イベント発生
「そ……」(そう……)
「すまないな」
「いい……」(いい……)
選択肢の会話が終わる。
「ん!」
「リーヤ!」
俺は全力で走り去っていったリーヤの名前を呼ぶ。
どうしてこんなことになったのか、正直なところわかっていない。
「泣いていたよな……」
ゲームのときであれば、リーヤと一緒にお昼寝をするという癒しのあるシーンだが、断った場合。
なんといえばいいのか、走り去ってしまった。
「どうなってんだ?あれは、ゲームのキャラじゃないのか?いや……」
俺は頭をかくと考える。
確かにこれはゲーム世界ではある。
でも、よく考えれば、すでにこのゲームというのは、俺が知っている物語とはかけ離れた結果となっている。
「考えられることは、ハーレムルートってやつになってるから、行動が変わったってことなのか?確かに、俺だっていろんな男に女性が声をかけている状態なら泣くな……」
エロゲーだから気にしていなかったが、現実であれば確かにと思えてしまう内容だったことに気付いてなんとも言えなくなる。
「でも、どうすんだよ、これ……」
気づけば周りに人の気配というものがなくなった。
先ほどの選択肢が起きたことで、ゲームとしては本来であれば時間というものが何かをしない限りは過ぎることはないのだが、先ほどの会話というのが一つの時間を進めるものだったようだ。
「イベントが終わったってことか」
こうなってくると、この後に何かをできるわけではなく、寮へと戻るくらいしかやることがなくなる。
「いや、アイテムの回収をしておくか、昨日はナオたちを探し回っていたせいで回収してなかったからな」
ここまでは、俺のことをナオがまだ勘違いしていたから下手な行動をしにくかったが、ばらした以上はやるべきことはやっておく必要がある。
現在の学園内でとれるアイテムというのは多くない。
まあ、これもエロティックタワーに入ってお金を稼いで買えという意味なのだろうが、最初のように何かを確実に手に入るというわけではない。
「ポイントを回るか」
アイテムが落ちている可能性があるというだけの場所を回っておく。
これでなんとか少しでもアイテムを回収できないか……
「ま、ないよな」
探してみたはいいもののアイテムは落ちていない。
元々ゲームの時も確率で手に入るかどうかというものだった。
よって、こんなことが起こるというのも予想通りではあった。
「戻るか……」
誰もいないはずの学園内。
俺は本来であれば、のんびりと寮へと戻るはずだった。
「なんだ?」
寮へと入ろうとしたが、どうしてなのか入ることが寮へと続くはずの唯一の扉が閉じている。
「なんで入れないんだ?」
寮へ戻るだけでよかったはずだったのに、それができないということは何かが起きているということだ。
「はあ……ゲームと一緒じゃないことが起こりすぎなんだよ」
これまでとのルートは違うため、こんなことが仕方ない。
「どこにいくのが正解だ?」
こうなってしまった以上は何かをしない限りは、時間が進むことがないことはわかっている。
イベントがどこで起こるのか、寮へ入れなかったことを考えると、一つ。
気になるところはやっぱりエロティックタワーか?
考えられる一番高いであろう選択肢だ。
「いや、そういえば……」
俺は一つだけ思い出した。
ゲームのときにもこんなことがあったはずだ。
確か、ゲームのときには各メインヒロインたちと一緒になって戦うことになったはずだ。
物語としては完全に終盤。
倒すことで二人の愛を確かめ合って、そのまま結ばれるというものだったはずだ。
「俺の知ってる限りじゃ、誰の好感度も上がっていないような状況で起こるような出来事ではないよな」
なんでとか、悩んでいてもこの世界は動くことはない。
「行動するのみかよ……」
俺はため息をつきながらも、エロティックタワーに向けて歩く。
だけど、そこで思う。
何もしなければ、時間も環境も何も動くことはない。
これはゲームの世界だからだ。
実際に現実であれば、何もしなくても時間も環境も周りが動けば勝手に変わる。
このゲームにどこか言われているようだ。
何があっても世界を動かすのは俺だと、行動しないと変わることはないのだと……
「ああ……くそ……エロゲーにそんな深い意味はないっていうのにな……」
いざゲームの世界に入ることになってしまえば、感じ方が違うなんてことになるとは思ってもみなかった。
「何をしんみりとしているんだ俺は……」
さっさと行こう。
俺はさっさとエロティックタワーに向かった。
「今更だけど、おかしいよな」
エロティックタワーの前についた俺は思わずそう言葉にする。
今更と口にしたのは、エロティックタワーのことだ。
エロティックタワー。
名前の通り、このゲームにおけるメインとされる場所であり、この場所でモンスターと戦ったりすることで愛が芽生えてくるというものだ。
そんなエロティックタワーの入口は、何か見えない壁のようなものがある。
これが選別の壁と呼ばれ、エロティックタワーに入れる存在。
体験しているか、いないかを感知してくれるものになっている。
どういうシステムで作られているのか、というようなことは考えてはいけない。
ここに関しては、ゲームの中に存在している、俺たちがわからない何かによってそうなっていると考えていればいい。
このエロティックタワーには他にも変わったところがある。
それは、エロティックタワー内についてだ。
理屈はわかることはないが、俺たちがどれほどの攻撃をしても、モンスターがどれだけの攻撃をしても壊れることがない。
確かに、ゲームであれば普通ではと思うかもしれないが、そもそもゲームの時は壁に向かっていき攻撃するなどということができなかった。
それが、ゲーム世界へとやってきてできるようになった。
というのに、壁を殴ったところで壊れるようなことは絶対になかった。
まあ、そういうものなんかじゃないのか?
俺もそう思っていたが、そのせいでよくないことというのはすでに起こっていた。
昨日のエロティックタワー内を探索していたときもそうだった。
階を上がったときにそこにモンスターが溜まっていたことがあったのだ。
まるで待ち伏せだった。
で、今回もそれが起こる可能性が高いと思っている。
「どっちにしても、入ってから後悔をするか」
俺はエロティックタワーへと入っていった。
「ぼ……こら……か」(坊ちゃま、来られましたか)
「ナオ、どういう状況なんだ?」
「わか……ん」(わかりません)
案の定というべきか、始まるのは倍速の言葉。
言葉が倍速になっているだけで、何かイベントが発生したのだと理解する。
ここにいるのは、昨日と同じ面子だ。
装備を変更しているのは、俺とリーヤを含めてナオの三人。
他の三人に関しては見たままだ。
チカだけは銃になるので、弾丸は補充していることを考えると実質二人なのかもしれないが……
「何があったのか、確認しに行こう」
「はい」「や!」「ええ」「ん」「おう」
五人の返事を聞きながら、俺たちはエロティックタワーを進むことになった。




