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21−4

次の日、周辺の街なども見回り、最後に森へと寄った時には昼を過ぎていた。

ふと視線を上げると、レイが少し離れた場所で森の奥を見つめている。険しい表情が木漏れ日に照らされ、いつになく鋭い印象を受ける。


「結界の異常って……自然に起こるものなの?」


恐る恐る問いかけると、レイは表情を崩さず、低い声で答えた。


「あり得ない。それこそ、お前に何かあればそれも考えられるが……そうでない限り、誰かが意図的に仕掛けたと考えるべきだ」


その言葉に、思わず唾を飲み込む。

意図的……誰が、なんのために?そんな疑問が胸の中を渦巻く。


「兄さんの推測は鋭いね」


けれど俺たちが会話を続ける前に軽やかな声が割り込んできた。

振り返ると、アランが微笑みながらこちらに歩み寄ってくる。

その飄々とした態度は、場違いとも言えるほど無防備に見えるが、その目だけは冷静な光を帯びていた。


「だが、犯人探しは後にしたらどうだい? まずは帰って様々な事をまとめるべきだろう?」


彼の言葉にレイは短く息を吐いたが、それ以上の反論はしなかった。

その場の空気が少しだけ緩むような気がしたが、俺はどこか落ち着かない。

レイの慎重な態度とアランの飄々とした振る舞い――二人の対比が、どうにも引っかかる。


その後俺たちは馬に乗り、森を後にした。

森を抜けると、一面の草原が広がる。暫く馬を走らせていると柔らかい夕日が地平線に沈みかけ、空が赤と紫に染まっている。

森の中の重たい空気が嘘のように、外の景色は広々としていた。

レイは無言のまま先頭を行く。その背中は、森の中で見たとき以上に険しく、どんな考えが巡っているのか、俺には分からない。

ふと、横に馬の蹄の音が近づいた。

振り向くと、アランがいつの間にか俺の隣に並んでいた。


「君がここに来なければ、兄さんは一人で解決できたかもしれないね」


突然の言葉に、俺は驚いて眉をひそめる。


「……何が言いたいんだ?」


こいつの言葉は核心を交わしたようなものが多い気がする。

少しの苛立ちを覚えながら俺は聞き返す。

アランは柔らかい笑みを浮かべたまま、気にした様子もなく続けた。


「いや、ただ思っただけさ。兄さんはいつだって自分の正しさを信じて動く。でも、それが君を苦しめていないか、少し心配でね」


その言葉に、胸がざわめいた。


「そんなことない……俺はレイが……」


反論しようとしたけれど、アランの口調があまりに軽く、余計に言葉を封じられる。


「そうか。ならいいんだよ。ただ、君が兄さんにとってどれほど特別な存在か、よく考えてみるといい」


そう言いながら、アランは馬の手綱を引いて少し速度を落とし、俺から離れていった。

俺は何も言えずに馬を進める。

彼の言葉に怒りを覚えながらも、頭の片隅にほんの少しだけ、拭いきれない不安が残った。

レイとの関係は、俺にとって揺るぎないものだ。

そう自分に言い聞かせる。

しかし、草原の風が頬を撫でても、胸の中の重たさは消えなかった。


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