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エロゲーは当倍速で  作者: 美海秋


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8/14

手に入れた本は……

 金策がうまくいかなかった俺は、素直に部屋へと戻った。


 なんでと言われれば、やれることがないからだ。


 一度エロティックタワーに入ってしまえば、その後には入ることができない。

 今日はチュートリアルで入ったこともあって、二度目はないのだ。


「何もやることがねえ。そのくせ、寝れないとか……」


 ゲーム世界の主人公になる。

 それもエロゲーとなれば、誰もが望んだ世界なのだが……


 設定は俺がやってきたエロゲーのままだったせいもあって滅茶苦茶だし、どういうわけか他にも俺と同じようにこのゲームに迷い込んだようなやつもいる。

 メインヒロインは、どうしてああなっているのかわからないが、全員が癖が強い。


「どうなるんだよ、俺のこれからって……」


 口に出しても現状は変わらないとわかっていても、どうしても口には出るこれは……なんといっていいのかわからない。


 なんでエロゲーの選択肢以外で無駄に悩む必要があるんだよ……


 おかしい。

 このゲームは俺が知っているものだというのであれば、本来こんなにも悩むことはない。


「あーくそ、チート能力であれやこれやをできるやつらが羨ましい」


 そもそも、こういう世界に来たら未来の選択肢を変えるためにとか、いつの間にか手に入ったチートスキルやアイテムでとか、そういうものじゃないのか?


 何にもない。

 せっかくゲットできるかもしれないと期待していた伝説の武器も、手に入れるための挑戦すらできない。


「改悪ばかりしてるよな、どう考えても」


 最初は確かにゲームと同じクソみたいな感じでも、途中からは自分の思い通りに過ごせる……みたいなものだったり、他にも今から本気を出すみたいな感じでもない。

 そもそも、エロゲーの世界にいるとしても、エロに発展するとは限らない。


 なんでって?

 そっちに発展できるような能力があるのだとすれば、すでに経験済みなはずなのだが、できていないということはそういうことなのだ。


「明日からどうするのがいいんだ?ゲームだったら、好感度を上げたヒロインとの仲を深めるためにも、エロティックタワーに入るのが正解なんだが……あの人数で入るのか?」


 イベントとして、五人と一緒に戦うことになったのはいいのだが、その五人とエロティックタワーに挑戦することになるのかと考える。


「いや、あり得ないよな」


 考えた結果の答えはそれだった。


 どうしてあり得ないのか?

 それについては理由がちゃんとあった。


 このゲームの戦闘は二人で戦っていたこともあって、モンスターが出てきたとしても多くはない。

 常に三体以内だ。

 よって、その程度の強さにモンスターが調整されている。


 そのため、同じであるならばこちらは六人に対して、モンスターは三体ほどしかいないということになるが、こんな世界だ。

 信用がない。


「あー、結局は今考えても仕方ないんだよな」


 考えれば考えるほどに沼にはまるというのは、こういうことをいうのだろう。

 実際に考えても答えなど全くわからない。


「飯を食いに行くか……」


 いろいろありすぎたせいで意識をしていなかったが、学園の食堂はそれなりに豪華だ。

 さすがは限られた生徒しか通えないような学園である。


 学園でやることが男女の出会いであるとはいえ、さらにはエロティックタワーに入らないといけないこともあって設備はかなり充実していたりする。


 トレーニングができる場所であったり、さらには知識を高めるための蔵書が置かれている場所だったりと、寮の中にしてはかなり充実している。


「ま、男については誰も近寄ってはこないな」


 男女が出会うための学園ということもあり、寮では男子同士が仲良くしているというわけではない。


 だからといって皆がライバルというわけでもない。

 エロゲーなのだ、結局は干渉させないようにできているし、そもそも気にかけるのであれば同性ではなく、異性に対してになる。


「考える時間がとれるのはいいことだが、誰かに相談できないのがどうかしてるよな」


 せめてログを確認さえできれば、覚えている範囲で選択肢くらいは正解を選べるはず……なのだろうか?


 ゲームをやっていたときですらも、全て倍速にしていたこともあって、会話内容を覚えているかと言われたらノーと答えるだろう。

 結局のところ、自由行動の時間に何がどこにあるのかくらいしか、覚えていないのだ。


「ま、選択画面で選んでそこに向かうだけじゃないところはいいけどな」


 本来であれば、自室や食堂などから、選択するとそこに向かった結果だけがコメントのようにどこどこに行ったが何もなかった。もしくは、何かがあったと流れるだけなのだが、今は自分で行けるため、これまでになかった発見は確かにある。


「女子に好かれるには……魅力的な男になるためには……くそみたな内容の本ばかりだな」


 エロゲーだからなのか、寮に置かれている本は、男女について書かれているものばかりだ。


 こういうところで、少しでもエロティックタワーについての攻略本とかほしいよな。

 ま、そんなものがあれば、全員手に取ってるか……


 こんなゲームの世界にずっといるなんて嫌だと、誰もが考えるはずだ。


「うん?あんなやついたか?」


 俺が不思議に思ったのは、見たことがない見た目をした男だ。

 今、俺が着ている学園の制服とは違う見た目に、少し驚きながらもこの際、もう何が起こってもいいかと考えて声をかける。


「誰だ?あんた」

「ふ……わが……か……まん……も……れ」(フハハハ!吾輩の名前か?セイヤマンとでも呼んでくれ!)

「そ、そうか……」

「なに……にと……る……を……たの……だろ」(何をそんなに戸惑っている?声をかけてきたのは、そちらだろ?)

「そうなんだが……」

「な……なに……に……どう」(なんだ?何をそんなにも戸惑う?)


▶見た目が変わってるだろ?

 喋り方がおかしいだろ?

 別に……気のせいだ


 突然に始まる会話とともに、出てくるのは選択肢。

 これが重要なイベントなのかはわからないが、何かを教えてくれるものだろう。


 せっかく新しい何かが知れるというのに、選択肢までの会話が倍速のせいで何を言ってるのか理解できない。

 さらには、せっかく選択したところで何を言ったのかも理解できない。


 あー、本当にクソだ。


 俺は心で嘆くが、そんなことをしたところで選択肢が変わったりするわけではない。


 ここは聞いても仕方ないし、”別に……気のせいだ”を選ぶべきなのか?


 見た目が変わってるだろ?

 喋り方がおかしいだろ?

▶別に……気のせいだ


 目線を動かして、カーソルを合わせる。

 これで本当にいいのか?


 確かに倍速で何を言っているのかはわからないが、話くらいは聞いておくほうがいいんじゃないのか?


 悩むが正直なところ、正解はわからない。


 知らないルートに突入しているせいで、考えれば考えるほど、よくない方向へと進んでいるのではないかと思ってしまう。


 あー、ダメだ……悩むくらいなら、聞いてやる!


▶見た目が変わってるだろ?

 喋り方がおかしいだろ?

 別に……気のせいだ


 一番上を選択する。


「見た目が変わってるだろ?」

「ふは……いい……に……な……くは……た……い……う」(フハハハ!いいところに気づいたな!この服は歴代着ていたものだ!いいだろう!)

「お、おう……」

「ど……は……ぞ……で……たが……ろ……てん……あげ……か」(どうした?反応が薄いぞ?ここで会ったが何かの縁だろ?もっとテンションを上げないか!)

「は、はい!」

「いい……こ……たの……な……はず……これ……く」(いいだろう。ここで出会ったのも必要なことだったはずだ。これを渡しておく)

「あ、ありがとうございます」

「ふ……よ」(ふ!抗えよ!)


 男はいい笑顔で、何かを渡してくる。


 貰ったものというのは、一冊の本だった。


「おい、これ!っていねえ……」


 自分の会話スピードが普通に戻っていることで、新しいイベントが終わったことだけはわかるが、先ほどまで話をしていたはずの男というのは、いなくなっている。


 ゲーム世界だから、そういうこともあるか……


 俺はそれについてはなんの疑問をもつこともなく、手に入れた本を開封する。


「何も書いてないな」


 でも、そこには何も書かれてはいなかった。


 新しいアイテム。

 これが何を意味するのかはわからないが、何かには使えるということなのだろうか?


「最後に何かを大事なことを言っていたような気もするしな」


 予期せぬイベントが起こることはあったものの、その後というのは別に何かがあるわけではない。


「な……」(なんだ?)


▶学園のことを聞く

 寮のことを聞く

 何も聞かない


 他の生徒には話しかけても、男に話すことなどないかとばかりに無視をされ、唯一寮を管理している側の人に話しかけても聞ける内容というのは、説明くらいだ。


 学園のことを聞く

 寮のことを聞く

▶何も聞かない


 この中に、先ほどの男がなんだったのかがわかる要素があれば聞いてみたかったが、どうやらそういうのはないようだ。


 外に出ようと寮の扉を開ける。


 エロゲーの嬉しい点として、夜にいろいろなところに行けるという要素もある。


「夜に行ける場所って、そんなに多くはなかった気がするが、いくつかはあったな」


 自由になったからこそ、ここからはやれることが多くなる。

 おそらくはハーレムルートに突入していることから、ここで好感度を上げる行為である夜這いはできない。


 まあ、夜這いはそれなりに好感度を上げていないと選択していたヒロインの好感度が逆に下がってしまうものではあるが……誰もヒロインが確定しない今はできないことになるらしい。

 どうしてそんなことがわかるのかというと……


「なぜかいるな……」


 寮は男女に分かれているのだが、何故か寮の管理をしているであろう女性が外にいるのだ。

 本来であれば、男の寮と同じように中にいたはずだが、外にいるというのは警戒しているということなのだろう。


 見つかる前に帰ろうと振り向いたところである人物を発見し、さらにはらしくなくアワアワとしていたため声をかける。


「それで?どうしているんだ?」

「ばい……らか……れ……てた……らし……だろ」(バイトから帰ったら入れなくなってたんだから仕方ねえだろ?)

「普通に理由を言えばいいんじゃないのか?」

「は……んな……で……よ」(はあ?そんなことできるかよ!)

「む、胸倉をつかむなよ」

「……せえ」(うるせえ)


 チカに胸倉をつかまれる。


 こういうのって、確かにあったな。


 喋りが倍速になっていることから、イベントであることはわかる。

 そして、メインヒロインとされる五人のイベントくらいは何も見なくても覚えている。


 このシーンについても確かに覚えいる内容だ。

 会話については、特には覚えていないものの、この後に出る選択肢は覚えている。


▶寮に隠れて入るための場所を探す

 お金を渡す

 なんとか逃げる

 本を開く


 予想通りの選択肢がある。

 だが、知らないものが一つだけあった。


 なんだこれ、本を開くってやつだけおかしいだろ?

 絶対にさっき手に入れた本のことだよな……

 何かに使えるかと思って持ってきたけどな、まさか選択肢に追加されるとは思ってみなかったが、選択してみるか?


 どうなるのか予想ができないものを選ぶというのも、ゲームをやっていたものとしては、かなり楽しみな状況だ。


 本来であれば、今の状況であれば一番上を選ぶのが正解なはずだが、せっかくだから本を開くを選んでみるか……


 寮に隠れて入るための場所を探す

 お金を渡す

 なんとか逃げる

▶本を開く


 選択肢を選ぶ。


 体が動きだすと、懐にしまうように入れていたあの本を取り出す。


 見た目が変わってる?


 手に入れた本というのは、元々は真っ白な表紙に真っ白な内容だったが、本の色が茶色になっている。

 書かれていた内容は……


 名前  チカ・ヤンケイ

 ジョブ 銃使い

 特徴  下には妹と弟がおり、稼ぐためにもバイトをしている。

     最初はヤンキーのような見た目であるが、人情深いなどetc……


 み、見たことがあるな。


 俺は内容に見覚えがあった。

 そして、すぐに何なのか気づく。


 そ、そうか!これって、俺が書いていたお手製攻略ノートの内容だ!


 どうしてこのタイミングで存在しているのか?

 何故よくわからないやつが持っていたのかなど、わからないことが多いが、これで選択肢を間違えることはないだろう。


 何々……ここでは、お金を渡すとやれますと……

 はーん、なるほどね。


 って、どうやってやれるかしか書いてないのかよ!

 他の選択肢は?

 やれない……


 そんなことは知ってるっての!

 くそ、ギャラリーだけを追い求めてたなら、もっと詳しく書けよ、俺!


 俺は書かれた内容を読み終えると、本を閉じる。

 そして、現れるのは先ほどの選択肢だ。


▶寮に隠れて入るための場所を探す

 お金を渡す

 なんとか逃げる

 本を開く


 本を読んだ結果、正解が何なのかがわからなくなった俺は、一番上を選択するのだった。

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