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第28話

第28話



私は今日、この手紙を想い人に渡す。


カノジョは中学から一緒で、私と違い自分の意思を曲げずはっきりものを言う性格だ。


その性格もあってか、周囲の人はよくカノジョの事を煙たがってた。


かくいう私も、会ってばかりの時はお姉ちゃんに無理やり着せられたこの格好に対して散々言われてしまったので、少し苦手だった。


でも、目立つ格好のせいでそれを気に食わない他の子達にいじめられていた所を、誰もが見て見ぬ振りをする中、カノジョだけは助けに来てくれた。


その日からちょっといいなと思い始めた。


一度気になり始めると、今までは見てこなかった細かいコトまでも目に入ってくるようになるものだ。


日直が黒板を消し忘れていたら読書中であろうと授業が始まる前までに一人で黙々と消したり、掃除の後イスを机の上に上げられたままの人がいたら、すぐに直したり、放課後に課題を集めるよう先生に指示されずとも自らクラスメイトに声をかけたり......


一ついいな、と思うところを見つけ始めると次々と他のいいところが見えてくるのは、当たり前なことなのだろうかと思わざるを得ないくらいにはたくさんのいい所を見つけてしまう。


そんな想い人に今日、勇気をだして想いを想いを綴った手紙を渡す。


後ろを見ると親指を立てた先輩二人が私を見守ってくれている。


そう、私は独りじゃないのだ。


2人ともちょっと癖はあるけどとても優しくて頼りになる先輩で、そんな人達に応援されている以上ここで引き返すなんてできない、してはいけない。


意を決して教室に入るとカノジョは独り、いつものようにみんなが提出する分の課題をまとめていた。


そんないつも通りのカノジョの元へ近づくと



「チナツちゃん......?今日はもう帰ったんじゃなかったの?」



私の気配に気づき振り向いたカノジョが言ってくる。



「あ、あぁちょっと忘れ物しちゃってね...... ヨチちゃんも、まだ帰ってなかったんだ」



こちらから話しかける予定だったが、カノジョ、

市井 ヨチ に先手を取られる。



「何言ってるの?私が提出物まとめるの手伝ってって言ったのに、用事があるって言ってそそくさと帰ったのはチナツちゃんじゃんっ」



「あ、そういえばそうだった......」



「もう、人の話はちゃんと聞いてよね」



「ご、ごめんヨチちゃん......今からでも手伝える?」



「もう終わったよ〜、でも、職員室まで一緒に持って行こっか」



「う、うん」



他愛もない会話をしながら2人で職員室へと向かう。


手紙を渡すだけ、そう思うと自然と気持ちも軽くなり、前までなら緊張でできなかったであろう会話を弾ませる。


提出物を運び終え、来た道をもどる。


普段はキリッとしてるのに笑っている顔はとても優しくて、こんな私との会話でもたくさん反応をしてくれる。


あぁ、私ってこんなにヨチちゃんのことが好きだったんだ。


そう思うと、自然な会話の流れのまま、口が完全に閉まっていない蛇口から水滴が落ちるように、ポツリと誘いの言葉が出てくる。



「ヨチちゃん、後夜祭一緒に踊れないかな?」



「......え?、それって......」



あまりに自然な誘いにヨチちゃんは少し戸惑うように私の顔を見て固まる。


自分でも不思議なくらいに自然に口からこぼれ落ちた言葉に、途端に恥ずかしさが込み上げる。


そうだ。手紙を渡さないと意味が無い。



「返事はこの手紙を見てからちょうだいっ! それじゃ、また明日!!」



「えっ!? ちょっ、チナツちゃん待っ」



ヨチちゃんの言葉を最後まで聞くことなく私はその場を後にしてしまった。







ーーーこの学校で後夜祭のダンスに人を誘うことの意味など新入生の私が知るはずもなく。


最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)

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