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#21 迷子の子猫

茜の幼少期から続くいじめを初めて知った。

するとどうだろう。

茜の今までの人生は苦しみが殆どではないか。

あたしは負担にしかなっていなかった当時。

学校などの公共施設では度重なるいじめ。

両親を殺してしまった負い目。


果たして良い事が1つでもあっただろうか。

ここまで耐えて来た事が凄い。

そして致命傷の一撃。

皐月の自殺。


幼子の時から蝕まれた茜の心を崩壊させるのは簡単だろう。


でも。

たった1人の妹。

あたしを助ける為に自身を2度も切り裂いた勇気ある妹。

あたしの帰りを楽しみにしている可愛い妹。

そんな優しい茜に生きる希望を取り戻して貰いたい。


だからあたしは茜に言った。


雪「いい?よく聞いてね。」

茜「うん。」

雪「人生ってのはね。幸せと不幸せの2つで出来てるの。だから今まで辛い人生だった茜はこれから幸せな人生が待ってるの。お姉ちゃんが保証するわ。

だから今は辛くてももう少し辛抱してね。」

茜「私も幸せになれるの?」

雪「そうだよ。」

茜「本当に?」

雪「うん。」

茜「お姉ちゃんの言う事だから本当だね。」

雪「茜?泣いてるの?」

茜「え?泣いてないよ。」

雪「だって涙が出てるよ。」

茜「あ、本当だね。えへへ。」


未だに感情がコントロール出来てない茜に更生の恐怖を覚えたあたしは茜と川に行く事にした。

気分転換もすれば良くなるかな。

しかし、それは間違いだった。


日陰になってる膝と臑の間位の水深のちょっと深い川。

近くで涼みながら楽しい話をした。


茜「楽しい。」

雪「あたしも。」

茜「お姉ちゃん。ちょっと目瞑ってて。」

雪「うん。」


ちょっとドキドキした。

しかし、すぐに間違いだと気付く。


雪「まだ?」

茜「まだだよ。」

雪「よくなったら言ってね。」

茜「うん。」


暫く経っても返事がない。


雪「開けるよ。」


辺りに茜はいなかった。


やってしまった!


雪「茜ぇ!!」


返事がない。


あたしは戸惑わざるを得なかった。

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