零れ落ちる夢
村が焼ける炎を映す赤黒い空の下、私は初めて愛した神を手に掛けた。
黒い岩の祭壇で彼の腕の中、私は護り刀を彼の腹部に突き立てている。
『……何故……』
彼の赤い瞳は寂しい色を湛え、黒の狩衣は血を吸って闇の色を増して濡れていく。私の白い着物は彼の血を浴びて赤く赤く染まっていく。
私を本当に愛してくれていると信じていた。生贄ではなく、花嫁として迎えてくれると信じていた。それなのに、彼は村人全員に私を生贄として差し出せと夢を見せた。
逃げようとした私は喉と両足を潰され、生贄として彼に差し出された。
七剣星の力を宿す護り刀は、私の命を代償にして神の力を奪う。
薄れゆく意識の中、遠く聞こえるのは童歌。
『あーめふらし かぜふかし』
『たーたりがみのおきにいり』
『へーびがーみのおきにいり』
『つかれたうーそに はらをたて』
『りゅうをうちとり くびおとし』
『ななつ ななやに ななみたま』
『うそつきだぁーれ わらうのだぁーれ』
歌は子供の笑い声と共に風の中へと消え去り、私の目はもう何も映すことはなかった。
◆
目が覚めた。いつもと変わらない天井を見ながら、流れ落ちる涙を指で拭う。
「……また……同じ夢……」
子供の頃から何度も見ているのに、夢から覚めると砂のように零れ落ちて詳細が消えてしまうのもいつものこと。相手の顔も状況も忘れてしまうのに、唯一思い出せるのは私が神を殺したということだけ。
神殺し。その夢に何の意味があるのか。何を私に伝えようとしているのか。
「……全っ然、意味わかんない……」
覚えていないのだから、どれだけ考えても無駄。溜息一つで思考を手放した私は、ベッドから起き上がった。




