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同じ顔

作者: 雪猫
掲載日:2026/10/24

私は、満員電車のドアの前で唖然とした。

同じ顔が5つ並んでいた。


躊躇していたが、発車のベルで慌てて乗り込んだ。

電車の中で私は、その5人に囲まれる形になった。


彼らは私より頭一つ分高く、同じ顔、同じ体付き、

服装や持ち物以外、全部一緒だった。


『5つ子だ』

私は驚いて、密かに彼らを観察した。


どんなに見ても、違いは分からなかった。

一緒にいることに慣れすぎているのか、

彼ら5人は全く話さず、それぞれ別方向を見ていた。

スマホを見る者、本を読む者、

立ちなから半分寝ている者、様々だった。


私は自分が降りる駅まで、

バレないように興味津々で見ていた。


教室で友達に話したら、半信半疑で、

「本当なら、スマホで撮らせてもらえば良かったのに」

と無茶なことを言われた。



次の日、

満員電車のドアの前で、私は愕然とした。


電車の中の人全員が、昨日の5人と同じ顔だった。

躊躇したが、発車のベルで慌てて飛び乗った。

当然私は、同じ顔の集団に囲まれる形になった。


何が何だか分からなかった。

私は目を丸くして、彼らを眺めた。


様々な服装、様々な持ち物、

互いに気にせず別々なことをしている。

そこだけ見れば、普段と変わらない電車内の風景だ。

彼らの顔と体付きが、全員一緒であることを除けば。


私は困惑した。

素人へのドッキリを疑ったが、

どんなに見ても特殊メイクの跡はなく、

そっくりな人を集めたにしても、

耳の形、顎の線、ホクロの位置、

細かい所まで、全て一緒だった。


私は、

はっと気付いて、慌てて鏡を取り出した。

私の顔は、私のままだった。

ほっとした。


次の駅に着き、ドアが開いた。


振り向くと、

同じ顔の人々が乗ってきた。


頭が真っ白になった。


私は自分の降りる駅まで、

目を丸くし、赤い顔になりながら、

同じ顔の集団の中で、ぎゅうぎゅう詰めになっていた。


友達に伝える元気もなく、

教室に入ると同時に、私は机に突っ伏した。



次の日、

満員電車のドアの前で、私は拍子抜けした。


そこに、あの顔は一つもなく、

いつも通りの色々な顔があるだけだった。

私は周りを見渡しながら、ゆっくりと乗り込んだ。

電車内を見回しても、やはりあの顔はなかった。


その次の日も。

あの顔は一切、見かけなかった。

ふと、電車の外でも探したが、やはりいなかった。



1週間後、

乗り込んだ電車の中、

ふと見渡すと、あの顔を見つけた。

一人だけだった。


私とは別の高校の制服、

私より年上のようだった。

男友達と話していた。

風邪で休んだと言っていた。


思い出した。

何度か電車で

遠くから彼を見掛けたことがある。

でもそれだけで、何かあった訳ではない。


私が見ていると、

彼が顔を上げて、

目が合った。

綺麗な瞳だった。


私は、慌てて目を伏せた。

顔が赤かった。

自分の心臓の音が聞こえた。



私は、

その時初めて、

自分の想いに気付いた。










しばらくして顔を上げると、

私を見つめている彼と

目が合った。


彼は目を逸らした。

その顔は赤かった。

友達にからかわれていた。


私は、

目を丸くし、彼以上に赤くなった。


自分の心臓の音で、

電車の音が聞こえなかった。




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