第44話
第44話
定期テスト。
それは、学生の本分たる勉学に生徒一人一人がきちんと勤しめているかを数値化し、確かめるための試験であり、同時にその学生たちが最も嫌っているであろうイベントだ。
かくいう俺も、そのイベントを毛嫌いする内の一人であり……
「だあああー! もうやってられん、頭パンクする!」
「な、なに!? いきなりどうしたの!?……急に大っきい声出さないでちょうだい、びっくりしちゃうでしょ!」
ノートやペンが置いてある丸型ローテーブルをちゃぶ台返しし、勉強道具が床に散乱する。
隣に並ぶレインは俺の叫び声に驚いたのか、びくっと肩を震わせたあとイヤホンを外し俺の顔を覗き込む。
「あーあー、こんなに散らかしちゃって……レンってば定期的に突拍子もない言動をとるわよね」
そう言うとレインはイヤホンを外しながら音楽アプリの再生ボタンを止め、散乱している勉強道具そそくさとを拾い上げて、立て直したローテーブルの上に並べ始める。
「……はいっ。これで大体さっきまでと同じ位置に並べられたと思うけど……教科書のページまでは詳しく覚えられてなかったから今開いてるところが合ってるかは分からないわ。気を取り直して勉強再会よ!」
「……じゃねえ」
「……? レン、何か言ったかしら?」
わざわざ自分の勉強の手を止めてまで、俺の散らかした勉強道具とローテーブルを直してくれたレインに向かって俺は
「再開じゃねェよ! かれこれ15時間ぶっ続けだぞ!? もうやってられるかああぁぁぁ!」
「あーー! せっかく直してあげたのに!」
イヤホンをつけ始めたレインに向かって再びローテーブルをちゃぶ台返しし、15時間ぶっ続けの勉強会を終わらせることに成功した。
「全く、お兄ちゃんは全く! 限度というものを弁えて下さい! いくら自分の部屋だらって暴れ回っていい訳じゃないですよ!」
「ご、ごめんさい……」
自室で2回もバタバタとちゃぶ台返ししていたのは流石にうるさ過ぎたか、パジャマ姿のヒナに正座させられ、説教されていた。
昼間から勉強を始めて今の時刻は深夜3時。
常人ならばとっくに寝静まっている時間帯である。
かくいうヒナも熟睡していた1人であり、寝癖のついた髪に目をぽやぽやとさせながらも正座する俺の正面で仁王立ちしていた。
「そうよそうよ! ヒナちゃん、もっと言ってやってちょうだい。15時間勉強したくらいでなに弱音吐いてるのよ!」
「お、お前……」
レインは自分に全く非がないと思い込んでいるのか、ヒナの背後から顔をのぞかせながら俺事を煽ってくる。
15時間勉強した"くらい"って……。
3時間集中して自習できたら褒められる方だろと思い込んでいた俺の方がおかしいのだろうか。
少しショックを受けている俺に対し背後から未だぎゃいぎゃいと言ってくるレインにとうとう堪忍の尾が切れたか、ヒナは肩を震わせながらレインの方へと向き直ると
「......さっきから執拗にお兄ちゃんを攻撃してますけど、レインさん。あなたもですよ?」
「え……?」
「一般的な人は15時間もぶっ通しで同じことをやり続けることなんて出来ないんです! 厳しくするなとは言いませんが、少しはお兄ちゃんの事を労わってあげて下さい!」
「わああぁぁぁ! ご、ごめんなさい!!」
ヒナの怒った顔が余程恐ろしかったのか、俺の隣に素早く移動し正座したレインは、目にも止まらぬ早さでヒナに土下座した
「――って事があったんですよ!」
「な、なるほど〜。少し騒がしいなと思ってたらそんな事があったんだね。だから昨日の夜のご主人様はベットに入る時間があんな遅かったんだ」
「我の寝ている間にそのような事があったとは。ヌシら、あまりヒナを困らせるのはやめておいた方がいいぞ? 我も以前登校中にこっぴどく叱られたことがあったものでな」
「それはもう昨日……いや、今日ね。身に染みて理解できたわよ……」
「ヒナに叱られたの何年ぶりだろ。なんだか懐かしい感じがするな、この頃俺にベッタリだったし。普段の甘えてくる時のヒナも良いが怒ってる時のヒナも中々……。……ん? 今アリスなんて言った?」
「もう! マオちゃんひどいです! ヒナも怒りたくて怒ってるわけじゃないのに!」
「!? お、おおお落ち着くのじゃヒナ! 今のは完全に我の失言じゃった! あ、あ謝るから許してくれぬか?!」
朝から俺たちの騒音に苦言を呈すヒナ、ヒナを怒らせるなと身をもって忠告してくるマオ、5人分の食事を用意しテーブルへ配膳するアリス、渋柿を食ったような顔をするレイン、なぜかいつもより元気が湧き出る俺……
ヒナに散々叱られてからわずか数時間後、俺たちはいつものように5人揃って朝食をとっていた。
俺の隣にはヒナが座り、対面にはレイン、そしてマオが横並びで座っていて、最近新たに加わったアリスには席やテーブルのスペースや数の事情でいわゆるお誕生日席に座ってもらっている。
最初の頃は無理やり俺の隣に椅子を詰めて座ってこようとしたため、机にはまって3人仲良く抜けなくなったのはまた別の話だが。
レインと出会った最初の頃の会話通りならば、俺の創ったキャラクター達を少なくともあと3人ほど回収しなくてはならないため、新しく大きめのリビングテーブルを買うか絶賛検討中である。
......家具を一緒に買いに行くならヒナとがいいなあ。
2人で家具を見てどれがいいとか、このサイズは大きすぎるとか、お揃いのマグカップなんて買ってみたりいやちゃいちゃして……素晴らしい、素晴らしいぞこれは!まるで新婚ほやほやの夫婦じゃないか!
「ヒナ! ちょっと話が」
某家具メーカーをヒナと2人で回る妄想にすっかり魅了され、隣でぷんすかと食事をとるヒナに声をかけようとすると
「…はあ、なんでこう、毎度毎度ヒナばっかり叱り役をやらされてるんですかね………。…よし、決めました! 今から叱り役トーナメントを開催します!」
何を思いついたのか、そう宣言しながら突然立ち上がったヒナに虚しく俺の右手は弾かれる
嗚呼、マイシスターズショルダー……
嘆いているうちにヒナが聞き逃せない単語を言い放ったとに気づくと同時、四人一斉にそのワードを口にしていた。
「「「「叱り役トーナメント????」」」」
「……ってなんなのじゃ?」
胸に手を当て宣言するヒナに対し、マオが首を傾げながら当然の疑問を問いかけた
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