#12 最大の過ち
あたしはわんわん泣きながら百合の家に帰った。
久々に声を張り上げて泣いた。
もしかしたら初めてかも。
道行く人の注目なんかどうでも良かった。
家に着いても涙は止まらなかった。
百合が心配そうに接して来た。
そして百合に事情を説明した。
家族の承諾書とは皐月の事だったらしい。
その日あたしたちは皐月に連絡を取ろうとしたが叶わなかった。
手術から暫く経った。
手術後は食欲もなく水ばかり飲んでいたが時間が経つと共に食欲も戻って来た。
そんな中食事に変化を感じた。
食べ慣れた自分の料理が凄く美味しい。
それにお酒やビールは全く駄目になっていた。
前までは普通に百合とよく自棄酒してたのに。
心臓は茜の物なんだ。
よくある手術した人はドナーの生前の体質に似ると言う事。
多分それだ。
前は何とも思ってなかったオレンジジュースとココアが凄く美味しく感じた。
生前茜の大好物だった物だ。
食べているうちにまた悲しくなって泣いた。
雪「……。」
百合「おい、今度はどうした?」
雪「このココア……凄く…凄く美味しい。」
百合「ココアなんて前から淹れてただろ。」
雪「ココアはね…茜の大好物なの。1人でココア飲んでる時は子供の笑顔になったんだよ…絶対に笑ったりしない子だったのにココアを飲んでる時は見たことないくらいの笑顔になって…。」
百合「その味が今は分かるのか?」
雪「うん。」
百合「そうか……。」
雪「あの子は本当にあたしの事が大好きだったんだ…嫌われたくないからあんな事したんだ…もっと素直に茜の事を……
百合「もういい。あの日誤解は解けたんだろ。それでいいじゃないか。」
雪「解けてないの。あたしが誤解させたのよ。」
百合「まさか…病気の事か?」
雪「うん。茜の事が大嫌いって言った…あたし…あたし!」
百合「でも、茜ちゃんがドナーって事は茜ちゃんも何か病気だったってことだろ?」
雪「茜が病気?」
確かにおかしい。
なんで茜は臓器移植なんて出来たのだろう。
手術費は金融によるローン積立だ。
借金も出来てしまって手が出せないのだが気になった。
臓器移植をしたからといっても完全に生き延びることが出来る訳ではない。
爆弾を抱えてるのには変わりないことだ。
くそぅ。なんで……
もしかしたらあたしが病気だって事知ってたんじゃ?
様々な推測が飛び交った。
しかし、答えは出ずにいる。




