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第6話

第6話


どうしよう、呑気に朝飯なんか食っている場合じゃなかった。


レインがこの世界に来たことで受ける影響は真っ先に俺の家かもしくは俺自身じゃないかと思っていたが、まさか全然違う場所だったとは。


いや、一応は同じ県だし同じ市、なんなら近所ではあるが......



「なぁ、これってやっぱりレインの影響なのか?」



テレビに張り付いて映像に映し出されたポーションとやらを凝視しているレインに向かって問うと、レインはその画面から目を離さずに答える。



「そうね......あたしが魔法を使った影響かしら? でもあたしが使ったのは初級魔法だがら、この世界のマナはそんなに消費はしないし、あまり影響はないと思うのだけれど......レン、行ってみましょう!」



あの野菜切り魔法は初級魔法らしい。


下手な包丁よりも切れ味が良さそうだったあの魔法は普通に怖いので今後レインの機嫌を損ねるのはやめておこう。





簡単な身支度を済ませたあと、俺とレインはニュースで映っていた場所に向かうことにした。


レインの服装はさすがにパーカーだけだと捕まってしまうので、長い間履いていなかった俺のカーゴパンツを履かせた。


せっかくの美少女なのだから女の子らしい格好をさせてあげたいが、生憎俺に女装趣味はないので仕方がない。


カーゴパンツとパーカーを着、スニーカーを履いたレインは王道ストリートコーデで女性にしては高い身長も相まってなかなか様になっている。


そんなレインの隣を歩く俺の格好は上下黒のジャージのセットアップだ。


紺色のラインが入っているだけでそれ以外は至って普通のジャージである。


結局のところジャージが1番過ごしやすいのだ。




件の場所は徒歩でも行ける距離だったので散歩も兼ねてレインと歩いて向かった。


途中で目にするもの全てに興味津々なレインは高いビルに目を輝かせ、コンビニを見つける度に中に入ろうとし、野良猫には威嚇をしていた。


......やはり猫同士何か通づる物があるのだろうか。


俺が野良猫を愛でていると、レインが嫉妬の視線で見つめてくるため、顎の下を撫でてやるとゴロゴロと鳴き出すので思わず猫かとツッコんでしまう。




そんなこんなで目的の場所に到着すると



「な、なんじゃこりゃ......」



ポーションがあるであろう場所に人だかりが出来ていた。


いくら休日の朝だからといって集まりすぎでは無いだろうか。


というか......



「どうすんだこれ、こんなの回収しようがなくないか?」



人が密集しすぎていてこっそり盗っていこうものならすぐに囲まれ捕まりそうだ。


バグ特有の変な挙動が面白いのか、次々と写真を撮っている人々の姿がある。


その中心にあるポーションを見つけるとレインは



「やっぱり、本当にあたしの世界にあったものだわ」



と疑いが確信に変わったように頷きながら呟いた。


何かしらの企画かドッキリじゃないかと思っていた俺の淡い期待もそこで打ち砕かれ、あれをどうやって回収しようかとレインと身をかがめ合い相談する。



「レイン、魔法であれをこっそり盗ることはできないのか? マジックハンド的なやつで」



「そんな便利な魔法はないわね......せいぜいあの密集の中心に催眠魔法を放つか光の魔法で全員の視界を潰すかしかできないわよ」



「そうか、ならそのどっちかでいいから魔法を使ってあれを回収してこようぜ」



「いいけど、催眠魔法は上級魔法だから魔法に体制のないこの世界の住人には後遺症が残ってしまうかもしれないわ。光の魔法も中級魔法だから下手したら失明させてしまうわね」



「よし、その2つは絶対に使うな」



俺のせいでこんな状況になっているのにさらに一般の方々に迷惑をかけることなんて出来るはずがない。


後遺症とか失明とか魔法物騒すぎるだろ。


もっとマシな魔法は無いのかと俺が考え込んでいると、レインが閃いたと頭に! マークを出しながら言う。


...なんで頭の上に! マークが見えるんだ?



「レン、あんたが魔法を使うのよ。あんたの魔力量ならあたしの魔法『フラッシュ』の下位互換である『ロウ・フラッシュ』くらいなら使えるはずよ。この世界の住人であるレンが魔法を使えばこの世界の人にも失明や後遺症の危険性もないはず」



そういうとレインは右手で俺の手を握り左手を俺の額に当て、



「『ギヴ・ロウ・フラッシュ』」



と唱えた。


途端、俺の体が淡く光だし、『鑑定』を使われた時のような体の芯が熱くなる感覚を覚える。


光が収まると、何事も無かったかのように体の調子が元に戻る。



「これでレンは『ロウ・フラッシュ』が使えるようになったはずよ。あんたの魔力量的に一回使ったら倒れると思うから1日1回しか使えないわ」



「おぉ、なんかわからないけどすげえ」



確かに今の俺になら魔法が使える、そんな感覚がする。


これが俗に言うレベルアップという感覚なのだろうか。


まるで最初から扱えたかのようにその魔法の使い方が分かる。



「いい? 作戦はこうよ......」



レインと俺はこそこそと作戦を立て、タイミングを見計らってさっそく実行することにした。


作戦内容はこうだ。


まず俺とレインができる限りポーションに近づき、俺が全力で『ロウ・フラッシュ』を唱える。


周りの人の目を一瞬潰しその隙にレインが俺とポーションを抱えて全力ダッシュで逃げるという寸法だ。


レインは自身に身体強化の魔法をかけ、風よりも早く走ることができるそうだ。


途中で振り落とされると大変な目に合いそうなのでできる限りしがみついておこう。



写真待ちの列に並びながらそんなことを考えていると遂に俺たちの番がやってくる。


俺とレインは目配せをし、互いに準備が整ったと感じたところで作戦開始!


俺は人の前に走り出し、手のひらをできるだけ人の多い場所へ向けて言い放つ。



「『ロウ・フラッシュ』!」



瞬間、俺の掌からまるでトンネルから外へ出た瞬間のような眩い光が、まだ朝だというのに目が眩むほど輝き放出される。


その眩しさに俺も思わず目を瞑り、途端にすごい息苦しを覚える。


なんだこれ、むちゃくちゃ苦しい......大嫌いな持久走を走り終わったあとぐらい苦しい......


思わず俺はその場に倒れ込みながら『ロウ・フラッシュ』を食らったであろう人達の困惑する声が少しづつ遠くなるのを感じ、意識が遠のいているという自覚をする。


薄れゆく意識の中でレインに抱き抱えられる感覚を感じたのを最後に、完璧に意識が無くなった。


第6話まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)

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