展開は男の夢
学園長室から出た俺は、次に進んでいく。
そんな次というのは、ようやくというべきなのかエロティックタワーに入るものだ。
何故それがわかったのか?
理由は一つで、あの後にまたすべての部屋の扉を開けようとしたからで、エロティックタワーに行くための扉以外は鍵がかかっていた。
「くそ、時間が進んでないのに時間ばかりかかりやがるな」
だから、俺がそう言葉にするのも仕方ないとは思う。
確かに、そんな面倒なことをしないで、さっさと次であろうはずの場所。
エロティックタワーに行けばいいだけだと思うだろうが、ゲーマーとしては、違う展開になればいろいろと気になってしまう。
こうなってくるとどうしても他にも変わったところがないか確認してしまうというのは性だ。
ああ、こういうところはどうしてもゲームをやってるものとしては、気になるんだよな……
ま、ここからは、本当のゲームスタートってことだ。
「どうしてこうなるんだよ!」
そして、エロティックタワーで戦闘を開始した俺は最初の雑魚にかなり苦労を強いられていた。
「くそ、これが言ってた意味ってやつかよ」
学園長に煽られた内容というのが、これなのだろうということはすぐにわかった。
俺のように盾を構えたものたちというのは、もう一方が攻撃をするためのジョブを選択することで、いいパーティーになるのだが、俺のように一人で盾を持っている場合には、盾というものは本当に意味がないと思えてしまうものだ。
「あー、どうして戦闘は倍速にしてなかったんだよ……」
ほとんど威力がない攻撃を繰り返しながら、思わずそう言葉にしてしまうのは、盾の攻撃力というのがほとんどないからだ。
最初のチュートリアルで出てくるモンスター。
実はヒロインによって変わるのだが……
今回であれば、ラビット。
ウサギのような見た目をした、ピンク色のモンスターだ。
どうしてピンク色なんだって?
エロゲーのモンスターに疑問を持たないでもらいたい。
そんな雑魚モンスターなのに、倒すのには時間がかかるのは何度も攻撃をしないといけないからだ。本来であれば、戦闘であっても倍速ができるのだが、ゲーム中はそれを使っていなかった。
なんでかって?
戦闘は真面目にやらないと、倍速にしたりオートにしてしまうと、余計に時間がかかったりと……苦労しかしなかったからだ。
だけど一人であれば、そんな苦労もない。
なんといっても、盾で殴るだけだからだ。
盾使いというジョブで使える、攻撃するスキルといえば、シールドバッシュというものが存在はしている。
でも、それを覚えるには、前提条件としてレベルを上げる必要があるのだが、ゲームのときみたいにメニュー画面が開けない今であれば、どれくらいのレベルかも、どれくらいでレベルが上がるかもわからない。
だけど、何度も盾で殴れば一応終わりは見えてくる。
「おらああああああ!」
ラビットをようやく盾で殴り倒した俺は、肩で息をする。
「はあはあ……くそ、どうしてエロ以外でエロゲーでこんなにも激しく動かないといけないんだよ!」
俺は思わず持っていた盾を地面に投げ捨てたが、それも仕方ないことだ。
ラビットという雑魚モンスターを倒すためにかかったのは、盾で殴ること三十回だ。
その間にも、ラビットは何度も盾に向かって突進を受け止めること二十回以上。
ラビットの攻撃は盾で受けていることもあってダメージを受けなかったが、見ている人がいれば不毛な争いだと思っただろう。
今後もエロティックタワーに一人で入ることになれば絶望を味わうであろうことを一戦目で感じてしまった。
そんな俺が、たぶん覚えているであろうスキルというのは、カバー。
盾を持った状態であれば、近くで戦っている人に向けられた攻撃を代わりに受け止められるというスキルだ。
パーティーであれば、なかなか有用なスキル。
だが、今は……
「使えなさすぎるんだよ!」
そう言わざるを得ない。
いや、そもそも最初に盾使いが選ばれたのがいけないのだが……考えてもしょうがないことだ。
なんとかモンスターを倒して、落ちたアイテムを回収して戻ると女性の先生が話しかけてくる。
「お……たは……で……な」(おお、あなたは一人でもやるな!)
「それほどでもありません」
かっこつけんな、俺。
滅茶苦茶苦労してんだよ。
「その……こ……ると……あ……りも……まれ……う……な」(その調子で、今後も頑張るといい。新しい役割も生まれるだろうからな)
「はい」
俺のことを労う言葉?を口にしてくれるが……
何を言っているのか理解できないため、何を話してんだと聞いてやりたいが、さすがにそれはしない。
なんでかって?
ゲームの時には気づいていなかったが、合間合間といえばいいのか、倍速になっていないところ。
誰にも話をしていないところで、女性は生徒を見て舌打ちをしている。
どうしてなのか?
それは、このエロティックタワーに入れるのが童貞と処女だからだ。
ということは、この大人の女性である先生も……ということになる。
それなのに、男女でパーティーを組んでイチャイチャ……楽しそうにしているのを見ていれば、舌打ちをしたくなるのも仕方ないのかもしれない。
とはいえ、これで今日のやるべきことは終わりのはずだ。
さすがに初日からエロティックタワーでいい感じになってというのはないと思うものの、エロゲーなので信用はない。
「帰るか……」
チュートリアルの戦いが終われば、ここから出ないと次の話しへと進まない。
そのことをわかっていた俺は、エロティックタワーから出よう歩き始めたところで、一つおかしいことに気付いた。
「そういえば、クラスの男女って同数のはずだったよな?俺が選ばなかったことで、余りが出たはずなのに、そいつらはどうなったんだ?」
「ちっ……同性でいい感じになんなよ、面倒くせえな」
何?
女性のそんな言葉で、俺は周りを観察すると、そこには確かに男同士でいい笑顔で拳を合わせてるやつらがいる。
エロゲーなのに、男同士でいい感じになるとか、やばいな。
だが、そこで気づく。
男同士でパーティーを組んでいるというのであれば、同じように女同士でパーティーを組んでることもあり得るのではないか?
俺は周りを確認して、この場にいない生徒たちが誰なのか把握する。
「いないのは五人か……うん?五人って、メインヒロインじゃね?」
そのことに気づいた俺は驚いてしまう。
なんでって?
これまでと違う出来事が起こりまくっているからだ。
「何がどうなってるんだ?それに、どうして帰ってきてない?」
普通であれば、この場面。
初めてのモンスターを倒せば、すぐ戻ってくるような最初のチュートリアルで、何か違うことでもやってるとでもいうのだろうか?
「俺が知っている展開とは全然違うんだが、何が起こってんだよ」
本来であれば、選んだ誰かと戦うはずであったため、選んでいないせいで、違うことが起こっている。
それくらいのことはわかっているからこそ、気になった。
どんなモンスターと戦っているのかというものだ。
さすがに、エロティックタワー内にいるであろう、ボスと戦うことはないはずだ。
あれに関しては、メインヒロインたちの好感度が上がることで出てくる、試練のようなものだからだ。
じゃあ、どうして戻ってこないのか?
「確認してみるしかないか……」
俺は諦めて、エロティックタワー内を探索することにした。
エロティックタワーでは、チュートリアルとして行われる戦闘というのは、一階のみで行える仕様だ。
まあ、ここで出てくるモンスターというのは、エロゲーということもあって、そういうことに繋がるようなものが多い。
例えば、スライムやドルイドだ。
この二つのモンスターは、触手攻撃を得意としてくる存在で、よくある縛って女子生徒をあられもない姿にさせるのだ。
「とはいえ、どんなモンスターでも弱点があるからな。そこにさえ攻撃できたら盾であっても多少はいいが……」
俺はそう言葉にしながらも、それが難しいことがわかっていた。
元のゲームがRPGだからこそ、ターン制バトルによって、モンスターに対して攻撃する場所というのを選べるのだが、今はゲームの世界にいるせいでターン制ではなくて自分でちゃんと攻撃をしないといけない。
先ほどのラビットも弱点はお腹なのだが、盾は判定が大きいということもあって思い通りの位置に攻撃ができない。
そのせいで、無駄に攻撃を繰り返すことになったというのが、先ほどの戦闘だ。
「だからって、こうなってるのは予想外だよな」
ようやく発見したメインヒロインたちは、予想通りではあったが、モンスターと戦っていたが……
そのモンスターたちというのは見たことがないものではなかったが、メインヒロインたちは何度も攻撃をしているのに、どういうわけかモンスターへの攻撃が効いてる感じがなかった。
「どうなってるか、わからないというわけではないよな。どう考えてもゲームのストーリーとしての展開だよな」
攻撃をしているのにモンスターが全く倒れるような気配がないということはそれで間違いないということだ。
そして、ゲームとして、次へと進めるのであれば……
「やるしかないよな、俺が……」
盾を構えるとモンスターとメインヒロインたちのところへと向かう。
「はあああああ!」
「「「「「……」」」」」
助けに入ったことで、五人が同時に何かを言ったような気がするが、話す速度のせいでわからない。
モンスターの数は、すでにゲームと違っているというべきか……
そもそも、こういう状況にゲームではなったことがわからないので、うまく言えないが、ヒロイン一人につき一体。
五体のモンスターがいる。
くそ……
二人で一体やるはずだよな。
そもそもターン制バトル形式じゃなくなってるせいで戦いをどうするのが正解かもわかっていない。
さすがに、アホなことをしないと信じたいものだ。
信じたくはないものだが……
「あぶな!」
「ちっ……」
真後ろから短剣が飛んできたと思うと、俺が盾で受けようとしていたモンスターに飛んできた短剣が突き刺さる。
俺が避けなければ、完全に当たっていたように思うが、きっと気のせいだろう。
さすがに、他の人に向かって短剣を投げる真似など、ナオがするはずがないとは思いながらも、昨日のスカートめくりで起こった出来事を思い出すと、どうしても不安にはなってしまう。
そもそも短剣を投げる技など……あったな。
スキル”ナイフスロー”とかいうものだったはずだ。
でも、確かあれは最初には覚えていなかったはずのスキルだと記憶していたが、違っただろうか?
くそ……
ゲームでは途中から盾しか使ってないからな、そのせいで他がどんなものを使うかなど忘れているし、便利だからって、他の職業をほとんどちゃんとやってこなかったのが裏目に出ているな。
モンスターについても、エロゲーだからという理由というべきか、色は最初に戦ったモンスターと同じようにピンク色ではあったが、何故か五体もいた。
確かに、メインヒロインのそれぞれと一緒に戦うことになれば、戦うことになる最初のモンスターではあるが、この展開で考えることは一つだった。
考えながらも、盾を構えているうちに、モンスターたちはメインヒロインたちに簡単に倒されていく。
「さすがだな」
「「「「「はい(ええ)(ああ)(ん)(だろ)」」」」」
五人がそれぞれの反応を示しながらも、俺は考える。
絶対にこれって、ハーレムルートだよな!
これまで、このゲームの中では絶対にありえないと思っていたルートに向かっていることに俺は歓喜するが、このゲームのコンセプトといえばいいのか……このゲームは全員とやれる。
だからこそ、一人とのシーンを大切にしている。
残るギャラリーは多くないことを俺は忘れていたが、ストーリーとしてはうまくいった気がする。
その後、メインヒロイン五人と向き合った俺は、会話をするわけではなかった。
「大丈夫そうでよかった、じゃあな」
「ぼ……あ……」(坊ちゃま……)
恰好つけて俺はそれだけを言って去って行く。
安定に格好つけている俺ではない俺に背筋がぞわっとしながらも、チュートリアルが終わったことだけはわかる。
入口地点に戻ってきた俺は、他の生徒たちが集まっている場所に合流する。
「きょ……これ……だ……か……きに……のか……でせ……る……に!」(今日はこれでおしまいだ。明日から、本格的に何をするのかを自分で選択することになる。頑張るように!)
【はい】
ゲームのチュートリアル的な要素である学園生活二日目、初めてのエロティックタワーに入るというのはこうして終わった。




