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第48話

第48話


「も、ももも、もしかしてその()は……!」



 小さい画面から飛び出してきそうな勢いで顔をのぞかせたアカリさんは、扉から入ってきたレインを指さしわなわなと震え出す。


 話を終えるのを狙っていたかのように勢いよく扉を開けるレイン。なんというナイスタイミング。まるで扉の側でずっと俺たちの話しに聞き耳を立てていたのではないかと疑えるほどにベストなタイミングだ。


 アカリさんがもじもじと何を言いたげだったのかは気になりはするが、コイツらの事を実際に見せて説明することの方が優先順は高い。

 

 レインたちのことはアカリさんにはさっき説明したが、まぁ、百聞は一見にしかずというヤツだ。


 

「あー、紹介します。さっきの雲を掴むような話しの証拠という訳ではないんですが……見た通り、コイツがレ」


「レインちゃんだ!!」


「……」

 


 俺がレインの名を言い終える前に、アカリさんに勢いよく遮られてしまう。

 


「あら? あなた、どこかで会ったことがあったかしら?」


「い、いやそういう訳では……ご、ごめん。つい興奮しすぎちゃった」


「あはは、大丈夫ですよ。多分誰でもそんな反応になると思います。」



 興奮しつい大きな声でレインに話しかけたアカリさんは、その声量に軽く驚いたような顔を見せるレインを見て正気に戻ったのか、食いついたように近づいていた画面から離れると調子を戻すように話し出す。



「ご、ごほん……私としたことが少し取り乱しちゃった、ごめんね。……い、一応聞くけどむっちゃ再現度の高いレイヤーさんだったりしない……? それもそれで私としてはすっごく嬉しいんだけど」


「れいやーさん??」



 久々、頭に?マークを浮かべ、顎に人差し指を当てたレインがそう呟きながら俺に向かって言葉の意味を教えろと言わんばかりの上目遣いで聞いてくる。


 アカリさんはどうやらレインのことをめちゃくちゃに再現度の高いコスプレイヤーさんだと思っているらしい。


 ……先の俺の話を信じるなどの発言はどこにいったのだろうか。


 

「レイヤーさんってのは……そうだな。簡単に言えば自分の好きな人に仮装する人のことだよ」


「自分の好きな人……。じゃ、じゃあ、あたしもレンのれいやーさん? になるわ!」


 

 中々に照れくさいことを言い終えると、えっへんと主張の控えめな胸を張り、手を当てるレイン。


 

「デレてくれているところ悪いけどあんまり一般人のコスプレをする人は居ないぞ。……それとコスプレは別に人限定じゃなくて良いんだよ。レインなら好物のあんバタートーストとかのコスプレでいいんじゃないか?」


「そうなの?」


 

 アニメや漫画などの娯楽には疎いレインはコスプレする程に好きなキャラなどは居ないだろうし、何よりコスプレは自由だ。レインなら食べ物のコスプレの方が楽しく出来ると思う。


 このビジュでキャラコスをしないのは少しもったいない気もするが……ここはレインの好物のひとつであるあんバタートースト一択だな。どこがとは言わないがトーストみたいな平らな一直線はレインとよくマッチしていると思うし。うん。


 

「あー、まあそんな感じで。さっきも話しましたけどレインはレインです。アカリさんの言うところのむっちゃ再現度の高いレイヤーさんってわけでもないし、単に似てる人ってわけでもないです。見た通り、レイン本人です」


「ほ、ほんとにホントだった……。あ」


「アカリさん、別に俺は気にしてないですよ。俺も話しながら雲を掴むような話だとは思っていたので」



 何故かよだれを垂らしながら妄想にふけっているレインを横目に話を戻すと、アカリさんは今の発言が少しばかり失言だったと感じたのかバツが悪そうに顔を逸らすが、間髪を入れずにフォローに回る。


 すべては自分の怠慢が招いた結果なのだ。アカリさんにこれ以上自分を責めるような思いをさせるわけにはいかないだろう。


 

「ご、ごめんねレン君。そーゆーつもりじゃなかったんだけど……」


 

 ぽりぽりと頬をかきながら俺のフォローに対し軽く「ありがとう」と伝えてくれているアカリさんの視線は、なおも画面越しのレインにくぎ付けである。どうやらアカリさんは俺の思っていたよりも大物なのかもしれない。


 

「そんなことよりアカリさん」


「どうしたの?」


 

 一時は収まりつつあった荒い鼻息が、また徐々にその勢いを取り戻そうと助走をつけているときに再び彼女に話しかける。


 画面を食い入るように見るという表現があるが、この場合はもう、画面は見入られるように食われているといった表現のほうが正しいだろうか。

 


「レインと話したいこととか、あるんじゃないんですか?」


「……?……?!」

 


 俺が彼女に投げかけた言葉は、すべてのクリエイターにとってまさに夢とも思えるような提案だった。案の定というべきか、その提案に彼女はやはり目を輝かせながらこちらを見つめ返す。

 

 俺もこう見えてクリエイターの端くれだからな。無から有を生み出す側の人間として、実際にその有とされている、もはや自分の子供同然といったキャラクターらと会話ができるといった機会があれば、他に何を差し置いてでも対話をしたいといった気持ちはよくわかる。


 

「ほ、ほんとにいいの?! レインちゃんとお話できるなんて! じゃ、じゃあ……!」



 やったーと大人ながら子供同然の喜び方を隠そうともせず、今までにないくらいに目を輝かせているアカリさんは、まるで12月25日の朝にクリスマスツリーの元で自分へのプレゼントを見つけた子供のようだ。


 アカリさんを見てるとこっちまで童心を思い出させられ、同時にほっとするような気持ちになる。きっとアカリさんの魅力はこの丁度いい幼さというか、大人であることを飾らずに素直にいられるとろこなんだろ……

 


「い、今……何色のパンツ履いてるの!?」


 

 ……。


 アカリさんの人としての魅力に揺り動かされていた俺の感動は、この質問によってこれ以上紡がれることの無い言葉と一緒に心の奥の方へと引っ込んでしまった。

 

 前言撤回。子供は子供でもマセガキでした。


 

「え?パンツ? えーっと今日のは……ってなんであんたに教えなきゃいけないのよ!?」


「だ、だってなんでも聞いていいってレン君が……」


 アカリさんになんでも聞いていいとは言ったが、まさかこんな質問になるなんて思わなんだ。

 

 でもあんなキラキラした瞳から一変、露骨に落ち込み出したアカリさんを見ていると子供の期待に答えられなかった親のような気持ちになってしまう。なぜ俺は年上に母性本能をくすぐられているのだろうか。


 

「レンくん……」


「くっ……」


 

 ずるい。この人自分が可愛いことを自覚してやがる。可愛い人が可愛いことを自覚し、更に可愛い角度での上目遣いはもはや犯罪ではないだろうかいや犯罪である。


 俺はこの子の期待に応えるべく、ビシッと人差し指を突き出し、レインへと相対する。

 

 

「アカリさんは言うなればお前の母親なんだ。子が親にパンツの色を教えるのは自然の摂理なんだぞ。だからアカリさんに今何色の下着を履いているのかぐらい教えてやれ」


「え、ちょ、ちょっとその理論でいくとレン君は私の旦那さまってことに……まあ私としてはレン君と結婚するのは(やぶさ)かではないけど、ないけど……」


「レンは一旦黙ってなさい! 天然女たらしのアンタが話すからほら!この女が勘違いし始めてるでしょ」


「なんだよ人をラノベ主人公みたいに言いやがって。アカリさんが俺を好きになるはずなんてないだろ? いいから早くパンツの色を」


「あ、あんた実は自分が知りたいだけでしょ」


 

レインが見当違いなことを言い出すが、意味がわからないのでシカトしておく。それよりもその前の発言だ。アカリさんが俺に好意を抱くとか。


 

「アカリさんが俺を好きになるなんて、それこそありえない話だぞ」


「そ、そう? それならいいのだけれど……。嫌な予感がするわね」



 俺は高二のガキでアカリさんは立派な社会人で大人の女性。何年か一緒に仕事をしてきた中でアカリさんが男っ気ひとつ無いことに関して相談という名の強制会話に参加させられてきたが、そもそも女性経験がない俺に相談に乗ることなどできる訳もなく、同じ相槌しか打てなかったような俺にフラグが立つわけがないだろう。


 やれやれと肩を竦めながら画面越しに俯いたままのアカリさんを見るに、やはり俺のようなすぐ勘違いする男と一緒にされてキレているに違いない。


 

「あ、あの……アカリさん。すみませんレインのせいで。お気を悪くしてたら謝ります」


 

 わなわなと画面越しに震えるアカリさんの肩を触ろうとした瞬間だった。


 

「結婚は二年後まで待つとして……レン君は結婚式は挙げたい派かな? 私は全然どっちでもいいんだけど、今は式代だけで三桁万円いくからね。そのお金は二人で暮らす家代とかに当てた方がいいと思うんだよね。あ、でもレン君が挙げたいっていうなら私は賛成するしお金もちゃんと出すよ! 住む場所は……私は仕事もあるからなるべく都会の方がいろいろと都合が良いかな。あ、でもレン君が田舎派っていうなら自然豊かでのどかな場所で二人で暮らすことも私は賛成だよ! あとは……」



 急に顔を上げたかと思うとアカリさんはとてつもない早口で捲し立ててくる。


 

「ほら正体表したわ! この女のレンを見る目がどうも怪しいと思ってたのよ!」


 

「…………」

 


 さすが我が最強の家内であるレインさんはなんでもお見通しのようだ。


更新すごく遅れました。お待たせして申し訳ないです。<(_ _)> 更新頻度は前ほどまでとは言えないですが、徐々に上げていくつもりです。完結までは長いと思いますが、絶対にさせます!

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