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#8 再会

雪「茜…あの子が他人と話せるなんて……やっぱりあたしは枷になってたのかぁ。」

百合「泣くなよ。茜ちゃんも成長したって事だろ。」

雪「だって…だって!」

百合「分かってる。あんたは良くやってたよ。それも茜ちゃんに伝わってるはずだ。あんたの妹だろ。」

雪「でも…こんなのって…あんまりだよ……。」


あたしは泣いた。

つきっきりで百合が慰めてくれた。


次の日あたしの携帯に知らない女、皐月と名乗ったメールが来た。


その皐月と言う女は茜の妹らしい。

皐月から茜の住所を割り出す事に成功した。


そして百合に付き添ってもらいながらその場に向かう。

茜とは一年ぶりに会う事になる。

素直に嬉しかった。

そして何であたしの前から消えたのか問いただす。

半信半疑だったが茜の手がかりはこれしかない。


茜の家の前に着いた。

大きなアパートだった。


お金持ちと結婚したんだ。


あたしは正直辛かった。

それとは裏腹に全力で祝ってあげたかった。


皐月「雪さんですか。皐月です。」

雪「あなたが皐月さん。」


とても未成年には思えないような容姿だった。


皐月「嘘ついてすみません。」

雪「え?」

皐月「私が妹と言うのはウソです。でも茜さんはココに住んでます。」

百合「案内しなさいよ。」

雪「茜は今どうしてるの?」

皐月「1人で暮らしてますよ。」

百合「弟と言うのはどう言う事だ?」

皐月「それは作り話です。」

雪「なんで嘘ついたの?」

皐月「茜さんが…。」

雪「茜がどうしたの?」

皐月「私を妹として弟をでっちあげ幸せな生活を送っているからね、とお姉さんを安心させたいって。」

雪「よく本当の事を話してくれたね。ありがとう。」

百合「あんたはそれが嘘だと分かった時苦が倍増すると思わなかったのか!?」

雪「百合、この子は悪くないよ。」


百合の言葉にトゲがある。

あたしの為に言ってくれてるのは嬉しいけど。

あえてあたしは止めた。


茜の家に着いた。


ピンポーン


茜「はい。どちら…はっ⁈」

雪「茜ぇ!」


茜は全力で閉めようとした。

百合が抑えていてドアは閉まらない。


茜「お願いです!!帰って下さい!!」

雪「茜ぇ!あたしと話しよう。」

茜「お姉ちゃんと話す事なんて

百合「あんたになくても雪にはあるんだ!!」

茜「ひっ…

百合「妹に会いたくて一年も泣いたんだぞ!!」

雪「茜。今日話してくれたらもう会おうとはしないよ。」

百合「おい!?」

雪「良いの。ねぇ?茜。全部皐月さんから聞いたから。」

茜「ぐすんっ。」

雪「百合、ゴメン。せっかく来てもらったけど外で待っててくれないかな?」

百合「あぁ。」

雪「あがるよ。」


茜の部屋は質素だった。

必要最低限の物しかない。


雪「こんな部屋でよく住めるのね。」

茜「……。」

雪「全部聞いたらホントにもう茜とは会わない。約束するから。」

茜「……。」

雪「あなたの決めた事だから。全部認める。いや、あたしの見解なんてどうでも良い。でも、あたしは離れてもあなたの姉なの。あなたは姉と思ってなくてもあたしはあなたの姉なのよ。それは死んでも変わらないわ。」

茜「ぐすんっ。」

雪「自分から話してくれないならあたしが質問する。それに答えて。」

茜「うん。」

雪「じゃあまずは、内職してたのはいつ頃から?」

茜「かれこれお姉ちゃんと別れる前の5年になります。」

雪「そんな前から…あの皐月と言う子はどんな関係?」

茜「昔の私達です。最もお姉ちゃんみたいに皐月ちゃんを満足させてもらえるほどの事は出来ませんが。」

雪「そうなの。今茜はどんな仕事してんの?前の仕事は?」

茜「前も今も同じです。文章作成のお仕事です。」

雪「これで最後よ。なんで出て行ったの?それからあたしが好きで嫌いってどう言う事?」

茜「うっうっうわぁぁん!!」

雪「っ⁈」

茜「うっうっぐすんっううぅ…

雪「答えて!!」

茜「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

雪「謝んなくていいから答えて。」

茜「…私が産まれたせいでお母さんが死んじゃった……私のせいでお母さんがいなくなって……お父さんもお母さんをなくした事を悲しんで事故に遭ってお姉ちゃんも傷付けて!それなのに私は……のうのうと生きてる……お姉ちゃんから2人を奪っておいて平気で生きてるのに!お姉ちゃんは苦労して私にご飯食べさせてくれて居場所をくれて……私なんかいなければお父さんもお母さんも死なずに済んでお姉ちゃんも傷付けずに済んだのに……私が産まれたばっかりにお姉ちゃんの大切な物を全て奪い取って……大変な思いをさせて……辛い思いをさせちゃった…それなのに私は何も出来なかった……私なんかいてもお姉ちゃんを苦しませるだけで…それが私も辛かった……だからお姉ちゃんが私の事嫌ってるって思ってた……それなのにこんな私に気を遣ってくれて笑ってくれてた…私の幸せはお姉ちゃんの幸せ…だから私がいたら永遠にお姉ちゃんは幸せになれない……ううん、お姉ちゃんは私が産まれたせいで幸せになれない………お母さんもお父さんもっ……2人とも私が殺したんだ……全部何もかも私が悪いの……っ……んっうっ…もう生きてるのすら辛いよ……もうこれ以上お姉ちゃんを苦しませたくないよ……私はどうしていいか分からなかったの……憎たらしい私をお姉ちゃんの人生から消せば……少しは…幸せに……なってもらえるって……誰よりも大好きなお姉ちゃんだから……誰よりも幸せになって欲しいから。」

雪「そんな事考えてたんだ。」

茜「嫌だよぉ!!辛いよぉ!!なんで…なんで…お姉ちゃんを幸せに出来ないの…なんでこんな私がお姉ちゃんの妹なのよぉ!!……お姉ちゃんに私が何して欲しいって言っても何も言ってくれなかった…それって私が必要ないって事だから……最初から分かってたけど…改めて辛かった……お姉ちゃんの妹である事が辛かった……私の愛情は絶対にお姉ちゃんに届かないって事だから……もぉ…私どうしたらいいのか分かんないよぉ……お姉ちゃんは私の事嫌いなんでしょ……私はお姉ちゃんの事大好きなのに…お姉ちゃんは私の事どう思ってるか分からなくて…私が生まれたときから嫌われてたのかも知れないけどお姉ちゃんに拒絶されるのが怖くて怖くて……………そうだ…殺してよ!私の事殺してよ!!お姉ちゃんの手で私の事殺してよ!!こんなのあんまりだよ!!お姉ちゃんが……お姉ちゃんが…報われないよ……お願いお姉ちゃん…私の事殺して…。」

雪「茜は何も悪くないよ。だから殺してなんて言うんじゃないの。

あたしはお母さんを茜が殺したなんて一度も思ったことなんかないよ。

むしろ茜は産まれて来てくれて良かった。

こんなに優しい妹が出来て嬉しいよ。

それよりも茜が笑ってくれないのが悲しかった。

いつもあたしの顔色ばっかり窺ってるんだもん。茜はあたしの言った事一度も聞かなかった事ないし。

スポーツ万能、成績優秀。優しいし、あたしと違って顔立ちも良いし。礼儀作法もきちんと出来てる。

茜はあたしの自慢の妹です。あたしは茜に精一杯の愛情を注いてたつもりだったんだけどそんなふうに思ってたんだ。なんだか寂しいな。

茜は私の事なんか気にしなくていいのに。

人の幸せを勝手に決めつけないでくれる?確かに茜があたしの幸せを奪った事は事実だけど。」

茜「お姉ちゃん……私…私…どうしたら償えるの……何したらお姉ちゃんの為になるの……?」

雪「前みたいに茜と暮らしたいけど。茜が出てった事であたしの幸せが奪われた。」

茜「え?…そんな…だってお姉ちゃんは…。」

雪「でも、もういいや。茜は皐月さんがいるしあたしにも百合がいる。お互いに寂しくはないよね。約束は約束。これで最後よ。今日はありがとう。さようなら。」

茜「お姉ちゃん!!待ってよ!!」

雪「茜!!!」

茜「はいっ。」

雪「自立しなさい。」

茜「……。」

雪「これはあたし達のケジメ。」

茜「お姉ちゃんにもう会えないの?」

雪「約束だもの。」

茜「お姉ちゃん!また一緒に暮らそうよ!」

雪「いや、ダメよ。」

茜「嫌だよぉお姉ちゃんとお別れしたくないよ!」

雪「ならこれで納得かしら。あたしは茜が大っ嫌い。」

茜「……。」

雪「お別れよ。今からは他人同士。」

茜「うわぁぁぁん!!」

雪「……。」

茜「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

雪「あたしの事は忘れなさい。」

茜「ひどいよぉ…お姉ちゃん…あんまりだよぉ!私が間違ってたから!お願いお姉ちゃん!帰りたいよ!私をもう一度お姉ちゃんの家族にしてよぉ…お姉ちゃん……うっうっうっぐすんっううぅ。」



そう。これでいいんだ。

これなら茜は悲しむ事ない。













あたしは後2ヶ月で……















死ぬんだから。

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