頬に触れる温かさ
全員が揃って戦うことが頼もしく感じる瞬間がくるとは思っていなかった。
まあ、俺が全裸だということだけが問題だったが……
でも、仕方なかった。
壁をなんとかするために必要なことには、俺かリーヤの制服が全て弾け飛んだ状態にすることが必要だった。
結局どちらが全裸になると言われれば、相談することもなく俺だろう。
一度やっているからこそ、慣れたものだ。
本来であれば二人で戦うはずだろうマンティコアだ。
縛りという最強の状態異常をもってはいるが、残念ながらこれだけの人数がいれば、全員を視界に捉えることはまず無理だろう。
そうなれば、必然的にマンティコアは他にスキルが使えなくなるため、無防備になる。
よって、縛りが使えない。
「何故だ!何故だ!」
「思い通りにいかないことなんてものは、普通じゃないか?」
「うるさい!我の苦労が、お前のような凡人にわかってたまるか!」
「凡人って、お前は人じゃなくてモンスターだろ」
思わず言っている言葉にツッコむ。
何を言ったところで、このマンティコアに対して俺たちができることというのは、倒すということだ。
「どちらにせよ。もう終わりだろ?」
「だ、だが!我はまだあきら……」
「えい!」
「ぐはあああああああああ!」
かっこつけて何かを言うタイミングで、容赦なくリーヤは一度スピアーで傷をつけた足を狙う。
最後まで喋らせてやれよとは少しは思うものの、その話を聞かないといけないというのも、本来であればない。
あるとすれば、イベントのときだけだ。
今はイベントではないので、リーヤのほうが正しい。
「何故だ!何故だ!我が倒されることなど、あるはずがない」
「頭を完全に地面突っ伏しておいてよくいうわね」
「うるさい!小娘が!」
ナオに言われて、マンティコアは怒りに声を荒げるが、地面に頭をつけているため格好がつかない。
「いいから、とどめを行くわよ」
「少し可哀そう?」
「何を言ってんのよ。下手に回復でもされて私たちに攻撃を仕掛けてきたらどうすんのよ。全裸になってるから、こいつは使えないのよ」
急に俺がけなされるのはどうしてなのか……
仕方ないことなのは、全員が理解しているはずなのに、全裸でいるだけでこうだ。
ちゃんと盾を使って隠しているのだから、いいじゃないかと思ってしまう。
言っていることは確かに正しいが……
「ま、さっさととどめを刺すか」
「そうね」
「やめろ!やめろーーー!」
マンティコアは大きな声で叫ぶが、ここで容赦をしないのが俺たちだ。
連続でそれぞれのスキルを相手にぶち込む。
すでに戦えるような状況ではなかったが、これで虫の息だ。
耐久がそれなりに高くても、五人のヒロインたちがしっかりとスキルを当てさえすればそれも意味はない。
「我はもう……」
「ああ、終わりだな」
俺は盾を両手に装備すると、マンティコアの顔を挟み込む。
「ぐおおおおおおおおおおお!」
「じゃあな」
断末魔をあげながら倒れるマンティコアに俺は、別れを告げる。
「終わり」
リーヤがそう言った通り、俺たちの戦いは終わった。
それぞれに倒した報酬として、ドロップしたものが与えられる。
だが俺からすれば、また制服を新調するためお金の大部分が失われることになるだろう点だ。
「ま、しょうがないか」
それでも、リーヤをこうして助け出せたのだからこれくらいは安いものだ。
こうして、強敵との戦闘を終えた。
その後買い物をしていた。
エロティックタワーから脱出後の買い物ということもあり、俺以外は全て寮へと戻っている。
「金がねえ……」
お金を収納できる袋に入った少量の金額を手で確かめながら、俺は思わずつぶやく。
仕方ないことだとわかってはいたが、それでもあまりに少ないと心細くなる。
どうしてゲームの世界だというのに、ここまで貧乏になってしまうのか……
次に何かあっても、絶対に制服は破かないようにしよう。
俺はそう誓いながら、自分たちの寮へと戻る前。
足に何かが当たる。
「なんだ?」
思わず俺はそれを見ると、そこにあったのは丸まった小さな紙だった。
見たことがあるそれが飛んできた方向を見ると、そこにあったのは矢印だ。
「見たことがあるな」
俺は少し前に見たことがある光景にデジャヴを感じながらも、いつだったかは思い出せない。
その矢印を辿っていけば、思い出すだろうと楽観的に考えながら俺は、書いた人物に会うために歩いた。
「ん!」
「リーヤか」
矢印の先にいたのは少し以外だったが、リーヤだった。
いつもの無表情ではあったが、どこか嬉しそうな顔をしているようにも見えた。
俺は警戒することも当たり前だがなく、近づく。
「どうかしたのか?」
声をかけた俺にリーヤは近づくと、ほっぺにキスをする。
「は?」
「ふふ、ありがと!」
そして、見たことがないような満面の笑みでリーヤは固まった俺からさっさと離れていく。
俺はボーっとそれを見ながら、頬に当たった温かさを手で拭うのだった。




