第35話 アリス参上!
第35話 アリス参上!
「ようやく見つけた、ボクのご主人様!」
「「「「......は????」」」」
俺に抱き抱えられた白い毛玉が突然放つ理解不能な単語にこの場にいる全員の戸惑いの声が重なる。
猫が突然喋り出すのはレインと始めて会った時ぶりだからか、すっかり慣れてしまったものだと思っていたが、今回は唐突すぎて流石に驚いてしまう。
「ちょっと、レン。コレはどういうことかしら?」
「し、知らない! まじで知らない! だから、レ、レインさん? そんなに怖い顔で手を鳴らしながら近づいて来ないで下さい......」
突然人語を話し出した猫に抱きつかれると、レインが鬼のような形相で俺の方へじりじりと迫ってくる。
手を伸ばせば届く距離まで近づいてくると、レインから繰り出される鉄拳は俺の顔面へとクリーンヒットしそうになり.......
やべぇ、これ死んだわ......
瞬間、俺は死を覚悟し目を瞑る。
「ご主人様を傷つけちゃ、だめ!!」
拳と掌のぶつかる鈍い音が聞こえてきた。
その衝撃波は風となって伝わり、優しく俺の頬を撫でる。
あ、死んだな、コレ。
来世は是非とも顔だけで生きていけるような美少女になれますように......
俺は来世へと要望を短くまとめ、手を合わせ拝みながら目を開ける。
まぶたが開き、景色を確認してみるとそこには
「な、あたしの拳を防ぐなんて......あんた、一体何者?」
「ボクはアリス。宇宙一すごいご主人様専属のメイドだよっ!」
レインの鉄拳を見事に防ぎ、猫耳をひょこひょことさせながらきゃぴっとしたスマイルを放つ、メイドの格好をした美少女がいた。
ーーー
とりあえず家に帰ろうと提案した俺に、皆は素直に従い、そのまま喧嘩すこともなく帰宅する。
途中、美少女メイドはひょこひょこしていた猫耳が出ていたのは人間化に失敗したからなのか、猫耳だけを器用に収め、完全に人間化していた。
嗚呼、マイネコミミヴィーナス......
神は言っていた。「猫耳は儚い」 と。
そんなこんなで帰宅し、美少女メイドに自己紹介をさせる。
「ご主人様忘れちゃったの!? ボクだよ、アリスだよ!!」
ぷりぷりと怒ったような表情を見せる美少女メイド。
アリス......?
俺の創ったキャラでメイド服を着ているアリスといえば.......
「えー! お前アリスだったのか!」
「ご主人様、ボクを忘れてたなんてひどい! でも許しちゃう、なぜならご主人様はボクのご主人様だから!」
帰宅すると早々にアリスを名乗るメイドの格好した美少女は、立派にたずさえる双丘を俺の顔に押付けてきた。
「きゃ、ご主人様そんなにがっつかないでもボクの胸は逃げないよー」
「ひは、ひへひゃうはもひへはいはろ」
「ヌシ、何を言ってるか全然分からないぞ......?」
「逃げちゃうかもしれないって言ったんだよ」
「胸だけ逃げるわけないでしょ、アホなのかしら」
いや逃げちゃうかもしれないんだよ、これが。
冗談とかじゃなくて、マジで。
なんとか巨乳の束縛から脱出し終えると、アリスの隣に行き、皆の前に立たせて再度自己紹介をさせる。
「はーい、改めまして。皆さんどうも初めまして、ご主人様の宇宙一すごいメイドのアリスでーす! よろしくね〜」
「と、いうわけで、メイドのアリスだ。みんなよろしくな」
「「「どういうわけ」」」「なのよ!」「なのじゃ!」「なのですか!」
おっと語尾の大渋滞が起きてますね。
ーーー
簡単に言うと、俺のメイドを自称するアリスは、俺の創ったゲームのキャラの一人だ。
レインやマオとはまた別作品のキャラクターなので、お互いのことを知らないのも無理はない。
事情を話すと、同じ穴の狢ということでレインやマオの怒りも収まり、無事に夕飯の支度を始めることが出来た。
「ご主人様、ボクはすーぱーすごいメイドだからね、お料理も任せて!」
アリスは夕飯の支度をしようとする俺とヒナに向かってそう言い、颯爽と料理を始める。
その手際は昔よくテレビで見ていた一流のシェフとなんら遜色ないモノで、思わずヒナと一緒に見入ってしまっていた。
「う、美味いな、これ!」
「ヒナが作ったのより何倍も美味しいです......」
「えっへへ〜、ご主人様に会えたのが嬉しくて結構豪華に作っちゃった〜!」
アリスの作ってくれた料理はテーブルいっぱいに広がるほど大量で、尚且つ全てが美味だった。
その美味さには思わずレインとマオ、そしてヒナの舌さえ唸らせてしまうほどで。
城西祭の打ち上げも兼ねて、その日は家でたくさん飲み食いした。
ーーー
「ご主人様ー? 寝ちゃうならリビングじゃなくて自分の部屋のベットで寝なきゃ」
「......ん? あ、そうだな......」
城西祭でも面倒事からの解放感と後夜祭で使った初級の身体強化魔法、そして皆で楽しく飲み食いしていたせいか、すっかりリビングのテーブルで寝てしまっていたらしい。
アリスは俺を起こしながらも、テーブルの上を全て片付けていた。
他のみんなは自室に戻ってしまったのか、リビングには俺とアリスの2人だけだ。
「寝る前に風呂入らないと.......」
「ご主人様、そう言うと思ってさっきお風呂沸かしたから、ちゃっちゃっと入ってきな〜」
「すげえな、俺の事よく分かってるじゃん」
アリスは風呂に入らないと一日が終われない俺の事をよく分かっているらしい。
流石は宇宙一の俺のメイドを自称するだけのことはある。
褒められたアリスは、少し照れながらもその溌剌とした雰囲気に似合わない表情を見せ、
「あったりまえじゃん! ご主人様のことはなんでも分かるんだらね」
「な、なんでもか......。流石は宇宙一のメイドだな」
「うん! ご主人様のことは、 なんでも、ね!」
「......?」
ふとした瞬間に見せられた、先程までとは対称的な表情に少し引っかかりながらも、アリスが沸かしてくれた風呂に向かうのだった。
最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)
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