隠されていたもの
結局盾以外のものが使えないことがわかった俺とリーヤは、早々にエロティックタワーから出た後、別れて寮へと戻っていた。
今日のよかった点は他のヒロインたちに出会うことがなかったことだろう。
そんなことを振り返りながら、俺はまた寮を探索する。
急に何かが起きたときに、使えるものを手に入れておきたかったからだ。
「何が使えるかわからないからな……結局盾以外は武器として使えないのがわかったからな。明かりアイテムもこれまでとは違う使い方をできたりしたからな。何が役に立つかわからないしな」
少し前に明かりアイテムがドルイドに効果的だったこともあって、他にもモンスターに使えるものがあるんじゃないかと考えてだ。
どんなものが使えるかわからない以上は、いろんなアイテムをできる限り集めておくのが無難だ。
問題は、ゲームのときと違ってどこにどんなアイテムがあるかわからないことだ。
早速捜索を開始するが、簡単には見つからない。
今のところ唯一使えるのか、使えないのかわからないものならもっているが……
俺は懐から少し前に手に入れた本を取り出す。
書かれている内容というのは、俺が書いた雑ながらも読める字だ。
要点のみを大きく書いて、注釈を入れることで見ると内容を思い出せるような仕組みになっている。
だが、それを使ったところでわかるのはゲームの時にどうだったかというもので、現実になってしまった今は、使えるのか正直微妙と言わざるを得ない。
「一応確認しておくか……」
本を開いて中を読む。
相変わらず、必要なこと以外は書かれていない。
今更にはなるが、もう少し気になったところを書いていれば、役に立ったかもしれなかった。
「ん、なんだこれ?」
だけど、そんなときに一つの紙が落ちてきた。
メモ書きのようなものだが、書いた覚えは全くない。
書かれている内容も、「味方は敵」としか書かれていない。
何を伝えたかったのかは、甚だ疑問だったがそんなことはわかっていた。
なんでかって?
これまでイベントのたびに苦労ばかりをかけられたのだ。
あんなことをするやつらが敵でないなら、なんだっていうのだろうか?
「試練だとか言うやつがいたら、絶対に同じ絶望を味あわせてやる!」
そんなことを思ってしまうのも無理はない。
元がゲームだからか、この世界に来てから本当にいろいろ起こりすぎているせいだ。
本来、こういうイベントみたいなものなど、行事ごとにあるものだ。
例えば、一ヶ月後……
エロティックタワーに慣れてきた主人公たちはみたいな感じに……
それなのに、この世界では毎日のように何かが起こるという。
やはりゲームの世界に憧れをもっても、来てはいけないということをしみじみと感じてしまう。
「あーダメだ。やらないといけないことを見失ってるな……」
何か使えそうなアイテムを入手するという目的だったはずなのに、口からは文句しかでない。
俺は気持ちを切り替えると、もう少しだけアイテムを探す。
「だけどな……何もないよな」
簡単に見つかれば苦労はしない。
また、他はわからないが、寮を管理している人がいるため、ゴミ……落ちているアイテムなんかも回収されたりする。
後、気になるところといえば、人が少なくなっていることだ。
「もう、卒業したってのか?」
俺は改めて人数を確認して嘆く。
だって、仕方ない。
この学園から卒業するということは、もちろん男として一つ成長するということなのだから……
エロゲーなのだから、卒業までは短いのかもしれないが、それでも人が少なくなっているのを見ると、悔しい、爆発しろ……いや、同じ学び舎で生活していたのに寂しいと感じてしまう。
話したこともないけどな。
結局のところ何を言いたかったのか、それは……
「マジで、ゴミすらもないとか、優秀だね」
何も見つからないことによる焦りと、戸惑いによるものだった。
確かにアイテムを見つけるのはランダムだとはいえ、生徒が少なくなってしまえば、それだけアイテムが見つかる可能性というものも低くなる。
時間が立てば立つほど俺が何かを得ることはなくなるということだ。
「あー、くそ……独り言をブツブツ言ってるんだから、反応くらいしてくれてもいいんじゃないのか?」
このエロゲーでは、親友枠というものが存在しないため、同じ寮にいるというのに、男には話しかけることができず、こうして俺がブツブツと話していても、誰も反応をしてくれない。
これを外から見ている人がいれば、完全に俺が危ない奴になるのか、もしくはいじめになるのか……
答えは前者だろう。
「寮にいても、やることがねえな」
俺は、外へと行く。
この時間に行けるのは、男の寮と女の寮のみだ。
よって、俺が自然と向かうのはもう一つの寮だ。
夜這いではないが、チカを助けたのが、かなり前に感じてしまうくらいには、その後に起こったことが俺の精神を痛めつけた。
どうせ自室に入って寝れば明日になる。
なら、何かできることはしておくべきだ。
「やっぱりいるな」
入口には予想通り、あの時と同じように寮母が立っている。
あれに見つかれば面倒なことをやらされてしまうので、今は見つからないようにあの時と同じように寮の後ろに行く。
前回とは違っているところは、俺一人だというところだ。
これによって、万が一にも寮母に見つかるようなことはない。
ち……暗くて見えにくい。
俺は懐に閉まっていた本を広げていたが、夜なので見えにくい。
前回ナオの部屋を覚えていたからよかったものの、今後のことを考えて全ての部屋に間違いがないのかを確認しておくべきだと考えた。
「なるほどな……わからないな」
でも、案の定わからない。
いや、当たり前だった。
外から窓を眺めているだけで、どこに誰がいるのかがわかるというのであれば、俺はエスパーか何かだ。
そんな能力など全くない俺は、どうするか迷う。
前回のように緊急を要するときなら、迷わず行動をしていたが、今回のようなタイミングではなかなか大胆に行動するというのも難しい。
もし、ゲーム通りではなく間違っていたらと少しでも考えたら、さすがに躊躇してしまう。
「ダメだ、帰るか……」
俺は諦めて、去ろうとしたときだった。
ふと地面に矢印が書かれているのが見えた。
「なんだ、これ……」
誰に向けてのものなのかがわからない以上は、余計なことはしたくないと考えるだろうが、俺はどこかでこのまま寮へ戻りたくはないと考えた。
だから、俺は矢印の方向に歩いた。
かなり遠くまで行かされると最初は思っていたが、すぐに矢印は終わった。
地面に丸と「ココ!」と書かれていたのだ。
これなら、間違えるはずはない。
俺は書かれた場所を手で掘り返す。
そこにあったのは、大きな缶だった。
すぐに中を確認すると、そこにあったのはキメラの頭の被り物だった。
俺はすぐに手に取ると、無言で地面にたたきつけたのだった。
だから、気づくことはなかった。
そのときに被り物から勢いよく飛び出た手紙の存在を……




