さらに面倒なことを押し付けられた
「はあ、はあ……やれたな」
なんとかうまくいったことに俺は安堵と、さらにいえば体には急な疲れが来ていた俺は倒れていた。
予想通りというべきか、キメラは俺がぶん投げた盾にバカのように突進をしていった。
結果、勝手に自滅した。
キメラを倒したというよりも、勝手に倒れたと言ったほうが正しい展開になった。
倒し方を見れば、確かに簡単ではあったが、モンスターの特性に気づけていなければ、できなかっただろう。
そんな倒れていた俺の上に影がさす。
「ん……お疲れ」
「リーヤなのか?」
「ん……そう……」
先ほどまでの、男が乗り移ったような感じではなく、どこか眠そうに会話をするのを見ると、元に戻ったというべきだろう。
「話しってあったのか?」
「ん……ある。でも、言えない」
「どうしてだ?」
「難しいから……」
要領を得ない会話に、俺は思わず何かを言いそうになるが、やめる。
先ほどのリーヤでなかった誰かに入れ替わったということは、考えすぎかもしれないが何か知られてはいけないことを言おうとしたからのはずだ。
「ま、やることはやったな」
「ん、すごい……これで少し前に進める」
「そうか」
どうして前に進めるのか?なんてことはわざわざ聞くこともない。
「ちょっと、モンスターのドロップ拾うの手伝いなさいよ」
「うるせ、俺は疲れたんだよ」
「相手の自滅じゃない!」
「そういう戦略を考えたのは俺だからな」
雷による感電でほとんど何もしていなかったというのにだ。
「まあ、どうせ少ししたら動かないといけないからいいか……」
とはいえ、このままこのエロティックタワーに留まるわけにはいかないこともわかっているので、俺はゆっくりと立ち上がろうとする。
「ん」
「お、助かる」
「いい。これからは何かあれば手伝う」
すると手を貸してくれたリーヤはそう言って笑った。
いつもの眠そうな表情ではなく可愛い笑顔を見て、思わずメインヒロインだなと思ったのは言うまでもなかった。
そして、キメラの素材を回収した俺たちはエロティックタワーから出るときだった。
「なん……まし……ま」(なんとかなりましたね、坊ちゃま)
「ああ、みんなのおかげだ」
「い……し……ぜん」(いえ、わたくしなんて全然)
「も……しな……ない……」(もっと修行しないといけないな)
「ふ……の……ふい……」(ふ、あたいの銃が火を吹いたぜ)
「おつ……」(おつかれ)
会話が倍速になったおかげで、イベントが終わったのだと自覚する。
今更ながらに思う、こんなタイミングで強敵と戦わせるとは、よほどハーレムルートに進んで欲しくないのだろうか?と……
いや、エロゲーなのに考えすぎなのか?
今はまあ、無事なことをちゃんと喜ぶべきだ。
体は言うことを聞かないが……
イベントはまだ続いているらしく、ぞろぞろと歩いていると、そこに
「あん……がく……る」(あんたたち、学園長が呼んでる)
急に声をかけてきたのは、いつも教卓に立っている女性だ。
キメラを倒したことによって、何か報酬でも貰えたりするのではないか?
俺はなんとなく期待した。
ここもイベントに沿って移動している。
倍速のせいで、あれだけ激しく戦った後だというのに、高速で歩かせるとは鬼畜なのか?
少しは休ませてくれ!
絶叫したいのをイベントのせいで、抑え込まれながらも俺たちは学園長室へと向かっていった。
中に入ると、そこではいつかと似たような状況にはなっているものの、違うところはこちら側が俺一人ではなくなっていることくらいだろう。
「よく……くれ……」(よくやってくれた)
「ぼ……はつ……ら」(坊ちゃまは強いですから)
「いつ……けら……ます」(いつも助けられております)
「いい……して……」(いい強さをしている)
「たよ……おと……」(頼りになる男だな)
「つ……」(強い)
「ほ……く」(ほお、すごく頼りにされてるじゃないか!)
「あた……すよ……ま」(当たり前ですよね、坊ちゃま)
「ああ」
なんとなく得意げに頷く俺。
何を言ってるのか、相変わらずわからないが、あまりいいことではないことだけは確かだ。
「それで、話しとは?」
「えろ……に……ひみ……のを……いる……」(エロティックタワーに隠された秘密があるのを知っているかい?)
「秘密?」
「そう……つ……をと……き……るひ……され……もの……」(そうだ。五つある試練を突破するとき、大いなる秘密が明かされるというものだ)
「聞いたことがないな」
「ま……をと……と……いで……な……ま……めの……ぱ……まだ」(まあ、試練を突破すること自体が用意ではないからな。だが、まずは一つ目の試練突破、お疲れ様だ)
「当然だ」
俺はさらに得意げにそう言葉にする。
だが、俺の考えていることは何かするのは絶対に嫌だということだ。
わからないとはいえ、なんとなく会話内容の想像はできる。
キメラを倒せたのだって、結局はゲームをやり込んだからこそ、一か八かで思いついたものだった。
あー……
面倒なことにだけはならないでくれ。
俺のそんな思いとは裏腹に、さらに会話は続く。
「ど……せよ……まえ……も……た……やる……だろ……」(どちらにせよ、すでにお前たちの物語は始まった。であればやるしかないだろう)
「そうだな」
俺はしっかりと頷く。
なんとなくだが、話がまとまったということだろう。
それくらいのことくらいはわかる。
そして、ようやく体は動くようになった。
「お、終わった」
俺は自由に動くようになった体をゆっくりと動かしながら、安堵する。
いつも思うが、倍速で動くのはいいが体にダメージが入らないようにしてほしいものだ。
どうして無理やり体を動かされた挙句、さらにはモンスターなどの目の前で放り出されるようにされたせいで、ピンチになったことも多かった。
よって、口から出る言葉も頼りないものだ。
「ほんと、どうなんだろうな、これから……」
「何を弱音を吐いてるのよ」
すぐにツッコんでくるのは、ナオだ。
なんだろうか、少しくらい弱気になってもいいとは思うのだが、違うのか?
「仕方ないだろ、こんな世界で面倒なことばかり起こってるんだぞ」
「今更何を言ってるのよ」
「今更なのかもしれないが、だからこそだ」
「もう、やるしかないんだから仕方ないでしょ」
「だから、嫌なんだろうが」
最初にキメラが出てきたのだ、ここからさらに面倒なモンスターが出てくることが考えられるとなると、誰でもやりたくないと思うだろう。
それに、キメラに関してはたまたまうまく倒せたからよかったものの、今度のモンスターはどうなるかわからない。
「なんで、こんな世界に連れてこられてしまったんだ」
「嘆いたところで変わらないでしょ」
「だな……帰るか」
「私も疲れたしそうする」
俺とナオはそんな会話をして学園長室から出ていくと、それぞれ寮へと戻るのだった。
その日俺は、当然だが疲れていたせいで部屋に戻ると食事をとるのも忘れて眠りについた。
ほんの少しの充実感を体に感じながら……
※
あなたとナオが出ていった後、他のメインヒロインたちは学園長室から出ていくわけでもなく、立っていた。
でもそれは当たり前で、ナオと違って本来であれば自由に動けないのだから、仕方ない。
だけど、学園長だけはそんな四人に言い聞かせるように声をかける。
「これから面白くなる。全員を巻き込んでな。だから、楽しみにしていろよ」
はははと学園長は笑うと同時に、豪快に酒を呷る。
見た目にはカッコいいが、結局最後には吐くのはいうまでもない。
だが、学園長の楽しそうな声はなかなか途切れることはなかった。




