変わるエロティックタワー
今日の寝起きは特にだるかった。
変な世界で、さらには無駄足ばかりしているせいで、精神的に参っているせいなのかもしれない。
結局、昨日見つけたキメラの被り物に関しては、埋めるのが面倒だったこともあり、回収した。
部屋に帰って被ってみたものの、視界が遮られるだけでこれといって使えるという感じでもなかった。
「くそ、エロティックタワーに行けってことなのかよ」
よって、運命といえばいいのか、行き着く先は決まっていた。
昨日はキメラを討伐した次の日ということもあって、リーヤ以外のメインヒロインたちと出会うことがなかったが、今日はむしろ積極的に出会わないといけない。
このままエロティックタワーに入らないでゲームがクリアできるのなら、そのほうが嬉しい。
この世界の時間が進むならだが……
「やっぱり、何かが変わってる感じはないよな」
通常のゲームであれば、季節が移り変わったり、タイミングによっては学園で祭典が行われたりするだろう。
だが、このエロゲーにはやるということがゲームの前提条件としてあるため、そんなイベントなどは一切というほどないのはゲームのときから変わらない。
そのため、いつ外を見ても景色に変わり映えがない。
よって、やるコンテンツというのがエロティックタワーに入ることくらいしかない。
タイトルになってるからな、やってほしいというのはわかるんだが、もう少し何かがほしいとは思うものの、そんなものが存在していれば、今頃このエロティックタワーは次の作品を出しているほどには人気になっていたのでは?と思っている。
「やることもないし、やるけどな」
俺は今日は、メインヒロインたちを見つけるべく歩く。
探すとなると大変だ。
なんていうこともなく、全員を簡単に見つけることができだ。
それは、どうやら五人は固まって行動しているかららしい。
というのも、俺と同じように気づけば寮にいる人が減っていたり、さらには五人でいれば他人のイチャイチャシーンを見なくても済むからということだ。
「よ!」
「よ!じゃないんだけど。あんたね、昨日はどこにいたわけ?」
「まあ、ちょっと買い物をだな」
「買い物?そんなの、全員で行けばいいじゃない」
「どうしてだ?」
「わからないの?そうしないと、特におバカ二人がまともな装備をしないでしょ」
ナオがそう言った先にいたのは、ヤンとカナだ。
確かにキメラと確かったとき、あの二人だけは初期装備のままだった。
「どうする?」
「どうするって、決まってるでしょ、買いに行かせるのよ」
「だったら、全員で行くのか?」
「そうね。誰かさんが途中で逃げちゃうかもしれないし」
ナオはそう言うと俺のほうを見る。
こっちを見るなこっちを……
逃げるなら、すでにそうしている。
「行くわよ」
「ああ」
ナオが先導する形で、お店へと向かう。
さすがに学園内なら、迷うこともないだろう。
俺はなんとなくわかるが、二人が新しい装備を買わなかった理由を聞くことにした。
「いいか?」
「はい。どうされましたか?」
「どうしてヤンは、新しい武器を買わなかったんだ?」
「それは忘れていただけですわ」
「本音は?」
「ギリギリの戦いをすることで、スリルを味わいたいと思いまして……は!違いますわ」
「なるほどな」
思った通り、さすがは変態である。
考えていたことに近いことを話したな……じゃ、次だ。
「いいか?」
「どうした?」
「カナはどうして、装備を更新しなかったんだ?」
「拙者か?それはもちろん、この鍛えた筋肉を試したいからになるな」
「そうか」
「ああ。あなたもどうだ?筋肉を鍛えるためには、必要なことだと思うぞ」
「あ、うん、そうだな」
話していて、最後には俺の返事が適当になるのは仕方ない内容だった。
予想していたとはいえ、どうして全てを筋肉に結び付けるんだよ。
二人の話を聞いてわかることは……このままいけば、確実に装備を買うことはないことだ。
こうなったら全てをナオに押し付けよう。
そうだな、それがいい。
俺はうんうんと一人で頷くと、そのタイミングで尻に衝撃が走る。
ハッとして後ろを見ると、尻を蹴った相手であるナオがジト目で俺のことを見ている。
「なんだよ」
「なんとなく、私に全てを押し付けようとする気配を感じてね」
「そ、そんなことをするわけないだろ?」
どうしてこいつはこんなに勘が鋭いのか……
俺は思わずそう思ってしまう。
「ならいいけど、何回も言うけど途中でいなくならないでよ」
「ああ」
結局監視されるようにして俺はこの六人で昨日に引き続き買い物に行くことになった。
今更ながらにこの学園にある唯一買い物ができるこの売店では本当にいろいろなものが買える。
街に出かけていろんなものを見て回る。
なんてことができないため、売店でなんでも買えるようになっている。
ゲームのときであれば、部屋を装飾するためのものだったりも買ったりしたが、今ではそんなものを買う余裕はない。
「はあはあ……これで終わりね」
「お疲れ」
「本当にね」
買い物に関してはナオにほとんど任せてしまった。
それは、おバカな二人が、装備を買うということで理由というか理屈はわからないが、服を脱ぎ始めたからだ。
慌ててナオが止めたものの、二人は自分の体を見てもらわないことには、必要な装備がどんなものなのかわからないだろうと言い切ってしまい。
結果として、根負けしたナオが二人の装備を見繕うことになった。
「いいものは買えたのか?」
「おかげ様でね」
「なら、よかったな」
「ええ……この後にはしっかりと働いてもらうもの」
これだけ疲れさせられたのだから、ただでは終わらないと考えているのが、ナオらしいといえばらしい。
さすがだ。
「ほら、今度はエロティックタワーに行くわよ」
こうして、俺たちは次の目的地であるエロティックタワーに入る。
そして、早速二人はポンコツではあるが、先日よりも活躍している。
ナオが見繕った装備のおかげだろう。
カナには攻撃力は弱そうではあるものの、扱いやすそうな剣。
これについては、最初は嫌がったらしいが、「筋肉が自慢だったら、こういう武器で大ダメージを与えるほうがすごいんじゃないの?」とナオに言われて、確かにとなったらしい。
さすがはナオだ。
扱いがわかっている。
ヤンに関しては、魔法の威力や範囲が大きくなるものの取り回しが難しい。
ゲームのときであれば、モンスターの攻撃を回避することができないとかいうデメリットをもっている。
それくらい大きな杖を装備している。
確かに俺もゲームの時には盾を装備していたため、ヤンと一緒に攻略することになれば、一番初めに装備させていたものだったものだ。
これに関しても、少しヤンは渋ったようだが、「これだけ重いと、持つだけでもいろいろな負荷をかけられると思うけど」などとナオに言われて、確かにこれならいつでも自分の限界を試せるとなったらしい。
さすがはナオだ。
扱いがうまい。
よって、他の四人である俺たちは、少し楽をしていた。
まあ、まだ二階にしか来ていないので、ここまでは順調に来られないとヤバいが……
「ん、順調」
「だな」
「楽にお金稼ぎは最高だな!」
ナオが支持を出して二人を働かせているおかげで、後ろにいた俺たちは少し対処するだけでなんとかなっているというのは嬉しい限りだ。
しかも、チカが言う通り、楽に稼げているのはいい。
レベルが上がったおかげで、使えるスキルが増えたというのも、二人のやる気に繋がっている。
このまま、何事もなくゲームのように世界が進んでくれればいいが……
そうはならないのが、この世界だ。
何かというべきか、違和感があった。
「三階だよな」
三階に到達すると、つい前にあったことがない。
あのネーリがいないことだ。
いるのはトレントと、一、二階にいたモンスターだ。
あれだけ俺たちを苦しめたことで、排除されたのか?
もしくは、どこかに集まっているとか?
俺は警戒を強める。
だが、四階に上がったところで、違和感が現実になった。
「止まってくれ」
「何かあったの?」
他のメンバーがこのエロティックタワーについてはわかっていないのと、ナオはかなりの方向音痴なため、階段を見つけるときとさらには次の階層に向かうときには俺が先頭となって歩いていたからこそ、違和感をより早く発見した。
そこにあったのは、この四階から出てくる、ビリビリと同じ場所にいるネーリだ。
このエロティックタワーというゲームには、状態異常が存在している。
眠り、痺れ、鈍り、縛りの四つだ。
エロゲーだからか、毒なんかの要素ではなく体の自由を奪うようなものばかりだ。
全て名前の通りではある。
眠って動けなくなるもの、痺れて何か行動を起こすとびりびりとした感覚が体を襲うもの、動きが全て遅くなってしまうもの、完全に縛られて動けなくなるというものだ。
エロティックタワーでまずいのは、この状態異常たちが同時に使えてしまうことだ。
だから、上の階にいけば、そういうモンスターもいることはわかっていたが、ゲームのときは今のように最初のうちは同じ階に複数の状態異常が使えるモンスターが一緒にいることがなかった。
それなのに、今は一緒にいる……そこから考えられることというのは……
「誰かが調整でもしてるのか?」
「何かいった?」
「いや……」
俺は思わず口から出ていた言葉にナオが反応したのを否定する。
それは、今の段階では予想でしかないからだ。
もしかすれば、キメラを倒すことによって、エロティックタワーも俺たちが新しい装備を買えたようにバージョンアップしている可能性もあるからだ。
完全にいらない要素ではあるが……
「ここからは、戦闘も慎重にやるぞ」
俺は五人にそう指示を出すと、さらに進みだすのだった。




