夜と夜這い
メインヒロインと二人きりで夜の散歩。
状況だけを言葉にすればエロゲーということもあって、誰もが羨ましくなるだろう。
「なあ、この道はあっているのか?」
「たぶんな」
「たぶんって!お前な、わかってるのか?寮長に見つかったら罰金を払わされるんだぞ、あたいは金がないんだ」
「声が大きいって」
「あ、え……」
俺は声が大きいチカの頭を地面に押さえつける。
ヒロインの頭を草が生えているとはいえ押さえつけるというのは、さすがによくないことではあったが、見つかりそうなので今はしょうがない。
なんでこんなことをしているのかって?
見つかると、校則を破ったということもあって罰金を払わないといけなくなる。
お金がない場合どうなるのか?
強制的に掃除などの雑用をやらされることになる。
別にやればいいだけじゃないのか?と思うかもしれないが、問題はそれだけではない。
雑用をやらされると、それ以外のことが数日できなくなってしまうのだ。
ゲームでも、かなり面倒なイベントであり、時間だけがかかるし、特定のキャラに関しては、必要なイベントが発生しなくなったりするため、見つかるべきではない。
本来であれば、夜這いをするときに一定の確率で見つかってしまうというものだったが、こういうところは現実のようで確率ではないらしい。
足音が遠ざかるのを聞いて、俺たちは体を少し起こす。
「行ったか……」
「行ったかじゃねえんだよ」
さすがに怒っているようだが、見つかるとまずいとわかっているのか、声は小さめだ。
「服をつかむなよ、しょうがなかったんだ」
「しょうがないからって頭を押さえつけるのはちげーだろ」
「それはなあ……すまん」
「まあ、金を払うっていうのなら、少しはいいけどよ」
チカはそんなことを頬を染めながら言う。
絶対にダメなことを言ってるよな……
俺はそれを見ながら、頭を抱えそうだ。
わかってはいたことだったが、彼女の様子もおかしい。
言っている内容というのは、お金さえ払えば何をしても許してもらえるというものだ。
ま、選択肢のお金を払えばできてしまうというところからもわかる通りではあったが、まさか全てにお金を要求してくるようになっているとは思えなかった。
だから俺は、少し意地悪を思いつく。
「なあ……」
「なんだよ」
「今こうやって、忍び込めるように手伝ってるだろ?」
「ああ」
「うまく行ったら、いくらくらいになる?」
「お、お前なあ、あたいは金がないんだ」
「わかってる……で?いくらだ」
「えっと、それは、その……あれだ……」
チカは、そんな風に言われると考えていなかったのだろう、明らかに取り乱す。
何を言っていいのかわからないのだろう。
「冗談だ。さっき押さえつけたし、それでチャラだ」
「そ、そんなの当たり前だろうが」
からかってみて、さらに彼女がどういう性格なのかを知ることができた。
必要なことなのかはわからないが……
後は、寮へ入る方法については、あれをやるか。
俺は少し考えた結果、あることをしようと決意する。
こう見えても、このゲームを何週もクリアしてきた俺は、倍速になっているストーリー以外については覚えていたりする。
その一つというのが、今回使えるものだ。
本来ゲームであれば、夜に寮へとやってくるときに何をするのか?
それについては、少し前に説明した通り夜這いだ。
夜這いをするために必要なこと、それは女性にアピールをすることだ。
当たり前のことであるが、それが難しかったりする。
というのも、どこにお目当ての女性がいるのかわからない場合があるからだ。
実際に読んだことがある本などで、そこを間違えたみたいな内容を見たことがあった。
結果に関しては、まあ悲惨だ。
そんなこともあって、俺はメインヒロインたちの部屋がどこにあるのかくらいわかっている。
「なあ、裏手にやってきて、どうするんだよ。あたいの部屋は三階だぞ」
「わかってる」
この寮というのは食堂などがあることからわかる通り、かなり大きい。
一階には、そういう施設があるのに対し、二階以降は個人の部屋になっており、それが五階まで続いている。
確かあいつの部屋は……
今回の計画に必要なことだ。
俺は確認しながら、一つの部屋に向かって拾った石を投げる。
「何をやってんだよ!」
「ちょっとあるやつを召喚しようと思ってな」
「はあ?」
「まあ見てろって」
「信用できないからな」
「まあそういうなよ。後、また声が大きいぞ」
「す、すまん……」
意味がわからないとばかりにチカは声を荒げるのをなんとかなだめながらも、一度では出てこないため、再度石を拾って投げる。
繰り返すこと五回。
我ながらいいコントロールだ。
「ちょっと、誰!」
ようやくというべきか、目的の人物であるナオが出てくる。
本来のゲームであれば、この夜這いというのもイベントシーンなので、倍速になるはずではあったが、ゲームではあり得ないはずの女性を連れた状態で夜這いをしたためか、倍速ではなく通常速度の会話スピードだ。
よって、今のナオであれば、この状況をなんとかしてくれるはずだ。
「いいか?」
「え?って、坊ちゃま?」
「少しいいか?」
「何でしょうか?」
一瞬、俺の顔を見て何かを言いそうになっていたが、もう一人の存在に気づいてすぐに切り替えたのか口調は少し柔らかい。
まだ、あの性格は隠しているのだろう。
これなら、簡単に頼めそうだ。
「チカを寮に入らせたくてな」
「え?まあ、いいですけど。ちょっと待っていてください」
これで、なんとかなるだろう。
俺たちは、隠れながら様子を見守ると、寮からチカが出てくる。
そして、女性と話しをすると二人で寮へと入っていく。
「行けそうだな」
「みたいだな。その……ありがとな」
「気にするな。礼はあいつに言ってやってくれ」
「ああ、そうする。じゃあな」
そして、チカは寮の中へと消えていった。
俺はそれを見届けると、なんとなく懐に閉まっていた本を広げる。
すると、いつの間にか何かが書かれている。
「これって、部屋の場所だな」
今回は覚えていたことだったため、なんとかなったが今後使える内容だろう。
だけど、本自体も全てが書かれているわけではないように感じる。
「これが何なのかも含めて、いろいろ面倒なことにさらになりそうだな」
俺はそう考えながらも、さすがに疲れたので部屋へと帰ることにした。
夜。
寝ていた俺は体に重みを感じて目を覚ます。
「なんだ?」
夢だと思って、俺は重みの元である何かに手を伸ばす。
だが、夢だと思っていた何かには触れられたと同時に、頭に痛みが走る。
「イタタタタ!」
「起きなさい、坊ちゃま」
「は、え?」
訳が分からない状況に俺の意識は急激に覚醒する。
「おま、ここは男子寮だぞ」
「わかってるよ、坊ちゃま。坊ちゃまだって、女子寮に来てたでしょ?」
「いや、俺にはちゃんと理由があっただろ?」
「でも、私のことをこき使ったでしょ?」
「それはだな……」
「必要なことだってことでしょ?」
「わかってるなら……」
「だから、必要な教育もしておかないといけないでしょ?」
そんな風にナオは俺の上で笑う。
夜中に女性が夜這いにやってくる。
普通であれば嬉しい状況ではあるが、相手が相手のため、全く嬉しくない。
「俺に何をさせようっていうんだ?」
「えーっとね、明日の予定をね」
こうして俺は、逆夜這いを受けることになった。
だけど、このときの内容を了承してしまったことをすぐに後悔することになるとは、夜這いを受けていたこのときは思っていなかった。
次の更新から少し遅くなります。
申し訳ございません。




