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エロゲーは当倍速で  作者: 美海秋


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11/14

ポンコツとの特訓はきついだけ

 二階の雰囲気は、一階と多くは変わらない。

 よくある、階層によって景色が全く違うなどということはなかった。


 ま、そんなところに金をつぎ込めるほどのゲームではないからな。


 階層の見た目はほとんど同じ。違うところといえば、一階よりモンスターの数が多くなったりする。


「数が出てきたわね」

「ああ、最初みたいに三体しか出てこないこともなくなったな」

「ええ、ちょっと厄介ね」


 結局先頭を行くのは俺とナオなため、こうして二人で会話することが多い。


 他の味方四人が先頭に関してあまり使えないこともあって、余計に俺たちの負担が大きい。


 最初はうまくいっていたからこそ忘れていた。

 戦闘するときにこいつらが使えなさすぎるという事実を……


 モンスターの数が多くなっているせいで、ポンコツ具合が見えてきたというべきか……


 ゲームのときみたいに、何をやっているのだろうかと思うような行動をし始めた。

 多くは攻撃を外しまくるのと、バフをなぜかかけまくるのだ。

 そして、一人はというともったいないと弾を撃たない。


 攻撃を外すのは仕方ないとして、他のことに関してはあまり言いたくないほど酷い。


「ねえ?」

「何だよ、小さな声で話しかけてきて」

「あんたは盾をもっているから、少しはできてるみたいだけど、他の子たちをどう思う?」

「使えないってレベルじゃないな。ポンコツすぎないか?」

「ポンコツで済ませていい感じじゃないけどね」


 ナオは呆れたように言うが、気持ちはよくわかる。


 まあヒロイン同士が一緒に戦うことがないため、こいつらの戦闘において、どれだけ使えないのかということをわかっていない。


 眠そうにしながらも、槍を振ってバフをかけまくるリーヤと、カナは剣を振り、ヤンは魔法を放つがどちらも外していて、チカに関してはお金がもったいないからと弾を撃たない。

 実質戦っているのは、俺とナオだけだ。


 ナオは俺と同じように中身が別なため、モンスターを倒すときも効率的に戦っている。


 俺に関しては、盾なので攻撃に関しては全く役には立っていないものの、敵からの攻撃を防ぐことだけは完璧にこなしているため、全員ダメージをもらっていない。

 そう、服ははだけていない。


 エロゲーなのにエロ要素がないのはどうかと思ってしまうが、下手にエロ要素が増えてしまってもここにナオがいる限り面倒なことがわかっているため、余計なことはできない。


「今はモンスターを倒せているから問題はないけどな」

「いつまでも、私に負担を負わせるつもりなのよ」

「そう思うなら、頑張って他のメンバーたちも戦わせないとな」

「だったら、私に協力しなさい」

「協力って?」

「決まってるでしょ、今から特訓よ」


 ナオが急に言い出したことに驚くとともに、嫌な予感だけがする。


「あんたら、もっと頑張りなさい」


 俺は頑張ってるからな!


 そうやって叫びたいのをなんとか我慢した自分を褒めてやりたい。


 盾を構えて、俺はモンスターからの攻撃をなんとか防いでいる。

 逆にいえばそれくらいしかしていない。


 攻撃は何もしていない……というよりもやる暇もない。


「うおおおおおおお!」


 なんとしても攻撃を他のヒロインたちへと向けないためにも必死なのだ。


「カバー!」

「ひゃん」

「こ、攻撃を!」

「ああ、この筋肉で!外れた!」


 遅すぎるんだよ。

 どうして普通の剣で大剣のように勢いよく振りかぶって下ろすんだ。

 そのせいで振り上げたときには近づいてきていたモンスターが逃げてしまっているだろ!

 後、俺が防いでやってるんだから、近づいたときに驚くな!


 次!


「カバー!」

「うひょおおお」

「ま、魔法を!」

「任せなさい。煉獄の炎を見せてあげます。いきます、ファイアーボール。外れました」


 今度は前置きが長いんだよ。

 どうしてわざわざ魔法でファイアーボールを放つだけなのに、煉獄の炎とか前置きを入れるんだ?

 後、悲鳴の声がいろいろおかしいんだよ。


 ああ、さらに次!


「カバー!」

「おおー……」

「攻撃を!」

「うーん、眠いけど……わかった。えい!あ、手が滑った」

「あぶね!」


 眠そうな言葉とともにリーヤが振るった槍が手をすっぽ抜けて飛んでいった。


 俺はなんとか避けたものの、モンスターたちというのは飛んでいった槍に貫かれた。

 一応これまでの二人とは違って、攻撃がモンスターに当たり倒せているところだけはよかったというべきだが、少しでも俺の体に当たっていたら、体が貫かれていたはずだ。


 よかったと素直には喜べないくらいには危ないことではあるが、次だ。


「カバー!」

「きゃああああ」

「攻撃を!」

「わかってるっての、バン!」

「いや、口で言うんじゃなくて撃てよ」

「しょうがねえな……バシュ」


 撃ちたくないのをヒシヒシと感じながらも、チカは一発だけ弾丸を撃った結果モンスターにちゃんと当たる。


 さすがはゲームの中でもお金さえあれば一番使えるヒロインだ。

 本来ゲームであれば、最初に伝説の武器をゲットし売りさばくことで大量の弾丸を買うことで戦闘を有利に運ぶことが可能だったりする。


 まあ最初はそんなこともできないので、なんとかして小金を稼いでは弾丸を買ってを繰り返すことが多い。


 なんにせよ、全員が面倒くさいヒロインたちで間違いはない。


 そこからは、ナオのスパルタ指導によって俺たちは何度も繰り返し戦闘を行った。


「はあ、はあ……」

「お疲れ」

「あ、ああ……」


 労いの言葉をかけられた俺はなんとか呼吸を整えながら、返事をしたものの、さすがに疲れた。

 俺はモンスターがいないのを確認して、少しその場に腰をおろした。


 ポンコツヒロインたちをスパルタ修行をするナオに付き合わされて、何度もモンスターと戦った。

 エロゲーのご都合主義というべきなのか、エロティックタワーに入ったら他の人たちもいるはずなのに、出くわすことはないことで、少しでもモンスターたちを他の生徒たちに押し付けることもできない。


 よって、モンスターから逃げることもなく戦うことを繰り返しまくった。

 気づけば、頭の中にレベルアップのファンファーレ。

 エロゲーなので、「レベルああん……ぷ」などという、独特な声がゲームのときはスピーカーから聞こえてくるのでよかったが、頭の中に流れてくるという今の状況については、さすがにこのゲームを作ったやつに怒りを感じた。


 さすがにあれだけの戦闘を繰り返したら、レベルアップしたな。

 人数が多いせいなのかいつもよりはレベルアップに時間がかかったものの、なんとかなった。


 だけど、あれだけこき使われてようやくレベルが一つ上がっただけなんだよな。


「どう?」

「使えるスキルを覚えたし、これでさらに体を鍛えることができる」

「はい。わたくしも」

「バフ、いける」

「お金を使わない技か?」


 四人は、それぞれ新しいスキルを覚えたらしい。


 何かはステータスを確認できない以上は、本人たちにしかわからない……

 いや、俺が隠し持っているあの本であれば、過去に書いているかもしれないが、今はナオが近くにいる以上はさすがに開いて読むことはできない。


 よって、なんとかして思い出そうとするが、自分自身は盾ばかり使っていたせいで、さすがに覚えているはずもない。

 少し離れて開くか?


 そんなことを考えたところで、ナオが元気よく言う。


「はい、休憩はそろそろ終わりね」


 さすがに休憩が短すぎないかとは思うものの、休憩というもの自体が短いのはナオのせいではないため、何も言えない。


 そう、エロティックタワーの中でこれだけの人数で行動をしていれば、モンスターというものに出くわす確率が本来よりも上がる。

 立ち止まっていたとしてもだ。


 そんなときに使えるのが、ロウソクなどのアイテムだ。


 ゲームのときには、光と書いてコウと攻略サイトでも重要なアイテムは、休息アイテムだ。

 その光は二人を照らし、二人の間に邪魔が入ることはない……などいうアイテム説明が書かれているもので、アイテムを使い光が灯っている間は、モンスターが寄ってこないという優れたものだ。


 本当は、好感度も同時に上がるものだったけどな。

 後は会話イベントも……


 ゲームのときは、二人で一つの光に身を寄せ合うという状況になるため、距離は自然と近くなっていき、秘密の話をすることで好感度が上がったりする。

 それなりに重要なアイテムだったりもする。


 光アイテムというのは、ものによって効果時間が違い。

 当たり前だが、長く照らすことができるものほど価値が高く、好感度の上昇もいい。


 今回はロウソクのため、時間が結構短く。

 俺も疲労困憊(ひろうこんぱい)なため、話すこともできていない。


「なんでエロゲーなのに、こんなに頑張らないといけないんだよ」


 誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いたその言葉を、さらにもう一度すぐに言わないといけなくなるとはこのとき思っていなかった。


 ロウソクが消える前に俺たちは立ち上がる。


「行くわよ」

「ああ」

「筋肉!」

「うんん」

「ん」

「金……」


 進むときの掛け声だけで、これだけ不安を覚えるというのも珍しい。


 俺はなんとか感情を押し殺しながらも、ナオの特訓にさらに付き合った。


 なんとか必死に盾を構えて戦闘を経験し、レベルがさらに上がったところで俺たちは三階へと続く階段を見つけたのだった。

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