第3話
第3話
「あしたがこの世界に来た目的はね......」
ついさっきまで俺の名前を呼びながらデレデレしていたとは思えない切り替えを見せつけたレインは、ずばりと指をさしながら俺の疑問に答えた。
「あんたが何度も何度もあたしを戦わせるからあの世界で強くなりすぎて、誰も相手をしてくれなくなったからよぉ!」
「...はい?」
なんのこっちゃ。
ーーーどうやらレインの説明によると
俺がプレイしていたRPGの世界は俺が創作した時点で新たな世界として作り上げられており、そこでの俺のプレイなどで実際にレインたちは魔王を倒していたりしていたらしい。
しかも1000回もクリアしたもんだからレインのステータスがとんでもないことになっていると。
なるほど、わからん。
1000回クリアしたとはいえ毎回初期化されていたはずなのに何故ステータスの値が重複しているのかは分からないが、その1000回分重複されたステータスの力やなんやらでゲームの世界から飛び出してこれたらしい。
なるほど、わからん。
「レン、創造者が1000回中1000回もあたしを操作していたから、現実世界に干渉する力がわずかに生じて、最後の魔王を倒した時に放出された莫大なマナとその力が作用してこの世界に飛び出してきたってところね。分かった?」
「分からないということが分かった」
「真面目に聞きなさいよ!?」
分からないものは分からないのだから仕方がない。
とりあえずゲームのキャラが現実世界に出てきちゃった! くらいの認識の方がいい気がする。
じゃないと俺の脳みそがパンクしてしまう。
もうパンク寸前の脳みそだが、あと一つだけどうしても気になる情報を詰め込まなければならない。
俺はツッコミで頭を抱えているレインに向き直り最後に聞くことにした。
「......で、レインは猫チャンなの?」
「ネコ......? あぁ、さっきの姿の事ね。この世界ではあたしの世界に比べてマナの集まりがとても悪いわ。だからこうして小さくなってマナの節約をしているのよ。人の姿になるのも一苦労よ」
レインはそう言うとまた淡い光を放ちながら縮み、ドサッと落ちるパーカーの首部分から猫となった姿を現した。
「おぉ、すげえ。俺猫飼いたかったんだよなあ」
よく縦動画で猫の動画が流れてくれば必ずいいねをする。
俺は重度の猫好きでもあるのだ。
「あぁ〜この匂いたまんね〜」
「ちょ、どこ嗅いでるのよ! やめ、やめなさい! エッチ! 変態!」
レインが爪を立てて引っ掻き攻撃を繰り出してくるが、そんなのお構い無しに猫吸いを続ける。
目の前に猫がいるならば吸うしかない。
なぜならそこに猫がいるからだ。
「やめ、ほんとにやめなさい! 放しなさいってば、い、いい加減にしなさい! 『ウォーター・ボール』!」
「うぁぶ!?」
猫吸いをしていたはずの俺の顔面に突如として水の球が飛んで来、直撃した。
ずぶ濡れで状況を理解できない俺の目の前にはいつの間にか人間の姿に戻ったレインがいた。
「1回頭冷やしなさい! そういうのは、もっとちゃんと色々と段階を踏んでから......じゃないとダメなんだから!」
「すまん、猫に目がなくて...」
人間の姿に戻ったレインに水を掛けられ正気に戻った時に自分がなにをやらかしたのかを気づいた俺は、赤面しながら変なところを抑えるレインに対し平謝りすることしか出来なかった。
「てゆーか、当たり前なんだろうけど魔法とか使えるんだな。さすが異世界出身だな」
「当然でしょ? 何回魔王討伐したと思ってるのよ、こう見えてステータスはほぼ最高値に近いわ」
レインの場合俺の作ったゲームの世界出身なので異世界判定にしていいのかはグレーゾーンだが、魔法が生で見れるとは生きててよかったと本当に思う。
「なあ、魔法って俺でも使えるの?」
「......さあ? この世界はマナの集まりが悪いみたいだし。そもそもレンはあたしの世界の創造者なのでしょ? あたしの比にならないような魔法が使えるんじゃないの?」
そうか、レインにとって俺は神に等しい存在なのか。
そうなれば俺の使える魔法はさしずめプログラミングあたりになるのか。
舐めんな。
こういう時は素直に教えを乞おう
「実は俺、魔法使えないだ。だから使い方教えてくれ、頼む!」
「えっ? レンは魔法使えなかったの? なのに世界を創造することが出来るなんてすごいわね! いいわ、あたしに教えられる魔法なら教えてあげるわよ」
まじか! 全男子が憧れ、心の中で呪文を唱えていたであろう魔法が使えるとは! 異世界指導者ありがたや。
魔法を使えると聞いて目を輝かせる俺にレインが向き直り、
「じゃあ、さっそく教えるわね。まずはレンの魔力量を見なきゃ。生まれついて魔力量が低いとそもそも魔法は使えないのよね.....『鑑定』」
レインが異世界定番魔法『鑑定』と呟いた途端俺の体が淡く光だし、体の芯の部分に静電気が少し入ったような感覚を覚える。
「.....」
レインはしばらくの間無言で俺のステータス値を見つめたあと、頬を掻きながら気まづそうに目を逸らし衝撃の一言を言い放つ。
「あんた、魔力量がほとんどないわよ。これじゃ魔法は使えないわね......」
......そんなことだろうとは思ってたよ!
一瞬にして夢と希望を打ち砕かれた俺はしばらく立ち直ることはできないかもしれない。
レインはそんな俺を憐れむような目で見つめ、
「ま、まぁ毎日鍛錬を積めば魔力量も増えるはずだし.....魔力量が増えれば魔法も使えるようになるわよ!だからそんな泣きそうな顔しないでレン。期待させちゃったことは謝るから!」
魔法が使えないのはとても残念だが、レインに頭を撫でられているこの状況も悪くないと思えてきた。
第3話まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)
よろしければ☆やリアクションで応援してくれるととても励みになります!