マンティコアは可愛そう
終わった。
地面に突っ伏すマンティコアを見ながら、俺とリーヤは顔を見合わせる。
「あなた、すごい」
「まあな」
俺は少しかっこつけながら、そう返す。
「後はあいつらと合流するだけだな」
「ん……少し残念」
リーヤは何かを小さな声で呟いた。
聞こえなかった俺は聞き直す。
「うん?何か言ったか?」
「ん、何も言ってない」
言っていたとは思うが、教えたくないようだ。
ま、そういうときもあるだろう。
俺だってエロゲーをやっているような男だ。
ボソッと言ったことが、実はかなりキモイことだったことなんかはありそうだ。
無理に聞き返すことはよくない。
俺は、さっさと歩いて他のヒロインたちと合流するためにマンティコアから離れていたときだった。
見えない壁にぶつかる。
「なんだこれ?」
どうしてこんなものがあるんだと不思議に思った俺は、それにじっくりと触れる。
あるはずがないと考えていたもののため、これがなんなのかということに関してわかっていなかった。
「壁?」
リーヤも不思議そうにしている。
壁だ。
でも、マンティコアは倒せたはずで、だったら前のキメラと戦ってときのように倒したら閉じ込めていた壁は解除されたはずだ。
倒されていれば?
俺はようやく違和感に気付いた。
壁が消えていないということはマンティコアは死んでいないということだ。
「くそ!」
「あなた?!」
急に盾を構えて向かってくる俺にリーヤは驚く。
だけど俺としても、悠長なことをしている時間はなかった。
カバーを使ってリーヤの前に周りこむと、向かってきたマンティコアの攻撃を防ぐ。
「んえ?倒したはず」
「いや、倒したなら壁なんかないはずだからな、それがあったってことはそういうことだ」
「倒せていない?」
「そういうことだ」
俺だって、あれだけボコボコにしたのだから倒したと考えていたが、よくよく考えたら俺の武器は盾だ。
頑張ったとしても、対してダメージが入っていなかったよいうことなのだろう。
悲しい現実だ。
攻撃を弾かれたマンティコアは、怒りに声を上げる。
「憎い!憎い!我の邪魔をするものは全て憎い!」
「憎いって、そっちが勝手に向かってきてるんだろ?」
「うるさい!うるさい!我に歯向かうなどということは絶対に許されることではないのだ!」
マンティコアは取り乱しているようで、さらに声を荒げる。
まるで先ほどまで戦っていたときとは違うような存在だというようにだ。
予想していた通り、操っていた何かがいたってことなのか?
どういうわけかそれが、いなくなったって感じか……
「お前は誰だ?」
「なんだ?我に聞いているのだったら意味がわからない。我は神だ!」
「ぷ……あははは!」
「何を笑っている!」
思わずマンティコアの言葉に思わず笑ってしまう。
だって、どう考えてもゲームに出てくるモンスターの一体に過ぎないからだ。
確かに顔や風格だけを見れば、そういう存在に見えるかもしれないが、だからこそモンスター自身が言っているのを見ると笑えてしまった。
「何も知らないのは、本当にいいことだな」
「何を言っている!我のことを知らない愚者な存在が!」
マンティコアはそう言うと、俺たちに視線を向ける。
縛りを使ってくるとわかっていた俺は盾で受ける。
「何故だ!」
「何回もその攻撃は見たんだよ」
「だとしても、だとしても我の攻撃がそんな貧弱な壁などで防ぐことはできない!」
「もう、防がれてるけどな!」
「ああいえばこういうな、お前は!」
「だったらもっと強い攻撃でもしてこいや!」
「我に向かってそんなことを言うなど、やってやる!」
マンティコアは縛りが効かないことを早々気づいたのだろう。
よって、攻撃も変わる。
だけど、俺の盾はマンティコアの攻撃を服が破けながらも完全に弾く。
「どうしてだ!どうしてだ!」
「声を荒げるなよ」
「うるさい。我は絶対的な力をもつ存在なのだ!」
「絶対の存在?そんなものはない、絶対なんてものはそれこそ絶対な」
「何を!」
マンティコアは攻撃をさらに続けるが、怒りからか、それとも自分をぜったいの強者と思っているからなのか同じ攻撃ばかりを繰り返している。
それで押し切れると思っているのであれば、さすがに俺たちのことをバカにしすぎであるが、連続の攻撃によって俺たちに攻撃をする機会がないのは確かだ。
「どうしてだ!」
「何をそんなに驚く?」
「当たり前だろ。我の攻撃が防げる奴などいるはずがないのだ!」
「実際防げているだろ?」
「くおおお!何故だ!何故だ!」
マンティコアはなんとか俺の盾を破壊しようと攻撃を繰り返す。
なんといえばいいのか、ここまでうまくいっていないモンスターを見れば、少し可哀そうになってきた。
何度も繰り返しているせいで、気づけば攻撃のタイミングもわかっているため、最初よりもどんどんと服が破れる範囲も少なくなっている。
そんなタイミングだった。
どんどんと壁を殴るような音が聞こえる。
来たか。
俺はタイミングを合わせる。
そして、マンティコアの攻撃を体でうまく受けた。
「な!」
「あなた?!」
攻撃を受けたことによって一瞬にしてびりびりになった服を見て、マンティコアとリーヤは驚く。
だけど、今はこれが必要だ。
「遅れたわね」
「お仕置きしてくれて大丈夫ですよ」
「ようやく剣の錆を落とせるな」
早々に三人が前に出てくる。
そして、発砲音が響く。
「あたいだっているから」
メインヒロインたち四人が合流した。
これで、マンティコアに対しての攻撃も足りるはずだ。
「よし、頼むぞ!」
「いいけど、近寄らないでね、変態」
全裸で盾を構える俺に対して蔑んだ目を向けるナオに俺は、心の中で叫ぶ。
このエロゲーの馬鹿野郎と……




