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#10 皮肉な救い

あれから一ヶ月近く経った。

あたしももう長くないな。

なんか願ったり叶ったりだなぁ。

そんな事を考えて布団に入った。

その瞬間あたしは意識がなくなった。


・・・


百合「おい、雪起きろ朝だぞ。」

雪「……。」

百合「いつまで寝てんのよ起きなさい!」

雪「……。」

百合「おい、好い加減にしろよ。」

雪「……。」

百合「おい!!」


私は雪を引っ張り上げたが簡単に上がった。


おかしいぞ?


百合「おい、雪?どうした?しっかりしろ?」

雪「……。」


私は腕の脈を測った。


脈が無い⁈


しかし、呼吸はしている。

だが弱い。


私は救急車を呼んだ。


病院。


百合「おい、雪、なんで病気の事言わなかったんだよ。」

雪「百合に心配かける訳にはいかないから。」

百合「雪……。」

雪「あたしもうすぐ死ぬんだって。ごめんね、最後まで迷惑かけちゃって。」

百合「馬鹿野郎!!雪がいなくなったらネコの世話は誰がするんだよ!!」

雪「あの子は優しく撫でてあげれば大丈夫。引っ掻いたりしてくるかも知れないけど我慢したげて。」

百合「茜ちゃんにあんな事言ったのはこの為か?」

雪「そう。茜を悲しませたくないから。」

百合「いつかは茜ちゃんも知るだろう。」

雪「でもあたしが茜を突き放したから。あたしが嫌いだって言えばあの子はあたしに会おうとはしてこないから。」

百合「でも…

医師「雪さんですね。ドナーの方が見つかりました。」

雪「えっ?ホントですか⁈」

医師「あなたと同い年くらいの女の人です。」

雪「お名前は?」

医師「あなたと同じ姓で茜さんと言ったかな?」

雪「…えっ……茜?」


別人だよね。

だって茜があたしの病気を知るはずないもの。


しかし、紛れもなくドナーの提供者はあたしの妹の茜だった。

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