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第39話

第39話



「『サーチ』......うん、間違いないわね。この中に何かしらの魔物、もしくはアンデットがいる気配がするわ」



「うわー、アンデットとかまじ勘弁だわ。現実に出て来たら1発で気絶する自信しかない」



「それはあたしも同感だわ。腐敗した肉体にただれた皮膚、あちこちが溶けたように内蔵が外側から丸見えの身体。そして何より強烈な腐敗臭。見た目も臭いも強烈なアンデットじゃないことを願うしかないわね」



「それ聞いて余計に会いたくなくなったんだが」



レインが探知魔法を使い、お化け屋敷の中に魔物かアンデットが潜んでいることを確認した。


探知魔法は使いどころが限られていたのであまり精度の高いレベルまで上げていなかった弊害がここで出てくるとは。


過去にもどって精度100ぐらいまで上げたいが、そんな甘えたことは言ってられない。


アンデットとのエンカウントに怯える俺は、単にお化け屋敷に怯えるレインの手を取り、お化け屋敷の中へと足を踏み入れたーー











ーーー



「きゃあっ!」



「なんだ!? 出たか、アンデットが!」



「い、いえ、吊り下げられたコンニャクだったわ......」



「コンニャクかよ......」












「きゃあっ!」



「な、なんだ!? 今度こそアンデットが出たか!?」



「い、いえ、今度はお豆腐だったわ」



「豆腐かよ......」










「きゃあっ!」



「遂に出たか!? アンデットめ、せ、成敗してやる!」



「ご、ごめんなさい、今度はプリンだったわ......」



「なんでお化け屋敷でプリンが出てくるんだよ! ていうか食べ物への信頼度高すぎだろ! どうなってんだこのお化け屋敷は!」



ただ目の前に広がる暗黒の空間に向かって、俺は至極真っ当な意見を叫ぶ。


虚しく暗闇の中へと響いた俺の怒号は山彦として返ってくるわけもなく、ただ静寂だけが返事として返ってきた。


レインとともにお化け屋敷へと入ってもう数十分経過したが、一向に魔物やアンデットとエンカウントする気配がない。


レイン曰く一応は近づいてきているらしいのだが......



「きゃあっ!」



「......」



「ご、ごめんなさい、アツアツのおでんだったわ......」



...................



なにせこの有様なので俺的には全然近づいている感覚がない。


レインは本当にビビりなため、さっきから飛んでくる様々な食材や料理に怯えまくっている。


俺の背に隠れていればいいものの、



「アンデットとか魔物が来たら危ないでしょう? だからレインはあたしの後ろに隠れていて........そ、それと手を繋いで居てくれたら、助かります......」



とか言って俺を前へと行かせようとしてくれない。


正直レインには守られ慣れているので今更という感じだが、旧体育倉庫のピクシーとの戦いで俺が軽い怪我を負ったことを気にしているのか、それ以降はやたらと過保護気味になった気がする。


かっこいいレインを見るのも乙なものだが、やはり怖いのか、手をにぎにぎしてくるレインはその緊迫した表情とは反対にとても可愛い。





こんな状況だが、ふとそんな事を思ってしまう。






一度そんな事を考え始めてしまったのが最後、レインのことを見ていると変な考えが止まらなくなる。


握られた手から伝わるレインの若干の手汗とやわらかい指の感触、首を伝わる汗、震える唇、緊張からくる荒い気遣い、紅潮している頬......


だめだ、この暗闇の中のどこかに魔物かアンデットがいるかもしれないってのに、レインのことを見てるとムラムラして止まらなくなる


お、落ち着け、川崎レン。お前は目先の欲望に駆られて愚かな行動をとるような人間じゃないはずだ。


落ち着け、落ち.......



「.......? ど、どうしたのレン? さっきからレンのうるさいツッコミがまったく聞こえないのだけれど......こ、怖いから何か喋ってくれないかしら。もしくは大きめの声で歌でも歌ってくれない......? ーー、ってどこ触ってるのよ、ちょ、今はそういうことしてる場合じゃないってば、バカぁっ......」



レインの無防備な後ろ姿に遂に自分の衝動を抑えきれなくなり、背中から前へと手を回し、バックハグのような体制をとる。


レインの片手は懐中電灯で塞がり、もう片方の手は俺と繋いでいるため、両手が塞がっているのをいい事に、利き腕ではない左手のみでレインの身体の全面を撫でる。


凹凸のないまっすぐ、ただまっすぐと続く扇情的な身体のラインに俺の脳みそが刺激され、左手の動きは止まらなくなる。


利き腕じゃないため若干たどたどしい動きにはなるが、レインの漏らす息と、とろんとした表情を見ているとそんな事は気にならない。



「んんっ.....ふう、レ、レン.....ちょっと顔を見せて......?」



とろけるような表情を見せつけて、猫なで声で甘えてくるレインのお願いに逆らえるはずもなく。



「レイン、俺なんか今日変だ......さっきまで何ともなかったのに、急にこんな、こんな......」



「大丈夫よ、大丈夫。あたしがついてるから、だから、顔を見せて......ね?」



「うん......」



レインは上半身をひねり、身体を後ろに向けると、後ろから抱きついたままの俺の顔にずいっと顔を近づける。


暗くてよく見えないが、レインの顔が段々と近づいてくるのが気配で分かる。


そのまま顔を互いの息が互いの唇に伝わり合う距離まで近づけて来たレインは、懐中電灯と俺の右手を手放し、両手で俺の顔を包むと......



「そうよ、いい子ねレン。あとでよしよししてあげるからね......『デストリイ・バッド・スペル』!!」



「ーーッ!? ぐああ!」



甘い雰囲気から一変、俺の体が目が眩むほどの強烈な光に包み込まれ、全身に電撃が走ったような衝撃を受ける。



「痛っ!? 急になにすんだお前、せっかく良い雰囲気だったのにキスの直前でひよるなよ!」



「ひよってないわよ! それとあとでキスならいくらでもしてあげるわよ! じゃなくて、レン、あんた強力な呪いかけられていたわよ。だからさっきはあんなに積極的だったのね.....あたしが1人で勝手に盛り上がってたなんて、バカみたいじゃないっ......」



レインは俺に電撃系の魔法を使ったかと思ったが、何故かもにょもにょし始めてしまった。


あんなに甘い雰囲気だったのになんで急に魔法なんかぶちかましたのだろうか、あのままいけば、


あのまま、いけば......


あれっ、なぜだろう。


さっきまでレインの良い雰囲気だったはずなのに、そこら辺の記憶が一切無い。


ついさっきの出来事なのに記憶がとんだ。


一体俺はレインに何を......?



「な、なぁレイン。俺さっきまでお前に何して......」



「ーーッ! あんなにあたしの身体をまさぐっておいてそれを覚えていないとはいい度胸してるわね! ............って呪われてたんだから怒鳴ってもしょうがないわよね......はぁ......」



「おい、さっきから呪われてるだのなんだの一体何を言ってるんだよ。確かにここ数分の記憶が無いが、単に物忘れが激しいとかじゃないのか?」



「そのレベルで記憶がとんで許されるのはお年寄りだけよ。まだ16年しか生きてないあんたがそのレベルまでいってるわけないでしょ。単に強力な呪いがかけられていたのよ。まぁ、もう解いちゃったけどね」



「お年寄りに謝れよ、失礼だぞ。......しかし、レインも俺も気づかない間に呪われてたなんて、これは一筋縄ではいかなそうだな」



「そうね、いくらお化けが怖かったからといってもレンが呪われているのに気づけなかったのは不覚だわ」



俺はともかくレインまでも気づかぬ間に呪いをかけるとか、今回の相手はピクシーの時のように簡単に攻略できるとは考えない方がいいだろう。


なんだかさっきまではいい夢を見せられていたような気がするが、それが呪だったなんて到底信じられない。


改めて異界の技術に恐怖しながらも、再び手を繋いだ俺とレインは、今度は横並びになりまだ真っ直ぐと続く暗闇の中へと足を踏み入れる。






お互いにアンデットやただの従業員のお化けにビビり散らかしながらも歩くこと十数分。


レインは何かに気づいたようにはっと後ろへと目を向ける



「......」



「な、なんだよレイン。何か見つけたのか? まさか後ろにアンデットが居るのか?」



「......」



「な、何か言ってくれよ」



俺の問いかけに返事もせず、レインはただじっと後ろを見つめている。


その視線は、わずかに灯されている光が作り出した、俺の影へと向けられて......



「確保ーーーっ!」



「きゃああああ!?」



「!?」



ゆらゆらと動く俺の影に向かってレインが突っ込むと、その中から黄色い悲鳴をあげながら黒い物体が飛び出してきた!


最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)

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