帰ってきた始まりの場所のこどもたち
メリークリスマス
意外と重いな・・・・・・とソリの荷物を振り向きながら引っ張る僕の目に懐かしい建物が見えた。
レンガ作りの大きな大きな一軒家だ。
僕が旅を始める前に暮らしていた場所だった。
よいしょ!とソリを強く引きなんとかそこに辿りつくと、
「わぁ!おかえりなさい!どうしてた?元気だった?」と僕を保護してくれた仔豚たちが声をかけてくれた。
「まさかここに着くとは思わなかったけど、元気だった?みんなも」と再会を喜んで居た。
「旅人始めたと思ったら、サンタクロースに転職したのか?」と一番年上の仔豚が言う。
確かに新しい服は真っ赤で白いふわふわが付いていて、ソリに大きな荷物。
「そういえばまるでサンタクロースみたいだ僕」とみんなで笑いながら、最近のこどもたちはどんな仔たちかなぁ?と眺めていると暖炉の辺りに寒がりな仔たちが集まっていた。
「あれ?サンタクロースは煙突から入ってくるんじゃないんだ?」とまだ小さいキリンやカピバラ、インコや文鳥、意外なことに仔犬たちも暖まっていた。
「犬は喜び庭駆け回るんじゃないっけ?」と聞くと、
「僕らはチワワとブルドッグとフレンチブルだから寒いのはダメダメ」と堂々としている。
「暖炉にずっと火が点いてたらサンタクロースも熱くて入ってくる場所変えるしかないからねフフフ」と言うと納得してくれたようだった。
僕はここでこどもたちだけで怖い者たちから身を守りながら生きていたのを思い出すと、そういえば当時もサンタクロースが来たような気がしていたけど、そうか道順を辿ると旅人はここでサンタクロースになるんだ。
「その為の大量のお菓子やソリとこの白い袋だったのか」と呟くと、こどもたちがソワソワしている事に気がついた。
「今日は特別な日だからみんなにプレゼントを持ってきたよ」と言うと盛大に喜んでくれた。
僕もまだ何が入っているのか分からないんだけど、白い大きな袋の口を開くと沢山の穀物や果物にいろんな仔が喜びそうなおもちゃや服が入っていた。
あれ?果物ならみかんを箱ごと貰ったような気がしたんだけどな。とみかんの箱を開けてみると、大きなケーキが入っていた。どれも外の気温で冷凍状態だったから崩れることなくここに持って来れたんだなと腑に落ちた。
こどもたちはみんな大喜びでプレゼントを受け取ってくれた。
チワワたちは服を受け取ってこれで庭駆け回れるかな?とワクワクして一歩外に出たけど、一歩で帰ってきた。
「足冷たいや」と言っていたら仔豚が、
「この前来たサンタクロースに長靴貰ってただろう、その時も一歩で身体寒いって帰ってきてたけどな」と笑っていた。
「この前もサンタクロース来たの?」と尋ねると、
「そう、あわてんぼうすぎるサンタクロースでね『これ全部あげる』ってソリごと置いてすぐ出て行っちゃったんだよ。君はミルクとクッキー食べて行ってくれるよね?」と仔豚に言われてテーブルについた。
「寒いからホットミルクとみんなで焼いたクッキーをどうぞ」と差し出され、少しずつ懐かしくてここに辿りついた時の安堵感を思い出した。
ここのこどもたちには親と呼べる生き物が居ない。
事情は様々だけど、最初から親に会えない仔や、多くは棄てられた仔や、酷い扱いを受けた仔たちが己らを生み出したはずの生き物から逃げてたどり着いた場所だった。
仔豚たちも狼のような親から身を守るために一生懸命レンガの家を建てて、同じような境遇の仲間たちで支えあって生きていたんだ。
――――――
「おや、珍しい人の子だ!大変助けてあげなくちゃ」凍え切った僕を仔豚たちが運んで暖炉の前に寝かせてくれたんだった。
「体も心も冷え切っちゃってるねここでゆっくり暮らすといいよ」と言われて不思議な気持ちになりながら、頷き色んな動物や植物が暮らすこの家の中に救われた気持ちになった事を思い出した。
「人の子なんて珍しいからすごく助かるよ。僕らじゃできない事もあるからね」と頼ってもらえる事も嬉しかった。
こどもたちは色んな所からどんどんやってくるから人手不足だったな。
外には怖いものや、辛い事があるってみんな知っていたから出来るだけレンガの家の中では笑顔が溢れるように歌を歌ったり、物語を即興で作って話したりして、楽しく暮らしていたんだけど、こどもたちが大きくなるためには僕が強くならなきゃいけないと思って、勇気を出して旅を始めたんだった。
――――――
「そういえば最近流行った詩があったなぁ恋の詩に切ない曲がついてみんなもよく歌ってたよ」と歌を聞くと、どこかで聞いたことがあるような歌詞だった。
「あ、それ僕が書いたのかもしれない」青いカエルがどっさりギャラをくれたのはこの詩だったのか。なんだか恥ずかしいや。でもいい曲を作ってくれた誰かに感謝しなきゃな。
「さあ、ケーキが解凍出来たよ~みんなで食べよう!」と仔豚たちが運んできて他のこどもたちも大喜びしている姿に、ホッと一安心した。
僕はホットミルクとクッキーを食べながらみんなの楽しそうな姿を見つめていた。
仔豚の一番年上の子はプレゼントも他の仔に渡して自分は何も手にしなかったのを僕は知っている。
「僕を助けてくれた、支えてくれた、守ってくれた、そして僕が旅に出てからもこどもたちを暖めてくれて居た事本当にありがとう。これは僕がサンタクロースとしてじゃなくて僕個人としての君への随分遅くなっちゃったけど感謝の贈り物受け取ってくれる?」と言って木彫りの猫を差し出した。
「え?僕は最年長だから下の子を守るなんて当たり前だよ」と言う仔豚に、
「守るばかりじゃ君が苦しくなっちゃう時もあるでしょ?それに旅人になったとはいえ、実は僕が一番年上でもあるんだけどね。えへへ」と笑うと、
「そういえば人の子は最初から僕より年上だったね、あはは」とプレゼントを受け取ってくれた。
年の差なんて関係ない、誰かを守りたいと思えたら、きっとこどもじゃなくなるんだ。
仔豚たちはとっくに優しいおとなの豚だったんだ。守られる事が当たり前、大事にされるのが当たり前、優しくされるのが当たり前って何故か勘違いしたこどものまま僕は旅に出てしまったくらいここはぬくもりが溢れている。
同じ過ちを犯さないようにここから始まった旅をゆっくり噛みしめて前に進もうと心の中でこどもたちに誓いその場を後にした。
「メリークリスマス」
僕の旅はまだまだ続く。
おしまい
なんとか書き上げたばかりのクリスマスに間に合わせたいつも読んでくださる皆様への感謝のプレゼントです。
いつも本当にありがとうございます。




