#19 罪と冤罪
退院から1ヶ月後。
皐月の遺体が発見された。
TV「今日未明、都内のマンションで20代の女性と見られる死体が発見されました。
女性はこの部屋に住む一一皐月さんと思われ身元の確認を急いでいます。
死体は手首を鋭利な刃物で切ったものによる失血死で、その他に目立った外傷もなく自殺と推定されます。」
茜「………。」
茜は膝を折って立ち崩れた。
茜「そんな……。」
雪「………。」
ただ驚かざるを得なかった。
悲しい、悔しい、申し訳ない…その他の負の感情の前に驚くしかなかった。
その日から茜はまた虚な目をして表情がなくなった。
時折1人で夜な夜な泣いていた。
あたしは悔しいが何も出来なかった。
まさか自殺するとは思ってもいなかった。
本当にお母さんの所に行ったんだ。
雪「茜。」
茜「は、はいっ⁈」
雪「なんでそんな驚くの?」
茜は今にも泣き出しそうな表情で俯きあたしの腕にしがみついていた。
雪「大丈夫だよ。茜のせいじゃないから。何度も言ってるでしょ?そんな深く考える事無いんだよ。」
茜「お姉ちゃん。なら一体誰が悪いの?」
雪「悪い人なんていないの。」
茜「だって…私は人を3人も殺したんだよ…皐月ちゃんの家族も事故の被害者なんだよ!!皐月ちゃんもお姉ちゃんと同じ時間苦しめたんだよ!!それで皐月ちゃん自殺までしちゃったんだよ⁈」
まだ喋ろうとしてたけどあたしが抱きしめて止めた。
あたしは泣いた。
気付けば茜も泣いていた。
雪「痛いの痛いの飛んでけ。これでもう大丈夫だよ。」
あたしは笑って戯けて見せた。
雪「最近は沢山あって疲れた。お腹一杯って感じ。」
茜「お姉ちゃん!!!何でこんなに平気でいるの⁈人が死んでいるんだよ⁉」
雪「もう終わったでしょ。忘れたの?自分の事悪くいったら絶交って言ったでしょ。」
茜「これとそれは話が違うよ!!皐月ちゃんは家族じゃないんだよ⁉悪くないで済まされないんだよ⁈お姉ちゃんだってそのくらい分かるでしょ⁈」
雪「それでどうしろって言うのよ⁈悔やんだって始まらないでしょ⁉」
茜「……………そうだね。ごめんなさい。」
雪「あたしも悪かった。強く当たってごめんね。」
茜「お姉ちゃん。私どうしたらいいの?」
雪「百合の所へ行きましょう。」
茜「はい。でもなんで?」
雪「百合は面倒見がいいから。あたしも家族の事は感情的になっちゃうし冷静になれないけど百合はいつも正しい判断をしてくれるの。少なくともあたしはそう思ってる。」
百合の家
百合「どうした?姉妹揃って珍しい。何かあった?」
雪「うん。ちょっとね。実は皐月さんにお墓参りの時に会ったんだけどお父さんの起こした事故で皐月さんのお母さんも亡くなっていたらしいの。それで皐月が復讐って言って襲ってきたんだけどあたしを庇って茜が刺されちゃってね。今はこの通り元気でいるから大丈夫なんだけど。
それで皐月さん、茜が退院した一ヶ月後に自殺しちゃったの。それからあたしたち落ち着かなくて。」
百合「そうか。」
茜「どうすればいいんですか?私どうすれば罪を償えるんですか⁈」
百合「私は茜ちゃんは悪くないと思ってる。でも人が死んでいるのは事実。もし、茜ちゃんに罪の意識があるなら遺族の人に謝罪に行けばいいと思う。それからお墓参りは皐月さんの家族の分もする事。これ以上出来る事はないと思うけど。」
茜「そんな事でいいんですか?」
百合「他に何かある?」
茜「私は生きててもいいの?」
雪「何馬鹿な事言ってるのよ⁈」
百合「命を粗末にするんじゃないよ。自分の命でも。命は命だ。言ったでしょ?生きる価値なんて皆平等だって。だから偉い人も罪を犯せば裁かれるんじゃないか。」
茜「そうですね。そうします。」
百合「うん。」
雪「百合ありがとう。」
百合「気にするなって。」
茜「ありがとうございます。それと百合さん。私のお願い1つだけ聞いて下さいますか?」
百合「ん?何?何でもいいよ。」
茜「私と友達になって欲しいんです。」
雪「茜!!」
百合「いいよ。それじゃ前日にでも電話して。いつでも遊びに来ていいから。」
茜「はい!!ありがとうございます!!」
良かった。やっぱり百合は頼りになる。
茜にもこうやってちょっとずつあたし以外に心を通わせられる人が出来たらいいな。




