恨みは盾で晴らす
おかしい。
マンティコアから見える視界の先に起こっている光景に、操っていた男は思う。
あり得ない光景が広がっていた。
確かに、縛りという状態異常には主人公が言う弱点があった。
でも、それは攻略サイトなどには一切書かれていないことだ。
元々、ゲームでの戦闘ではターン制だったこともあり、縛りという状態異常は強力ではあったが、そのターンしか効果がないものだったため、普通にやっていれば気づくことはない対処方だった。
だが、それでは説明できないのが今の状況だ。
盾という、ゲームでもエロ要素でしか使えないはずだと思っていた存在を倒すという映像が見えない。
対策などできるはずがないと思っていたが、主人公はさらに多くの盾をアイテムから取り出して使っている。
その数すでに、五枚だ。
どれだけ縛りをしても、他の攻撃をしても、うまく防がれてしまう。
「いや、落ち着け……どれだけ攻撃が防がれようと、ダメージが入ってないわけではない。それに、ダメージレースでは勝てている」
男はそう自分に言い聞かせる通り、主人公の服は確実に破れており、それに対して、主人公に守られながら攻撃をリーヤはしているものの、ダメージは多くない。
だからこそ男は口元を歪ませながら口にする。
「大丈夫だ、大丈夫だ……」
だけど、男の額からは焦りからか汗が流れるのだった。
※
くそ、決めてがねえ……
俺はどうするべきか悩んでいた。
一応マンティコアの攻撃は、キメラの時ほど厄介だとは感じていない。
それは、見た目はキモイからなのか、それとも顔があるとなんとなく考えがわかるからなのかはわからないが、盾で防御するのは思ったよりも可能だった。
だけど、リーヤだけの攻撃ではマンティコアは倒せそうにない。
これは、レベルの差が明確な理由だろう。
マンティコアよりも、リーヤのほうがレベルが低いためダメージで勝てていない。
このままいけば、マンティコアを倒すよりも、俺が全裸になる方が早いだろう。
だったらキメラのときのように、モンスターがバカなことをするパターンを見つけることで対処することができたらいいが、今回に限っていえばマンティコアには無駄な動きがない。
そもそも、こいつがどんなモンスターかも今一つわかっていない。
マンティコア。
いろんなところででてくる異形の怪物。
人の顔をもち、動物の体を持っている。
動物の体はその時々によって違っているが、一緒のところは人を襲うところで、それ以外はわからない。
タイミングを計りながら俺はリーヤへと近づく。
「どうだ?」
「ん、芳しくない」
「だろうな」
「あなたも、服が」
「ああ、びりびりになってきたな」
お互いにこのままでは勝てないことはわかっている。
となれば、ここからは……
いい加減に他のヒロインたちも来てくれと思ってしまう。
ダメージを与える人数が多くなければ倒すことが難しいからだ。
「あいつら来ると思うか?」
「ん……どうだろう?」
イベントが始まるごとに、体は動かなくなるため、俺たちを探そうとしていても中断を余儀なくされたりする。
さらにいえば、このマンティコアとの戦いがリーヤと二人でこなさないといけないものだった場合。
他のヒロインが手伝うことは絶対にできない。
「一応、奥の手がないわけではない」
「どんなの?」
「説明をしたいが、あれに聞かれたくないからな」
「ん……確かに!」
「何を話している!」
俺たちに向かって、マンティコアは向かってきてそのまま腕で薙ぎ払う。
「きかねえよ!」
俺は盾で受ける。
「どうして、邪魔をする」
「邪魔?お前から急に絡んできただけだろ!」
隠し部屋から出たら、急にイベントが始まったのだ。
むしろあそこでいい感じになって出てきた場合、完全に邪魔なのはマンティコアのほうだ。
そう考えると、本当にこいつは……
「おら、これでもくらえ!」
「は?何をしてぐああああああああ!」
「あ、あなたなにした?」
「いや、俺もここまでダメージを与えるものだと思ってなかったからな、予想外だ」
考えるよりも体が動いた結果、俺は持ち物からアイテムを一つマンティコアに投げていた。
明かりアイテムとされるものの一つ、発煙筒だ。
この明かりアイテムは値段が安い代わりに、煙が出るし音が出るしでモンスターを呼び寄せてしまう。
よって使う機会は多くない。
だけど、この前明かりアイテムの一つ。
マッチがトレントに有効だったことを考えると、発煙筒ならばモンスターにもっとダメージを与えることができるのではと一つだけ買っていたものだ。
「ぐああああああああ、目が染みるううううう」
「すごい効き目」
「ああ、俺も驚いた」
発煙筒は、多くの煙が出る。
どうやらマンティコアに対しては、それが有効だったみたいだ。
「リーヤ!」
「ん……………………スピアー」
絶対に貫ける槍をリーヤが使う。
これによって、マンティコアの腕一本に大ダメージが入ると同時に体勢が崩れる。
あげていた頭が地面に倒れそうになる。
ここだ!
俺はあることを思いついて、頭の下にもぐると頭を上に弾き上げる。
ガンという音とともに、頭が上がる。
そして、上がった頭はまた落ちてくるが俺はそれを再度盾で弾き上げた。
「おらおら!」
盾ではダメージを与えられない?
だったら相手を使ってダメージを与えればいいだろ?
「ん……酷い」
リーヤがそんなことを言うがお構いなしに俺は、マンティコアの頭を何度も何度も跳ね上げるのだった。
※
「おえええええええ……」
男は部屋で一人吐いていた。
視界が煙で覆われたと思ったら、次には上下にずっと視界が動くようになった。
操作する体もうまく動かなくなってしまい、強制的に解除をしたが、時すでに遅しでかなり気持ち悪くなった。
「くそ、何がどこまでこいつはわかってるんだ!」
男は憤慨しながら地面を拳で殴ると同時に、腕にはめていた腕輪が割れて外れたのだった。




