防御は最大の防御ってな
どうして?
リーヤが一番最初に思ったことはこれだった。
わけがわからない。
それが二つ目だった。
相手はマンティコア。
隠しルートとされる状況でしか出会うことはない。
でも、他にも出会うことが可能である。
それは、ゲームオーバーとなった際だ。
モンスターに襲われる。
ゲームであれば、そうだよなと思われる程度のことだが、実際に現実に起こってしまう場合。
恐怖でしかなかった。
なされるがまま、自分ではないゲームのキャラが受けていると客観的には思っていたものの、感覚はあるし、終わっても残っている。
言ってしまえば、本当の意味で恐怖を植え付けるような存在だ。
体が動かなくなって、一方的になぶられる。
あの光景は忘れようがないし、あの状態異常には誰も抗うことなどできない。
そう思っていた。
もし、主人公がリーヤを助けるときがあっても、一度マンティコアに捕まった後だと考えていた。
だけど、リーヤのそんな考えはいい意味で裏切られた。
イベントが変わったのに気づいたのは、目の前に見慣れないログのようなものが流れたから……
え?
不思議に思っていたときには、イベントは進んでいき戦うことになっていた。
そのときにリーヤが思ったことは勝てるわけがないということだった。
だけど目の前にいるあなたは戦う意思をみせ、さらには盾を構えた。
意味がないことをしていると思ったときには、マンティコアの嫌な表情というのが視界に入った。
(ん……わかる。ごめん、あなた……)
あの恐怖には勝てない。
ここで、素直に捕まらなければ、さらにひどい仕打ちを受けるのは明白だ。
だったら、少しでも和らげようと考えた。
どうせ負けるのだから……
リーヤが楽にすればいいと思った。
でも、リーヤの行動に気付いていたのか、あなたは受け止めた。
そして、真剣な表情を見てハッとした。
ここにいるのは一人じゃないと……
※
内心心臓がバクバクとなるのを感じながら、俺はかっこつけていた。
本当にうまくいくとは思っていなかったのは、つい先ほどの後ろからの槍を手で掴んだことだ。
正直にいえば、かなり予想外だった。
なんとなくマンティコアが嫌な顔をしているのに、俺を見ていない気がしていた。
こういうときにゲームでよく起こるのが、後ろにいたヒロインに裏切られてしまうというものだ。
それをなんとなく予想した俺は、これは一応考えた結果にはなるが、ほんの少し前。
貫かれた横腹の辺りをやられそうな気がして、手を出したのだが、どうやらうまくいったらしかった。
他のゲームでもあるような展開を予想してたけど、予想通りだったな。
ちょっと予想外だったのが、これがイベントシーン的なタイミングじゃなかったことか……
どうしてかってことを考えたいが、今は無理だな。
そして、俺はすぐに考えを切り替えると、隣にリーヤが並んだ。
「うちもやる」
「ああ」
戦う意思表示に俺は頷くが、モンスター。
マンティコアは声を荒げる。
「おい!わかっているのか、矮小なもの!歯向かうということは、ただでは済まさんぞ!」
マンティコアの言葉に、リーヤは槍をもっている手が震えていたが、しっかりとマンティコアを見据えた。
「わかってる」
「覚悟はできていると……面白い。もう、泣いても叫んでも壊れても知らないぞお!」
マンティコアは大声でそう言うと、状態異常を俺たちに向けてくる。
だけど、ここで俺の出番だ。
俺はカバンからアイテムを取り出して、俺たちの前へ適当に投げた。
マンティコアもリーヤも俺がバカなことをしていると思っていただろう。
だが、適当に投げたもの。
このときは、砂。
敵に投げれば視界を奪い、女の子に投げれば、叩く姿で胸チラを狙えるかもなどという説明が書かれているこのアイテムは俺たちの身代わりになって状態異常縛りの効果を受けていた。
「何を……バ、バカな!」
驚くマンティコアに向かって、俺は盾を振りぬく、カッコいい言葉とともに!
「強力だよな。その状態異常!」
だが、リーチが短いこともあり、盾はマンティコアに届かないが、マンティコアは警戒して後ろに下がる。
「ほお、今ので縛りを防げるのも驚いたが、盾でダメージを与えられないとみて、こちらを驚かせて下がらせたか、無謀にも戦いを挑むものではなかったか……」
マンティコアは俺のことをそう分析する。
だが、一つ言っておくとかなりの買い被りである。
今の俺は攻撃を外したことがかなり恥ずかしいと思っているからな。
とはいえ、そんなところは見せられない。
俺は、まだカッコいい感じに、マンティコアの縛りという状態異常にある弱点を説明する。
「ああ、その状態異常には絶対的な弱点があるからな」
「ほお、我の技にか?」
「そうだ。気持ち悪いその顔が見ている相手しか縛ることができないことだ」
最強といわれる、この状態異常だが、実は攻略法というべきか対処法というべきかはわからないが存在している。
このクソゲー……いや、エロゲーで気づいたのは偶然だった。
それは、徹夜で眠すぎたときに起きた誤操作だった。
一緒に戦っているヒロインが攻撃をするように仕向けるために、回復アイテムをヒロインへと使うつもりが間違えてモンスターに使うという選択をしてしまったときだった。
”状態異常によって、モンスターには届かない”
そんなログが流れた当時は、飛び起きた。
新しい発見とともに、ほとんど使うモンスターはいなかったが、もしもの時の対処法として縛りを使うモンスターにはアイテムを投げれば状態異常も防げ、うまくいけばヒロインがなんとかしてくれるということを学んだ。
よって、現実でも同じようにすればいいだけだった。
俺はアイテムから持っていた盾と同じものをもう一つ手に取る。
「リーヤの買い物は無駄じゃなかったな」
これを知っていたのかはわからない。
だけど、俺には使えないことがわかった槍をリーヤにプレゼントしたところ、同じようにリーヤも俺に盾をプレゼントしてくれた。
二枚の盾など使うことはない。
そう思っていたが、縛りという状態異常は俺を見ないことには発動しない。
よって、盾を二枚構えている俺には意味がない。
とはいえ、ここで思うだろう。
盾を二枚も構えていても、盾自体が縛られていれば、意味がないと……
「何を……であれば、盾ごと止めてやればいい」
マンティコアも気づき、盾に縛りを使う。
完全に盾は動かなくなる。
「これでおしまいだ」
マンティコアは、ゆっくりとこちらに向かってきて、前足を振り上げる。
俺はそのタイミングで、盾の下からマンティコアの後ろ脚へと滑り込む。
「何!だが、そのおかげでこちらは無防備だぞ!」
予想外の行動にマンティコアは驚くが、さすがというべきか次の狙いはリーヤだ。
とはいえ、俺だってわかっている。
アイテムからあるものを取り出すと、俺はスキルを使う。
「カバー!」
「何!」
俺は三枚目の小さな盾でマンティコアの攻撃を弾いた。
これによって、マンティコアの視線はそれる。
「ほら、防ぐことだけはできるからな!リーヤ!」
「ん!ライトニングスピアー!」
わかっていたかのように、リーヤはマンティコアに新しく覚えたスキルを使う。
マンティコアは避けようとしたものの、俺よりも明らかに速い攻撃によって、少しではあったが傷を負うと同時に、縛りから解けた盾が倒れる音がこの場に響いたと同時に
「ギャアアアアア!」
マンティコアの咆哮が響き渡った。




