#16 素直の理由
茜「あぅぅ…どうしよ…。」
雪「ん?どしたの?」
茜が何やら頭を抱えて電卓と睨めっこしていた。
茜「っ⁈お姉ちゃん⁈」
雪「何そんなに驚いてるのよ。あたしが見ちゃいけないの?」
茜「そうじゃないですけど…。」
雪「ならどうしたの?」
茜「今月厳しいです……。」
雪「えっ?」
役割分担はあたしが水道代、電気代など家の設備環境代、2人分の家賃。
茜が食費代、交通費代、服や生理品、家具代、2人分の娯楽お小遣いなど。
まぁそれぞれに収入の差はあるため偏る事もよくあるけど。
今月厳しい?
雪「今月厳しいって?」
茜「お小遣いを無しにしても食費代が足りない…生理品も切れちゃうし……どうしよぉ…お姉ちゃんごめんなさい!私変な物買わなければ良かった。」
雪「いくら足りないの?」
茜「5万円。」
雪「5、5万円⁈変な物買わなければって何買ったの?」
茜「お姉ちゃんのマグカップ。」
雪「他は?」
茜「それだけ。」
雪「お金ないなら無理して買う事なかったのに。」
茜「だって…どうしてもお姉ちゃんに何かしてあげたかったから。もう余計な事はしませんっ。」
雪「ありがとう。別に余計な事じゃないよ。」
茜「ごめんなさい。私ご飯我慢するからお水だけでいい。お姉ちゃんが食べて。それでも少ないけど…。」
雪「大丈夫よ!こう言う時は百合に頼ればいいの!」
茜「えっ?百合さんに?でも迷惑だし悪いよ。私がちゃんとお金稼げないのがいけないのに。」
雪「百合は困ってる人見捨てられないヤツだから。大丈夫よ。」
茜「そうかなぁ。」
しかし、百合にも断られてしまった。
雪「………。」
茜「ごめんなさい!本当ごめんなさい!」
雪「いいの……はぁ。」
茜「お姉ちゃん。」
雪「よし、こうなったらトコトンやってやる!」
水道代はなんとかなってる。
カップ麺を沢山買って来て一ヶ月を乗り切った。
生理が最悪だったけど。
布団に血着いたし日中におきたときが1番最悪。
姉妹とは言えお互い恥ずかしかった。
雪「やっと一ヶ月乗り切ったわ。」
茜「ごめんねお姉ちゃん。」
雪「いいの。それに茜の恥ずかしがってる顔も見れたし。」
茜「ヒドイよ!お姉ちゃんだっていっぱい出たくせに!」
雪「仕方ないでしょ!あれでも恥ずかしかったんだから。」
茜「えへ。こんな生活でもお姉ちゃんと暮らせるのって楽しいな。後どの位一緒にいられるかな。」
雪「一生に決まってるじゃない。」
茜「それって誰か別の人も一緒だよね。」
雪「誰かって?」
茜「だっていずれは結婚するんでしょ?そうしたら私はひとりぼっちになっちゃう。」
雪「茜も結婚すればいいじゃない?」
茜「ダメだよ。男の人ってすぐにえっちしたがるんでしょ?えっち出来ない私の身体じゃ誰も私の旦那さんになってくれないよ。
それに家族はお姉ちゃんしかいないし。」
雪「あたしだって茜と同じようなものだよ。負担かかる事は出来ないし。」
茜「でもお姉ちゃんは過度な負担だからえっちは出来るよ。だから赤ちゃんも授かる事も出来るよ。」
雪「でも、本当あたしモテないから。」
茜「ねぇ…お姉ちゃん。私のお願い聞いてくれるかな?」
雪「いいよ。」
茜「誰とも結婚したり付き合ったりしないでね。」
雪「………。」
茜「私にとってはお姉ちゃんしかいないしお姉ちゃん以外分かってくれる人居ないから。だからお姉ちゃんの居ない世界なんて生きる価値がないんです…お姉ちゃんが他の人の所に行っちゃうなら私…自分の事……
雪「やめて!それだけは絶対にダメ‼そんな哀しい事言わないでよ。もう二度とそんな事言うんじゃないの!……もしかして…手術で茜……自分は死ぬつもりだったの?」
茜「……。」
雪「否定してよ……。」
茜「……。」
雪「ねぇ!」
茜「私死ぬつもりでした。遺書も書きました。引き出しに入ってます。」
雪「茜ぇ‼」
気付けばあたしは泣いていた。
遺書
私は両親を殺しました。
最愛のお姉ちゃんにも怪我をさせ20年も辛い思いさせました。
全ては私の責任です。
私は人の姿をしていて人ではありません。
私に出来る事など何もありません。
もしあるとするなら1つだけ。
この身体をもって罪を償う事です。
もちろん償いきれるものではないと思っています。
それでもこの身体で最愛のお姉ちゃんを助けられるのなら喜んで差し出します。
今まで生きて来た中で1番幸せな瞬間です。
私は屍になって当然の存在です。
ご苦労様でした。
私の身体。
そして
ありがとうございました。
今までずっと愛してました。
お姉ちゃん。
私の分まで生きて下さい。
さようなら。
茜
あたしは泣き崩れた。
茜の気持ちは十二分に伝わって来た。
こんな思いをさせてたのか。
自分自身にガッカリした。
こんな哀れな妹を1人に出来ない。
百合はいるし何しろ茜がどんな時もどんなあたしも愛してくれる。
それで十分な気がした。




