エロゲーを変えろ
完全に動けない。
イベントであってもまばたきくらいはできるというのに、完全に動けない。
こんなことができるのは、すぐに状態異常の縛りだとわかるが、だからこそ驚く。
本来であれば、縛りという状態異常は最強だからこそ、長くは続くことがない状態異常だ。
イベントだからというので動けなくなるのはわかるが、さすがにやりすぎだ。
確かにここまで圧倒的な強さなモンスターであれば、リーヤも諦めてしまうのは必然だ……ってそんなわけあるか!
なんだ!
このクソみたいな強いモンスターは!
エロゲーだからってゲームバランスを壊すほどのモンスターを新しく作るってさすがにやばいだろ。
これまで鬱憤が溜まっているからこそ、頭の中は怒りでいっぱいだった。
諦める?
強すぎる?
ここはただのエロゲー世界だぞ。
知ってるストーリーと違う?
だからどうした。
メインヒロインがモンスターにやられる姿を見てろと?
おい!
選択肢を出せや!
俺はゲームに、世界にキレる。
このクソみたいなイベントを変えるためには必要なことだろ?
ここまではこの世界の通りに頑張ってきてやったんだ。
なら、ここで俺の言うことくらいは聞いてくれ!
できるかはわからない。
だけど、思うことは勝手だ。
だから俺は、その可能性があるというのであれば、掴みとりたいと考えた。
掴み取るとき、一番必要なことはなんだ?
いつも思うことではあったが、その掴み取りたいものを強く願い、出せるなら声に出すことだ。
自己暗示をかけるように……
そんなことをしても変わらない。
わかっている。
だからといって、何も思わなければ、変わるものも変わることは絶対にない。
「あ、ぐ……」
そうだ、動け口。
ミシミシと音が鳴っているような気がするが、体も少し動くようになっている。
「む……」(無駄だ!)
足掻いている俺を見て、マンティコアは嘲笑うように口にする。
無駄?
知ってるよ。
でもなあ、無駄だと思うのは、全部終わってからで十分だろうが!
そんなときだった。
”あなたの思いの強さによって、物語が変わりました”
俺の目の前に、そんな言葉がチカチカと浮かびあがる。
変わった?
そう思ったタイミングで、俺の口は動きだす。
「無駄じゃねえ」
「なに……な……」(何がどうなっている!)
「あな……」(あなた……)
物語が変わったとか、俺にはすでには関係ない。
やれること……いや、やりたいことをやるだけだ。
「うご……が……」(動けるはずがない!)
マンティコアは、状態異常をするために俺に視線を向けるがそれを盾で防ぐ。
まじかよ、何も見えてないのに盾で状態異常の攻撃を防げるのかよ、俺は……
イベントだからといって、さすがにかっこよすぎるシーンを作り出した俺自身に、さすがに大丈夫かと心配してしまう、いろいろと……
だが、やってくれた。
「こんなところで誰も連れてはいかない」
「で……」(で、でも……)
「それに、今更遅い」
「ゆる……さぬ」(許さぬ、許さぬ!)
かなりの怒り声を俺に向けるマンティコア。
どういう仕組みかはわからない。
まあ、エロゲーだし……
でも、わかることはある。
クソみたいな世界をクソじゃなくならせるために、俺はやる。
しっかりと盾を構えてマンティコアを見据えたところで、イベントが終わる。
「倒してやるよ、このクソキモ野郎が!」
「どちらが、弱者なのかを教えてみせよう」
すぐに邪魔だと俺のほうに向かってマンティコアは、その腕を振るう。
「おら!」
ギンという鈍い音とともにぶつかりあう。
わかっていたことではあるが、俺よりも攻撃の威力が高いので服が少し破れる。
だが、思っていたほどではない。
新しいスキルのおかげで戦えるな。
なんだかんだで、モンスターを倒してきたおかげもあって、俺のレベルは十。
そう、二桁に到達していた。
よって使えるスキルもそれなりにある。
まあ、その全てが防御に特化したものだという問題はあるが……
でも、やれる。
「だから、俺を貫くなよ、リーヤ」
俺は後ろを見なくても、向かってきた槍を腕で掴むのだった。




