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エロゲーは当倍速で  作者: 美海秋


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30/35

気まずい瞬間と選択

 一本の木と一つの枕。

 その二つがあれば、何も起こらないはずがなく、俺たちは木の下で寝転んでいた。


 これを傍から見れば、本当にふざけているのかとか、頭がとうとうおかしくなったのかなどのいろんなことを考えるだろう。

 言ってしまえば、違和感がありまくる状況ではあった。


 でも、これには理由というものがあった。


 二人して寝転ぶ少し前。

 ある選択肢というものが、あった。


 よくわからなかった選択肢から、知っている選択肢。

 だったら、知っている選択肢なのだから、いい選択をすればいいだけだ。

 本来であれば、そうなのかもしれないが、そのときは違う。


 こんなにまだ何もわかっていない状態でリーヤとすることができる選択肢がでるとはな……


 出てきた選択肢というのは、今の言葉からわかる通り、二つあるうちの一つの選択肢はそのままの流れでしてしまうというものだ。

 よって俺はその選択肢を選ぶことができなかった。


 選ばなかったのは、野外だから?

 そんな野暮な理由ではない。

 選択肢を選んだ後にどんなことが起こるのかがわかっているということは、ゲームですでに経験した内容だったという意味だ。


 せっかく新しいイベントシーンを手に入れられる可能性があるルートにいるのだから、知っているほうに行きたくない。

 決していざ選択肢が出て、怖気づいてしまったわけではない。


 とはいえ、いつまでもこうしている場合ではない。

 体が自由に動いているということは、イベントが起こっているというわけではない。

 よって、ナオたちが俺たちを探している可能性が高い。


 この部屋は隠し部屋のようにはなっているものの、エロティックタワー内なのだ。

 いつかは見つかる。


「いつまでこうしてるんだ?」

「あなたが選ぶまで」

「選ぶってなあ……」


 すでに選択肢が出て、俺からすれば選んだはずだ。

 よって、言われていることがそもそもおかしい。


「選んだんじゃないのか?」

「正解じゃない」

「正解って言われてもだな」

「わからない?」

「わかりたくないな」


 言いたいことは、自分を抱けということなのだろうが、かなり遠回しに言っているのは、どうしてなのか……


「どうして拒否?うち魅力ない?」

「そういうことじゃない」


 どうして、そんなに抱いてほしいのか理解できなかった。


「もう行くぞ」


 俺はこのままでは埒が明かないと、立ち上がる。

 何かをもっと話してくれると思ったのに、そういうわけではなかったからだ。


「待つ……」


 リーヤが俺に声をかけるが、それよりも先に行動した俺は勢いに任せて隠し部屋から出るため、扉を開けるが半分だけ開けたところで、リーヤに服を掴まれる。


「ダメ……」


 何がと言葉にする前に俺の体はまた、勝手に動くようになる。


 どういう状況なんだ?


 こんなイベントを全く知らない俺は、これから起こることが何なのかを予想する。

 ダメだとリーヤが俺を止めるということは、何かがあるということ。

 だけど、俺もリーヤも会話もせずにジッとしている。


 バグったのか?

 動かない自分たちに、思わずそんなことを考えていると、影がさす。


「なんだ?」

「きた……」(きた)

「なんだよ、あいつは」

「マン……」(マンティコア)


 倍速のせいで、一瞬リーヤが言ったことに?となったが、影に視線をやったところで何かわかった。

 気持ち悪く、醜悪な顔を貼り付けたモンスターだ。


 人の顔に、ライオンの胴体。

 見た目から推測されるモンスターというのはマンティコアだ。


 一つ問題があるとすれば、このエロゲーで俺は一度も出会ったことのないモンスターだというところだ。


 マンティコアは、リーヤのことを見下ろすと会話を始める。


「き……のか!」(きき、嫌われたのか!)

「ちが……」(違う)

「いい……たら……につ……」(いい、できなかったら、違うことに使うだけ)


 どんな会話をしているのか、正直わかっていないが、違うことはわかる。

 こいつは敵だ。


「おま……しだ……」(お前も差し出せ)


▶差し出す

 差し出さない


 出てくる選択肢。

 俺は迷わず下を……

 選ぼうとして考える。


 このエロゲーが、そんな単純なのかと……

 すでによくわからないストーリーが多くなっているのだ。


 単純に差し出さないを選んでうまくいくのか?

 とはいえ、ここまでどうこのゲーム世界が進むのか、道筋はわかった。

 だったら、選択肢を間違えたところで、もう一度チャレンジすればいい……なんて思うか!


 今まさに選択肢が出ているだ。

 この世界のリーヤと関わったんだから間違えたくない、それもある。

 でも一番思うのは、このエロゲーの選択肢など間違えてやるものか!ということだ。


 設定がめちゃくちゃなゲーム。

 そんなものをして、楽しいはずなどない。

 もう一度だって、同じ思いはしたくない。


 だったらこんなエロゲーの正解は逆なはずだ。

 俺はさらに考えて応えを出したときに、あるものが視界の片隅に見えて、むしろ確信した。


▶差し出す

 差し出さない


 俺は上を選んだ。


「ああ、差し出してやるよ」

「ん」(ん)

「もの……がい……」(物分かりがいい)


 リーヤは頷き、マンティコアもどこか油断している。

 ここだ。


 俺の体はイベント通りに動く。

 今は勝手に動くターン……本当にそうか?


 どうして、この世界に来ることになったのか、いまだに全くというほど理由はわからない。

 でも、俺がこのゲームに来たのにはきっと意味がある。

 だから、動いて……


 俺の体は、リーヤが持っていた枕を掴むと、油断していたマンティコアめがけて投げつける。


「なに……」(何をする!)

「あな……」(あなた?)

「行くぞ!」


 そして、カッコよく俺は走り出した。


 ああいっておくと、全てはイベント通りだ。

 決して勝手に動く体を無理やり押さえつけて、行動したわけではない。


 かなり力強く決心したが、正解をちゃんと選んだということなのだろうか?

 今言えることがあれば、穴があったら入りたいだ。


「おい……」(追いつかれる)

「わかってる」


 四足歩行で、さらには大きなモンスターと、俺たちとでは走るスピードに差がある。

 急に白いものが飛んできたことによって、マンティコアも知らないものに驚いたのか、後ろに飛んだ。

 その一瞬の隙を作って、すぐに走って逃げたとはいえ、追いつかれるはずだった。


 だけど、マンティコアは逃げる俺たちを見ているだけで何もしてこない。

 まるで、意味がないように……


「リ、リーヤ!?」

「ごめ……」(ごめん)


 急に足を止めたリーヤによって、俺たちは立ち止まる。

 頭を下げていることから、謝っていることは間違いないのだが、どうして謝っているのかわからない。


 そんなことよりもさっさと逃げないといけないだろ。


「にげ……た……なる」(逃げたら、あなたの迷惑になる)

「どんなだ?」

「あれ……せな……」(あれは倒せない)

「だったら、余計に逃げないとだろ!」

「でも……」(でも……)


 リーヤはどこか諦めているようだ。

 そんなリーヤに同意するように、マンティコアが声をかけてくる。


「にげ……だだ……」(逃げても無駄だぞ)

「わからないだろ」

「わか……それ……まれ……のだ……」(わかる。そいつは、それを体に刻まれているのだからな)

「何を言って……」


 お前なんか、俺は初めて見たというのに、設定が変わったのか?

 知っているのか、このモンスターを?


 これまでにもわけがわからないことはあったが、ここでさらにわけがわからない。


「あな……も……」(あなただけでも、逃げて)


 だけど、会話はさらに進む。

 そんな言葉とともに、リーヤの動きが止まる。


 動きが止まったのを見て、すぐに理解する。

 状態異常になったということだ。

 完全に止まってしまったリーヤを見て、次は俺だと理解する。


 くそ!


 心の中で悪態をつくものの、結果は変わらない。

 マンティコアに見られた俺は動きを止めたのだった。

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