第38話
第38話
「納得できないわ......」
「キスするにしても雰囲気や場所を選べよな。あんな目立つ場所でキスなんかしようとするからヒナに説教されるんだぞ」
「ーーッ、ぐうの音もでないわね.......」
納得できないと言いつつも、流石に朝の言動の恥ずかしさを自覚したのか、朝の出来事を思い出しながら赤面するレイン。
コイツはやはり俺の事となると少しブレーキが効かなくなる節があるな。
「わかったなら、朝のことは忘れて今からのデートを楽しもう、な?」
「そう、ね。うだうだしててもつまらないだけだわ。今日はせっかくのレンとのデートなのだからめいっぱい楽しまなくちゃ!」
朝のことは吹っ切れたのか、レインはいつもの調子を取り戻し満面の笑みを見せ、俺の手を取り走り始めた。
ーーー
前回ヒナとデートしたのが羨ましかったらしく、今日の日にレインとデートすることを後夜祭後に約束させられた。
まぁ、カップルみたいなものだからデートすることに抵抗は無いし、なんならレインとは春休み明けの学校に行き始めるまでしょっちゅう外に出かけていたからもう慣れてしまっている。
「ねぇ、なんだか2人きりで出かけるのって久しぶりじゃない?」
「そうだな、ヒナが帰ってきてからは学校以外で2人きりのことはあんまりなかったからな」
ヒナが帰国して以降、レインと2人きりでどこかへ遊 びに行くというのはなかった。
だからだろうか、レインの仕草にいちいちドキドキしてしまうのは気のせいだろうか。
いや、気のせいではない。
今日のレインはヒナがコーディネートしてくれたこともあり、持ち前のモデル体型を活かし、雑誌の表紙を飾っていてもおかしくないほどのみてくれだ。
少し暖かくなってきた今の季節に丁度いい暖かそうなカーディガンを羽織っていて、下はロングのスカートを履いている。
更にはファッション上級者しか被れないとされるバケットハットを被り、掛けた伊達メガネはいつもと違った知的な雰囲気を感じさせる。
「......?なにじろじろ見てるのよ?」
「......レインは今日も可愛いなって」
「ーッ、もう、バカなんだから」
少し驚いたような表情を見せたレインだが、以前まで のようにバカ! だのエッチ! だの激昂しなくなったことにレインの成長を感じながら、久しぶりの2人での外出を楽しむために歩き出した。
普段はあまり使わない電車に乗り、少し離れたところにある遊園地へと向かう。
レインは電車に乗るのが初めてだったためか、道中の電車での移動で子供みたいにはしゃぎ、周りの人の視線を集めていたのでとても恥ずかしかった。
ーーー
「この場所はどうなってのかしら、人がたくさんいるし見たこともない建物もたくさん並んでるわ! なんだか小さな国みたいね」
「小さな国か、まぁだいたいその認識合ってると思うぞ。あ、大人2人で」
遊園地を初めて見るレインは電車を見た時同様、入り口に立ったまま子供のように目をキラキラと輝かせていた。
何もかも新鮮だったあの頃の感覚がレインやマオ達は今の感性で感じられるのか、少し羨ましいな。
手をワキワキさせながら今にも遊園地内へと突撃しそうなレインを横目に見ながら2人分のチケットを買う。
腕にどのアトラクションでも乗れるリストバンドを付けてやると、レインはとても嬉しそうな表情で笑ってくれた。
「レン、あれはなにかしら? あの横長い箱に乗ってぐるぐる回ってなにをしているのかしら」
「ん? あぁ、ジェットコースターか。凄い速さでびゅんってしたりぐるぐるしたりで楽しいぞ。乗るか?」
「何を言ってるのかさっぱりね......あ、ちょ、やめて。せっかく説明してくれたのにいい加減な返事したことは謝るから、無言でほっぺを引っぱるのはやめてちょうらい!」
擬音だらけの俺の説明を理解してくれなかったレインのほっぺたを無言でふにふにしていると、平日で空いていたため、すぐに列の先頭へと案内される。
「流石にジェットコースターの1番先頭に乗るのは怖いな.....」
「まったく、レンは怖がりなんだから。ほら、手繋いでてあげるからそんなにぶるぶるしないで。怖くなったら抱きついてきてもいいからね?」
よしよしとレインに頭を撫でられながら意を決しジェットコースターへと乗り込む。
乗り込んでみれば以外となんてことなかった。なんてことはなく、普通に叫びまくってしまった。
ジェットコースターの悲鳴といえばと想像できるような黄色い悲鳴ではなく、普通に太い声でぎゃああと叫んでしまって恥ずかしい。
数少ない他のお客さん方にも聞こえてたらしく、すごい悲鳴でしたねとか言われてもう死にたい。
抱きついていいと言われたので遠慮なくレインに抱きつきながらジェットコースターに乗り、乗り終わった後もしばらくレインに抱きついたままだった。
腰が抜けて、抱きついていないとまともに立てなくなったのだ。
俺が抱きついたままレインの顔を見上げると何事もなかったかのように平然としている。
叫ぶのに夢中で気づかなかったが、騒ぐ俺とは対照的にレインは涼しい顔をしていた気がする。
流石レインだ、こんな事には微動だにしないんだな。
最近は泣いてるとこばかり見ていたためか、こうして凛々しいレインを見ていると思わず見直してしまう。
レインは俺の視線に気づいたのか、俺と目を合わせるといたずらっぽく笑ってくる。
「ドラゴンの背中に乗って空を駆け回った時の方がよっぽど楽しかったわね。まあ、子供向けには丁度いいんじゃないかしら。それよりレン、ぎゃああはないでしょ、ぎゃああは.......クスッ」
「よし、今からお化け屋敷行くぞ。泣いて謝っても笑ったことは許さないからな」
「ちょ、レ、レン!? 考え直してちょうだい! 確かに笑ったのは悪かったけどお化け屋敷とかいう聞きなれないワードに妙に心が落ち着かないの! ねぇ、謝るから、笑っちゃったのは謝るからそこには連れていかないでお願いだからあっ!」
未だ震えが止まらない膝をがくがくさせながらもレインをお化け屋敷へと連行するために力をふりしぼり、レインをずるずると引きづりながら歩き出す。
目的地はもちろんお化け屋敷。
ここの遊園地の名物となっているほどのものらしく、レインが怖がるので行かないでいこうと思っていたが、気が変わった。
泣きじゃくるレインに抱きつかれながらずるずるとお化け屋敷へと向かう姿を周囲の人から奇異な視線で見られながらもなんとかたどり着く。
「いやぁっ! なんで入口からこんなにも怖そうな雰囲気を醸し出しているの、こんなもの誰も入りたがらないと思うの! ......うん?」
「ぜー、ぜー、お、お前いくら軽いからって腰がぎっくりいっちゃった俺に全体重を掛けて妨害してくんなよ.......おかげて悪化しただろ」
「悪化したのはレンの自業自得よ、『ヒール』かけてあげるからこっちに来なさい。 それより、レン」
「どうした? さっきまで泣いてたくせに真剣な顔つきになって」
レインは先程まで泣きじゃくっていたとは思えないほどキリッとした表情をして俺を見つめる。
......
いや、目の端を見るとすこし赤くなっていた。
いつになく真剣な表情のレインは、お化け屋敷を再度 見ることで疑惑が確信にかわったのか、意を決したように口を開くと
「この中、多分魔物が紛れ込んでるわね」
「......まじかー」
せっかくのデートが、急遽魔物退治へと変更せざるを得なくなりました。
最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)
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