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エロゲーは当倍速で  作者: 美海秋


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19/35

逃げられない戦い

 普通に何をしているのだろうかと思ったかもしれないが、これには理由があった。

 リーヤの動きが止まり、さらには戸惑ったような表情をする。


「ん……ん……で」(ん……うん……なんで)

「こうするしかなかったからな」

「のぞ……ない」(望んでない)

「知っている」


 倍速ながらも俺はそう言葉にする。

 完全なイベントのシーンだ。


 本来であれば、もっと先。

 ゲームの中盤以降に発生するこのイベントだったはずだ。


 メインヒロインのルートを進めば中盤に絶対に戦うことになるモンスターの一体。

 ドッペルゲンガー。


 その見た目は、メインヒロインたちの心を映すとされていて、ここではリーヤの兄に姿を変えたドッペルゲンガーに暴走したリーヤが向かっていくというものだ。


 タイミングも、モンスターも違うけどな。


「いた……い」(痛くない?)

「大丈夫だ」

「ごめ……」(ごめん)

「気にするな……」


▶盾を構える

 隣に立つ

 一緒に逃げる

 本を読む


 毎回のように出てくる本を読むは今回無視だ。

 なんといっても、このタイミングでのイベントで選ぶべき選択肢はわかっている。


 そもそも、何度もゲームのときにやってきた。


 盾を構える

 隣に立つ

▶一緒に逃げる

 本を読む


 もちろん逃走一択だ。

 勝てるかわからない相手に対して立ち向かうほど、俺は無謀な人間じゃないからだ。

 ということもあるが、どうしてだろうか?

 間違っているはずなのに、この選択肢が正解であると思えてしまった。


「に……」(逃げる?)

「ケガをしたからな」

「ごめ……」(ごめん)

「気にするなと言った。戦うなら万全でだ」

「ん」


 リーヤは素直に頷く。


「ぼ……ま」(坊ちゃま!)

「いそ……」(急げ!)

「はし……」(走れ!)

「こけ……よう……つ……い」(こけないよう気をつけてください)


 いつの間にか離れていたナオたちが俺たちを呼ぶ。


 大丈夫だ逃げられる。

 体は自然に動き出す。


 よし、これでイベントの最後まで……いける……はあ?


 そこで予期せぬ出来事が起こる。

 倍速によって動いていた足が地面の上を走る感覚がなくなったのだ。


 そう、俺とリーヤは突如現れた落とし穴に落ちることになってしまった。


「ふぁ!ゲームオーバーか?」


 ものすごい高さから落ちた衝撃だけは体に伝わったようで、気を失っていた俺は目を覚ますと開口一番に言った。


 だが、ゲームオーバーになったにしては、どうも体に柔らかい何かが触れている感じがする。


「ん……」


 その柔らかい何かに触れると声がする。

 聞き慣れたと言っていいのかはわからないが、聞いたことがあるものだ。


「リーヤか…」

「ん……変態?」

「って、すまない」


 リーヤもどうやら目を覚ましていたようで、体に触れるとそんな冗談を言う。

 まあ、俺自身も触れた位置が悪かったのだろうが……


 どこに触れたのかは、正直わからない。

 なんといっても、周りが暗いせいで何も見えないからだ。


 エロティックタワー内には確かにトラップとされるものがあるにはあったが、どれもエロゲー特有のトラップだった。

 よって、穴に落ちただけでは終わらないはずだと周りを警戒する。


「どこ?」

「わならないな。一応落ちたってことだけはわかったけどな」

「そう」


 そんな会話をしているうちに暗闇に目が慣れていく。


 周りが見えてきたおかげで、状況が少しずつわかってきた。

 このトラップは、暗闇で二人きりに!ドキドキ仲良く脱出をしよう!とかいうものだ。


 トラップの名前については、もう触れないくらいでいいだろう。


「どうする?」

「どうするって、出るしかないだろ……」


 そもそも、こんなイベントがこのタイミングであったか?

 多くの疑問が頭に浮かぶが、やることはここから脱出することだけだ。


 問題は暗いせいで俺が作りあげた本が読めないことだ。

 完全には攻略の内容を覚えていないので、なんとなくでこの場所から脱出しないといけない。


「何かある」

「これは……なるほどな」


 何かあると言われて、その場を見ると何かが落ちていた。

 落ちているのは紙切れだ。

 書かれている内容というのは、リーヤについてのこと……


 彼女がどうして学園に来たのか?

 ふ、簡単な問題だ。


「何、これ?」

「問題じゃないのか?」

「そう……」

「答えるか?」

「いい、あなたは知ってると思う」

「ああ、そうだな……ん?」

「ん?」


 俺はすぐにその言葉に反応した。

 それほどには驚く内容だったからだ。


 どうして俺がリーヤが学園に来た内容を知っていると思ったのか?

 そこで考えることというのは、一つだけだった。


「リーヤは……」

「出れたら、答えがわかるかも」


 リーヤは意味深にそんなことを言うとそっぽを向く。


 解けば意味深な言葉がなんだったのかを教えてくれるということらしい。

 だったら、さっさと正解するしかない。


 リーヤが学園へと入った理由は一つ。


「兄がこの学園で廃人になったからだ」

「セイカイ!ツギヘ」


 急に機械音声のような声でそんなことがこの場に響くと、通路と階段が現れる。


 次の問題ってことだな。


 俺が進むとその後ろを同じようについてくるリーヤ。

 本来であれば、今の主人公が知るはずもないリーヤのゲーム内で語られていた秘密を俺は全て正解していった。


 リーヤの秘密。

 それは最初のことから優しい兄が大好きだったが、この学園に兄が入学したまではよかった。

 だけど、このエロティックタワーにいるモンスターによって人生を狂わされてしまったのだ。


 そこからリーヤが考えていたことは、全てのモンスターを倒すというものだ。


 だから、恋人になるタイミングというのもモンスターを全て倒す……まあ、無理だが……

 トラウマというものを克服しない限りは恋人になってくれないのだ。


 そんなトラウマの最後に戦うことになるのがそんな兄の姿をしたモンスターだ。


 トラウマを刺激されたリーヤは先ほどの暴走したようになり、それを主人公が止めるというものだ。

 会話内容は同じで、あそこからは強力してトラウマのモンスターを倒すのがゲームのものだ。


 よって、全ての問題についてもその内容になっている。


「全問正解したぞ」

「ん……さすが……後は、一つだけ」

「は?」


 俺が不思議に思ったタイミングだった。


「ゴオオオ」


 キメラの叫び声が聞こえる。

 そしてリーヤが言う。


「ぜ……」(絶望)

「何を……」

「は……」(始まり)


 俺はそれを見て、盾を構える。

 戦うしかないことを知って……

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