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第31話 答え合わせ

第31話 答え合わせ



「ーーー少しお話しませんか?」



昼間に散々話したというのに、まだ話し足りないのか、それとも昼間にできないような話だったのか、ヒナがそんなことを提案してくる。



「家の中じゃダメなやつ?」



「はい、出来れば2人きりでお話がしたいです」



ヒナに頼まれたことは基本断れないのは俺がシスコンだからだろうか、それともこの表情のヒナを見るのは初めてだからだろうか。


月明かりに照らされたヒナの顔はいつになく真剣だった。





ーーー



「ーーーーーもしお兄ちゃんとヒナの血が繋がってないって言ったら、お兄ちゃんはどうしますか?」



公園のベンチに腰掛けながら、先日ヒナに言われたそのような言葉を思い出す。


すぐに冗談だと言われたが、その時のヒナの紅潮した頬や耳まで赤くするほどの緊張ぶりを見た俺が、ただ俺をからかおうとして来ていると感じるほど鈍感なわけも無く。



「血が繋がってない、か......」



公園のベンチで一人座ったまま、自販機で2人分のジュースを買うヒナの背中を見ながら、そんなことを呟く。



「はい、お兄ちゃんはカフェラテでいいですよね? でもこんな遅い時間にカフェインを摂取して大丈夫なのですか?」


「いいの、明日はどうせ日曜日だし、補講もない。少し寝る時間が遅くなったって支障はないよ」



「お兄ちゃんは目を離すとすぐに昼夜逆転しちゃう人なのですから、しっかりとしてくださいっ!」



「あはは、面目ない......」



オレンジジュースを持ったヒナと乾杯しながら何気ない会話を始める。


ヒナは会話を切り出すのに少し助走が必要なのか、10分ほど他愛もない話を続ける。


準備が整ったのか、俺が公園に連れてこられた目的を考える事なぞすっかり忘れた頃に



「以前、ヒナと兄ちゃんの血が繋がってなかったらどうしますか? って聞いたことがありましたね」



突然ヒナが話を切り出してきた。


俺は飲み終えたカフェラテの缶を颯爽とゴミ箱へ投げる。


その缶は綺麗な放物線を描き、そのままゴミ箱へ......


入らずに結局自分で拾いに行った。



けれどそれで良かったのかもしれない。


こんなこと、顔を合わせながら言えるほど俺の肝は据わっていない。


俺は落ちた缶を拾い上げながら。


ヒナに言われたその日からずっと考えていたその問に対する答えを言う。




「たとえヒナと血が繋がっていなくても、ヒナはヒナだ。世界で1人の俺の妹、料理上手で、優しくて、俺のネクタイを結んでくれて、レインに説教して、マオと友達になってくれて......笑った顔が世界一可愛い、世界一の妹だよ」



「妹じゃだめなんですっ!!!」



俺が話終えるとヒナが立ち上がって大きな声で主張する。



「妹じゃ、たとえ世界で1番お兄ちゃんに好きでいて貰えても、血が繋がっていないとしても、お兄ちゃんの隣に身を置くことができないんです!!」



「ヒ、ヒナ......」



「なんでヒナはお兄ちゃんの妹になってしまったのでしょう? お兄ちゃんの妹じゃなかったら、レインさんを黙って見ていることなんてないのに! 妹じゃなかったら、私の方が先にプロポーズできたのに......!」



感情が昂ったのか、目の端に涙を浮かべ、声を震わせながらヒナが言う。



「妹じゃなかったら、とか、そんな悲しいこと言わないでくれよ。俺はヒナが妹で良かったって心から思ってるし、これまで妹のヒナに救われてきたんだ。その事を否定するなんていくらヒナでも許さないぞ」



「ーーーッ! ひっぐ......お兄ちゃんは、ずるい、です、なんでそんなこと......ヒナだってヒナのお兄ちゃんはお兄ちゃんが良いです、でもお兄ちゃんがヒナのお兄ちゃんの限り、ヒナはお兄ちゃんと結ばれることはできない......たとえ血が繋がってないとしても......えぇぇん」



泣き崩れるヒナの傍により、膝をかがめ、抱きしめる。



「ヒナの気持ちは凄く嬉しい、でも目に見える形で結ばれることにこだわらくなくても、心が結ばれてたらそれでいいんじゃないかな、って俺は思うんだ」



「......? それって、」



ヒナが落ち着くまで抱きしめ続けたあと、俺はずっと考えていた答えを思い浮かべながらも、慎重に言葉を紡ぐ。



「ヒナが大人になっても、まだ俺のことが好きでいてくれるなら、その時にまたもう一度告白してくれ。大人になるまでに色んな人と出会って、たくさんの経験を積んで、今よりももっと自分の言葉に責任が持てるようになった時にまだ俺を好きでいてくれるようなら、その時にヒナの好意を受け取るとするよ」




ヒナの好意は凄く嬉しい。


でも、まだ中学生の子供に、しかも妹に寄せられる好意は素直に受け取れない。


でも、これからもっともっと色んな人と出会い、色々な価値観を学んだ上で、それでも好きだと言ってくれるなら俺はヒナを受け入れる準備は出来ている。


ヒナは泣き止むと、すっと立ち上がり



「ーーーッ! わかり、ました。もっともっと素敵な大人の女性になっていつかレインさんから正妻の座を奪いに行きますっ!」



と全てが吹っ切れたようにとびきりの笑顔を俺に見せてくる。





月明かりに照らされたその笑顔は、太陽のように眩しかった。







ーーー



「......で、俺とヒナって本当に血、繋がってなかったんだ?」



公園からの帰り道、スルーしていたがとんでもない事実を突きつけてきたヒナに質問する。


ヒナはびくっと体を震わせながらゆっくりと話し出す。



「......はい、お兄ちゃんが覚えているか分かりませんが、ヒナはお義父さんの親友だった人のたった一人の娘だったんです。親戚も少なくおばあちゃんとおじいちゃんも亡くなってましたし、当時のヒナは頼れる人がいませんでした。そんな時、ヒナを育ててくれるって来た人が今のお父さんなんです」



淡々と今までの経緯を告げてくる。


俺は幼少の頃はなんにも考えないで過ごしていたためか、そこら辺の記憶が曖昧になってる気がする。


記憶が昔すぎるのか、思い出そうとすると変に頭痛を起こすし、その度に思い出すのは諦めていた。多分、今までの偏った食生活のせいだろう。


かといって突然増えた家族に関する記憶が抜け落ちているのは自分でもどうかと思うが......



「そっか、やっぱりあの時の質問は冗談じゃなかったんだな。あの時のヒナの顔がどうにも冗談に見えなかったから、今日までずっとその答えを考えていたんだ」



俺とヒナはこれまで互いに話せなかった内に秘めた思いを語り合う。


しばらく話しながら歩いてるといつの間にか家の前に着き、本日2度目となる帰宅をする。



「遅かったじゃない? お夕飯作っちゃったから早く食べましょー」



「ヌシら、遅いぞ! 我は腹が減って倒れそうじゃ!」



「先に食べていてくれて良かったのに......」



「だーめ! 家族なんだから、一緒にご飯食べないと」



「うむ、ヌシらととる食事はコイツと2人だけの時よりも格段に上手いからのう」



「はあ?」



「なんじゃ? やるか?」



ぎゃいぎゃいと騒がしく出迎えてくれる2人を見て、俺とヒナは思わず笑ってしまうのだった。


最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)

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