頑張った先にあったのは
三階からモンスターの種類が少し変わる。
これまで特に強さがないため、全く話題にもなっていなかったモンスターではあるが、ここから少しエロが増す。
一階ではモンスターとの戦闘に慣れ、二階ではそこから複数のモンスターとの戦闘に慣れるというコンセプトで作られていたりするため、二階まではチュートリアル感が否めなく。
モンスターもウサギの見た目とスライムの見た目をしたやつらしかでなかった。
でも、ここからはさらにトレントとネーリというモンスターが出てくる。
トレントは木の触手を使うのでわかりやすいが、ネーリというのは魔法を使うモンスターで攻撃の威力がある魔法は使ってこないものの、状態異常系の魔法を使ってくるという厄介な存在だ。
特に眠りからのトレントやスライムで縛る攻撃は、かなりいろいろな場所に効くからだ。
「無駄だ!おら!」
そして、現在俺は一人で戦っている。
どうしてなのか?
理由は単純だ。
全員眠っているためだ。
俺はわかっていた、ネーリの魔法によって眠ってしまったからだ。
二階でそれなりの特訓……攻撃を当てられるようにはポンコツヒロインたち全員がなった。
そこまではよかった。
二階で戦闘をほとんどしなかったナオが、新しいモンスターが出てきたと喜び、向かって行ったのが、ほんの少し前。
そして、すぐにネーリの魔法によって眠らされた。
言ってはいけないかもだが、即落ちというやつだ。
ナオに引っ張られて徐々に頑張れていた他のメインヒロインたちはリーダーと呼べる存在がいなくなり、あたふたとしだし、寝ているナオに足をとられたりしているうちに全員が眠りについた。
「もう、この世界は最悪だ!」
俺は嘆きながらも、持っていた盾を振る。
ネーリが俺に向かって魔法を放ってくるが、効かない。
元々ゲームのときから、盾装備というのは攻撃に関しては無能なかわりにそれ以外が優秀だった。
特にレベルが三に上がったときに覚えるスキル。
レジストボディは、一定時間の間だけは状態異常にほとんどかかることがない優れものだ。
「男にツタを伸ばしておもろいかよ、この変態トレントが!」
だけど、状態異常にならないからといって、俺の攻撃がモンスターに大きなダメージを与えるわけではない。
防いだりしながら、攻撃を繰り返すものの倒せる気がしない。
「わかってたけど、キツすぎる。そして、寝てんのにどんだけ魔法の重ねがけすんだよ!」
倒せない以上は、時間を稼いでメインヒロインたちが自然に起きるまで耐えないといけないのだが、ネーリは起こさないといわんばかりに何度も魔法をかけている。
そんなことをしても起きるタイミングというのは、確率だ。
起きるタイミングは……
起きた瞬間に魔法をかけられた場合。
再度寝てしまう。
よって俺がモンスターを倒さない限り、寝ているメインヒロインたちが起きる気配がない。
「くそ、あれを出すしかないか」
俺は前に手に入れていた、マッチをポケットから取り出す。
先ほど使ったロウソクと同じ光アイテムの一つであるが、ロウソクのようにそれなりの時間休息ができるわけではないものの、マッチなのでひと箱に数は入っている。
これによって、回数を休憩することができるものだ。
タイミングを見ながらこれを使って、うまく休息にもっていければなんとかなるはずだと考えた。
実際にゲームでも、バグなのかはわからないが、光アイテムを戦闘中に使うと謎に回復する。
これは、休息している判定になっているのでは?と、ゲームのときには言われていた。
「こんなときに使うのは嫌だが、仕方ない」
このままでは、時間だけが過ぎていくことをわかっていた。
トレントの攻撃を防ぐというよりも、少し押し返すようにして弾き、少しの猶予ができたところでマッチを一本出して火をつける。
「よし、これをあいつらのところへ、な!」
火をつけたマッチを寝ているメインヒロインたちの近くに落とすため、近づこうとしたときだった。
トレントがもう一体触手を伸ばしたのが見えた。
俺はすぐにマッチを落とすのを諦め、攻撃を盾で防御した。
予想外のタイミングだったため、完璧には盾で攻撃を防げなかった。
ドンという衝撃とともに、少し後ろに後ずさる。
持っていた火をつけたマッチも、衝撃のせいで手から離れていくと、トレントの触手へと吸い込まれるようにしてあたる。
「ボッ」
そして、ものすごい勢いで火がついた。
「はあ?」
俺は思わず間抜けな声をだすが仕方なかった。
トレントが勢いよく燃えているからだ。
「キシャア」などという、叫び声とともに、かなりのダメージが入っているのか、悶え苦しんでいる。
「まじかよ、こんなところでマッチは役に立つのかよ!」
新しい発見に、思わず俺は興奮を抑えきれない。
本来は光アイテムは基本的に休息をしたり、いざとなったときの回復アイテムみたいな感じだったよな。
こんなところで新しいことに気がつくとかすげえな。
実際ゲームでは、光アイテムというのを使用する際、使う選択肢にモンスターの方へ投げるというものがなかったので、わからなくて当然だったが、こうして新しい何かを見つけるというのは楽しい。
さらにいえば、攻撃のダメージが対してない盾を使っているため、こういうときに攻撃できる何かが一つでもあると今の戦闘が楽になるのは願ったり叶ったりだ。
「おら!燃えろ燃えろ!」
俺はマッチに火をつけると、トレントに向けて投げる。
トレントは、その名前の通りピンク色の木のモンスターなので、マッチでよく燃えた。
「本当なら、斬るか魔法で燃やすのが弱点だけどな」
マッチがこれほど使えるとは思っていなかったとともに、メインヒロインよりもアイテムのほうが使えてしまうという事実に俺は、悲しくなるのだった。
トレントを燃やしているうちに俺は、残っていたネーリへと盾を構える。
このネーリは、眠らせる魔法を扱ってくる面倒なやつではあるものの、弱点は魔法以外の全てとなっており、俺の盾ですらもあまり多くない回数の攻撃で倒せるはずだ。
「ようやく、戦えるな」
こうして俺は、無駄に多いパーティーメンバーに頼ることなくモンスターを殲滅することができたのだった。
「終わった……」
二度目の大きな疲れに思わず壁に向かって歩く。
のんきなもので、メインヒロインたちは寝ている。
「結局俺一人でしかやれてないじゃねえかよ。というか、俺と同じゲームをやったことがあるんじゃないのかよ、ナオは……」
それにしてはポンコツである。
とはいえ、今は下手に起きて騒がれるのも面倒だ。
今は少しでも休息するか……
俺は壁にもたれて休もうと、壁に寄り掛かったときだった。
壁にもたれたと同時に、違和感を感じる。
まるで、壁が倒れるような感覚だ。
「まじか!」
既にもたれようとしていた俺は、それに逆らうことができない。
そのまま壁に吸い込まれるように俺は、倒れた。
「いてえ……これって……隠し部屋ってやつか」
壁の先にあったのは、ゲームではよくある隠し部屋というものだ。
このエロティックタワーでも、同じようにあることは知っていたが、かなりの低確率で発生するもので、中にあるのもネックレスとコインだけだ。
ネックレスは好感度をかなり上げてくれるいいアイテムではあるが、コインというのはよくあるゲーム内であるトロフィーコンプに必要なアイテムなだけで、実用性などない。
「あー、はいはい」
ゲームのときに知っていたからこそ、今更何かを悩むことはない。
俺はそう考えて、中央にポツンと置かれていた宝箱を開けると、ゲームのときに見たことがあるアイテムを回収すると、その場に座り込んだ。
これからのことを考えないといけないことはわかっているものの、メインヒロインたちが起きないことにはそれも難しいだろう。
あいつらには悪いけど、まだモンスターは現れていないし、確かこういう隠し部屋はモンスターが入ってこない仕様だったはずだったよな。
ここで今は休むか……
そうして、数分休んだときだった。
隠し部屋が動きだしたのは……
「あ?なんだ?」
わけがわからず俺は身構えていると、隠し部屋の奥にあった壁が急に外れる。
「何が起こっているんだ?」
本来であれば、隠し部屋などアイテムを回収さえしれば、出ていく人が大半だ。
他にも何かないかと調べたりすることはあっても、モンスターと戦闘をしていないのにかかわらず、その場にとどまるというのは、普通はしないことだ。
でも、普通ではないことをすれば、何かが起こるというのがこのゲームだということだろう。
外れた壁の先にあったものに俺は驚いた。
「なんだよ、これ……」
そこにあったのは、人形だった。
わけがわからないながらも俺は手に取るのだった。




