第34話 キミが傍にいてくれたから
第34話 キミが傍にいてくれたから
どうやらレインは俺が置いていったあと1人で文化祭を回るのは嫌だとサヤ先輩に泣きつかれ、俺を探しつつ渋々サヤ先輩との文化祭デートを楽しいんだらしい。
よほど楽しかったのか、レインの制服には回った各場所で手に入れたっぽいアクセサリーなどの装飾品が沢山ついていた。
「全く、あたしの事を忘れてた訳じゃないでしょうね?」
「忘れてないよ、サヤ先輩との喧嘩が長引きそうだったからマオにこの学校を案内してただけだって。その証拠に約束の時間にここに居ただろ?」
「そうだけど......マオとデートしてたってのが解せないわね」
「ありゃデートっていうよりおままごとみたいなもんだったけどな......」
そう、俺はレインと後夜祭前にこの場所に集まるように約束していたのだ。
約束したのはレインが後夜祭デートに人を誘うことの意味をチナツちゃんの件で知った後だ。
レインは後夜祭のダンスを俺から誘って欲しかったのか、その日以来ひたすら俺の事をちらちら見てきたり様々な方法でアプローチしてきたので、根負けした俺が指切りげんまんで約束してしまったのだ。
マオとのデートの件は俺の弁明に他意はないと一応は分かってくれたのか、レインは文句を言いながらでも俺の手を握ってきてくれる。
手を握るレインの横顔はいつものようなクールな表情をしているが、やはり他の人に見られながら手を繋ぐのは少し恥ずかしいのか耳をほんのり赤くしている。
そんな愛おしいレインを横目で見ながら、後夜祭会場となっている体育館へと向かうのだった。
ーーー
「さあさあここに居らしますは俗に言うリア充の方々! 本日は春の城西祭最終日、後夜祭へとご参加いただき誠にありがとうございます! この場所へ足を運ばれた時点でまだ付き合ってなかろうとも、恋仲になるのはこの世の条理! 思う存分イチャコライチャコラちゅっちゅちゅっちゅしていって下さい! あ、ちょ、どこさわって......やめろォッ!風紀委員の職権乱用反対! ......わぁっ!?」
後夜祭会場内の落ち着いた雰囲気に似合わない場内アナウンス係が風紀員によって退治されると、騒がしい音は一切なくなり、静まる会場の中に音楽が流れ始める。
会場に来ていた皆が変なアナウンスにどん引きしていたが、それも次第に落ち着き始める。
「ねぇ、レン。あの人たちを見て! すっごく素敵な踊りね」
「あぁ、あの人たちは社交ダンス部の人たちだな。俺たちみたいなぺーぺーでも踊れるようにダンスの見本となれる1番目立つ場所で踊ってるんだ」
「あたしは王城とかで踊ったりする事があったから簡単なモノなら踊れるわよ?」
「まじか、じゃあ踊れない俺が今夜のパートナーで良かったのか? お前は目立つし、俺と一緒に踊ると恥かくかもしれないぞ」
「何言ってるの、最初は何するにしても初心者じゃない人なんていないわよ。それに今夜はレンと踊るから意味があるのよ? あたし、レン以外の人とは絶対踊らないから。分かったらほら、踊るわよ」
「レイン......」
俺にいつの日にか見たようなとびきりの笑顔を向けて手を引いてくれるレインに連れられ、社交ダンス部の人たちと同じ土俵に立ってしまう。
「お、お前この場所はマズイって」
「いいから、あたしに合わせて」
レインを見ると、自信で満ち溢れたような顔で真っ直ぐ前を見ていた。
レインにリードされながら踊るが、全く上手くできない。
レインに合わせるといっても未経験の俺がそんなことできるはずもなく
ステップは踏めず、足運びも上手くいかず、ただただ時間だけが過ぎていく。
焦りと不安で次第に周りの景色がぼやけ始め、レインの声も遠くなっていく。
周りからはくすくすといった笑い声のようなものまで聞こえる気がする。
だめだ、このままじゃレインに恥をかかせてしまう。
俺はともかく、レインは、レインだけは.......
あれ、レインの顔が、見え、ない......
こんな出来ではクラスにとどまらず学校全体でも馬鹿にされてしまうかもしれない。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
ネガティブな考えばかりで俺の思考が埋め尽くされる。
俺は何をしてるんだろう。
男なのに自分からレインをリードすることなんて出来ず、レインに連れられて立ったこの場所でも、レインとは対照的にビビって、踊れないで......
普段から偉そうにレインたちに接してるのになんてザマだ、所詮俺はただの引きこもり、あの日現実から逃げ出してしまったなんにも出来ない引きこもりのままじゃないか。
こんなことならいっそ、学校なんか来なければ.......
「レン、あたしを見て」
......
「あたしがいるから大丈夫よ! レンはあたしの創造者で、ヒナのお兄ちゃんで、マオの友達で......あたしのダーリンなんだから!」
「ーーッ!」
焦燥に駆られ、周りが見えなくなってしまっていた時、手を握られたことでレインの顔がはっきりと見え始めた。
レインは俺の手を優しく握り、ただ真っ直ぐと俺の顔を見つめていた。
そうだ。
いつもレインが隣に居てくれたから、俺の一番近くで俺を一番に見ていてくれたから、俺は一歩踏み出すことが出来てたんだ。
レインと初めてポーションをとりに行った日、マオに話しかけに行けた日、城西祭で一緒にトラブルを解決して行った日々......
思えば、俺がなにかに挑戦する度に横でレインが支えてくれていた。
キミが居てくれたから、俺は......
ダンスをやったことがないからどうだってんだ。
レインはこの世界に来て毎日が新しいことの連続のはずななのにいつも笑顔で過ごして、毎日が幸せと言わんばかりと表情や仕草で表してくれている。
俺に、伝えてくれている。
なら、俺からもきちんと伝えないとな。
俺は自分の右手を握ってくれているレインの両手に左手を添える。
深く息を吸い、再び不安と焦りに自分を支配されないよう、助け出してくれたレインの顔を見つめ、言う。
「ありがとう、レイン。......良ければ俺と踊ってくれないか?」
「もちろんよ!」
レインの合図に従い、既に流れている曲に合流する
レインに目線の位置や姿勢、次に出す足や次の行動が思念で伝えられる。
せっかくだし、派手にやるか。
心の中で身体強化魔法を唱え、軽くなった体でレインの指示に従う。
レインの指示は的確で、ダンス未経験の俺でもすぐに理解ができるほどわかりやすい。
一定の動きをパターン化して、それを繰り返しているだけだが、音楽にのり、舞うことで、それなりの形にはなっている。
段々と曲が盛り上がり、その曲の締めと思われる部分が演奏される。
俺は腕を上げ、レインはその下で一回転。
最後まで踊りきることが出来た。
<今よ、ぎゅっとあたしを抱き寄せて!>
「え? お、おう」
指示に従うのが癖になったか、俺がなんの疑いもせず手を離せば後ろへ倒れてしまうであろう体制のレインを抱き寄せると
「ッ!?」
突然、レインに唇を奪われる。
俺が唖然としていると、レインは満足そうな顔で俺の唇に人差し指を当て
「レンは、誰にも渡さないんだから」
そう言うといたずらっぽく笑みを浮かべ、俺は再びレインに抱き寄せられるのだった。
曲の終わりと同時、多くの拍手と歓声、指笛の音が聞こえてくる。
俺たちは踊るのに夢中で気づかなかったが、だいぶ注目を集めてしまったみたいだ。
社交ダンス部の方々も拍手をしてくれているが、俺たちのやらかした事が後になって申し訳なさすぎて謝り倒した。
上から見渡してみると顔を赤くしたチナツちゃんとぽかんとしてる市井さんが見えたので手を振っておいた。
こうして、色々なことがあった春の城西祭も、無事に全プログラムを終了させたのだった。
「今日は後夜祭でレンと踊れて良かったわ。中々いい踊りだったわよ」
「うむ。コウヤサイとやらは知らぬが、菓子を沢山くれたメスどもに世話されるのは大変居心地が良かったぞ」
「あぁ、猫カフェに住みたいです......」
「あの猫、飼いたかったなあ......」
後夜祭も無事に終わり、すっかり辺りも暗くなってしまった。
城西祭に来ていたヒナとマオを回収し、俺たちは珍しく4人での帰宅を堪能していた。
各々が喋りたいことをしゃべり、反応して、笑い合う。
こんな日がいつまでも続けばいいのにと思っていた矢先、事件は起こった。
「にゃーん」
「あれ? お前、さっきの猫カフェの......」
夜道を歩いている最中、街頭に照らされた見覚えのある1匹の猫が目に留まる。
「どうした? 付いてきちまったのか?」
街灯に寄り、猫を抱き抱え、目を合わせて話しかける。
その瞳はまるでレインを彷彿とさせるような澄んだ瞳で......
「ようやく見つけた、ボクのご主人様!」
「「「「......は????」」」」
俺に抱き抱えられた白い毛玉が、まじで意味不明なことを言いながら俺の顔面にダイブしてきた!
第一期終わりです!ばたばたと色々なことがありましたが、ここまで自分子書きたいことを書くことが出来、
書いていても読み返してみても楽しかったです(*ˊ˘ˋ*)
ここまで読んでくださった皆さんには大感謝! (ㅅ´꒳` )これからも変わらずどたばたな日常をお送り致しますので、是非第二期以降もご愛読のほど、よろしくお願いしますっ!(`・ω・´)ゞ
次回、新ヒロイン登場しますっ!
最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)
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