけだし。


「……ここで引き返すことも出来ますよ?」


 お姉さんが真面目な顔をして言う。


「……でも、断ったヤツはいない?」


「はい」


 だろうな。ある程度異世界に行きそうなヤツじゃないと。


「ま、こんな面白そうなことはないだろ」


 日常に飽きた人達。それも、召喚リストに載る条件だろう。


「それでは、チュートリアルを開始します」


 お姉さんはここに来て初めての営業スマイルで言った。

更新は不定期です。


 のんびりやるので気長にお付き合いください。

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