Your darling is (not) Santa Claus
たぶん、俺の作品で最も短い短編かもしれません。
「はい、これどうぞ」
不意に、マフラーを渡された。
相手はもちろん、赤の他人ではない。今年恋仲になったマキだ。
「これって…?」
「クリスマスプレゼントだよ、ススム」
にこやかな顔で言う。「恋人からクリスマスプレゼントを渡されたい!!」とずっと願っていたが、ついに叶った。
「……あれ? ススムからのクリスマスプレゼントは…?」
へ?
「…無いの…? …ススムも「あげる」って言ってたじゃない!!」
えぇ!? いつの間にそんな事に!?
……と思いきや、心当たりがあった。
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遡ること3日前……
「もうすぐクリスマスだねっ♪」
「あー…そうだな…」
「ねーねー、クリスマスプレゼントちょーだい!」
「いや、あのな……恋人はサンタクロースじゃないんだぞ…」
「えー!? いーやーだー!! 欲しいのー!! 欲しいったら欲しいのー!!」
「あー…分かった分かった。当日にちゃんとあげるから…」
「ぃやったー!! わたしからも用意しとくからね!!」
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いや、アレはそう、アレだ。いつもの冗談かと思って、聞き流すつもりで言ったんだ。まさか本気だったとは…
「ひどーい!! わたしがプレゼントあげたのに、ススムはくれなかったー!!」
怒ってはいるのだが、相変わらずかわいい。マキは、言動の1つ1つにあどけなさがあってかわいいのだ。でも、状況が状況なので、にやけるのを必死で堪える。
マキはとうとう、拗ねて外方を向いてしまった。涙目になってた気がした。
それにしても、お返しのクリスマスプレゼントはどうしよう。
いい年こいて、財布の中の現金はほとんど残ってない。おれも今年で20を過ぎたというのに。
そういえば、誰かがこんなことを言ってたような気がする。
「プレゼントに大切なのはお金ではない、心だ」と。
……そうだ!! あるじゃないか!! お金もかからず、なおかつ今すぐにでもあげれるプレゼントが!!
「マキ、プレゼントちゃんとあるよ」
「えっ!? ほんと!?」
振り向いてきたマキを抱き寄せ、唇を重ねた――つまり、キスをした。
「確か、初めてだったよね?」
唇を離してそう言ってからも、マキはしばらくきょとんとしていたが、突然真っ赤になった顔を手で覆い、言葉になってない声を出しながら恥じらった。
「あのー…ごめん…嫌だった…?」
どうしよう、さすがにまずかっただろうか。そう狼狽えていた。
しかしいつの間にか、マキはおれの方に向き直っていた。さっき恥ずかしがっていたのが嘘みたいに、無邪気な笑みを浮かべ、こう言ってからおれに抱き着いてきた。
「ススム、最高のプレゼントありがとっ♪」
イルミネーションと雪の明かりが、おれ達を優しく包み込む。
Wham!の「Last Christmas」に山下達郎の「クリスマス・イブ」、どんなに切ないクリスマスソングでも、おれ達のこの気持ちを沈ませる事はできない。
―完―
本編はいかがでしたか?
主題歌はAKB48の「ノエルの夜」ですが、例のごとく訳あって歌詞は載せないことにしています。
すみません。
先ほど、音無さんがススム&マキのイラストを描いてくださいました。またしても的を射たイメージイラストでした!! ありがとう!! 本当にありがとう!!
http://blog.livedoor.jp/kayazaki68-otonasi/archives/5012829.html