第26話
第26話
「お、おはよ、レン」
朝目が覚めると一晩寝たことですっきりとしたのか、昨日のこと自分の行いを思い出し悶絶するレインがいた。
いくら怖かったとはいえ、ひっつきながら風呂まで一緒に入ってしまったことはレインには相当応えたらしい。
「その、昨日のことは忘れて......」
もじもじとしながら言うレインに一言。
「お前、俺の事エッチだのヘンタイだの罵る前に自分が相当な痴女だってことを自覚しろよな」
「ーーーッ! こ、今回ばかりは何も言えないわ......」
諦めたのかはぁと深くため息をつきながらレインは洗面所へと向かうのだった。
ーーー
今日もこれといったイベントもなく、無事に放課後を迎えることが出来た。
いつもと変わりない、至って普通の一日を終えると、俺とレインは昨日と同じように第2会議室にて相談に来る人を待っていた。
強いて起きた事件をあげるとするならば、昨日の風呂での出来事を見ていたのか、朝食事をしている時にヒナとマオに散々問い詰められたことくらいだ。
おかげで朝からどっと疲れたので今日は何事も起こらないことを祈ることしか出来ない。
「お願いだから誰も来るなよ......」
「あ、あんたね.....」
俺が膝をつき手を合わせ扉に向かって祈り始めるとレインがまじかよみたいな顔で見てくる。
身近なものに神様が宿る日本の文化を知らないのかよ。
「あのー、トラブル対策部ってここで会ってますか? ってひゃあ!?」
なんなら扉の前で土下座までカマしていると扉が開き、誰かが入ってくる。
神は死んだのかと思いつつ、面倒事を運んで来たヤツの面を拝もうと顔を上げると......
「わあ、大人な女性ですね.....」
あまりに短すぎるんじゃないかというくらい短いスカートの中から覗く、黒色の布と目が合ってしまった。
「な、なんで扉の前で土下座していたんですか!? ここは対策部じゃないんですか!? パンツ覗き部の間違いじゃないんですか!?」
顔を真っ赤にしながらスカートを抑え、立派な双丘を激しく揺らしながら激昂するのは、明るい髪色におでこを出した、センターパートの髪型によく似合う可愛らしい顔をした女の子だった。
「やはり神は生きていた......」
やはり日本の神様は俺たちの身近に宿っているらしい。
俺は黒の布を拝めたことを神に感謝しながらもその女子生徒に謝り倒し、椅子にかけることを勧める。
その女子生徒は目の端に涙をうかべていたが、文句を言いながらも椅子へと腰掛けてくれた。
「で、トラブル対策部になんの用かしら? 旧校舎関係じゃなければ相談に乗るわよ」
「旧校舎関係じゃないです、実は先輩たちに折り入って相談したいことがあって......」
どうやらその女子生徒は1年生で俺たちの後輩にあたるらしかった。
彼女の名前は 天宿 チナツ どうやらポニーテルの天宿サヤ先輩の妹らしいが、短いスカート丈にカッターシャツはへその辺でリボンのように結んでいる格好で、サヤ先輩とは対照的に性格は真面目っぽく恥ずかしがり屋さんらしい。
「なんで恥ずかしがり屋さんなのにそんな格好ができるの?」
レインそう聞くとチナツちゃんはどこか遠い目をして語り出す。
「お、お姉ちゃんが私はこの格好が似合うって無理やり着せてきたんです......予備のスカートまで丈は全部この長さに切られたし、同じ学校に通ってるから私が大人しい格好をしようもんなら廊下だろうが問答無用で改造しようと襲いかかってくるのでしょうがないんです......」
き、気の毒に......
もう諦めが着いているのか、どこか遠い目をしながらそう語るチナツちゃんは見た目とは違い苦労人らしい。
「で、用件はなんだ? できるだけ面倒くさくないやつで頼むよ」
俺が切り出すとチナツちゃんは
「はい、相談したいことなんですけど、実は後夜祭に誘いたい子がいるので手伝っていただければと......」
頬を赤く染めながらそんなことを言ってくる。
ここは恋愛相談するような場所じゃないんだぞ......
面倒くさそうな案件なので俺が断ろうとすると、目の前にレインが割って入って来、それを阻止するように声高らかに言う。
「わかったわ! 好きな人がいるのね、協力してあげるわよ! レン、いいわよね?」
「えっ? いいんですか? 言っておいてなんだったんですけど断られちゃうかと思ってました......」
そう言いながら安心したように笑みを浮かべるチナツちゃんと自信満々なレインの顔を見ていると、断れるはずもなく.......
「......しょうがねーなあ」
と相談に乗ることにするのだった。
ーーー
「まずその子がどんな子なのか教えてくれ」
チナツちゃんが想い人を上手く後夜祭に誘えるようにするためにはまず相手の子の性格や人となりを知る必要がある。
仮にも関わりのある先輩の妹なのだから変なヤツとは付き合わせたくないと思うのが道理だ。
思い悩むチナツちゃんがかわいいからという訳では無い。決して。
「はい、その子は中学から一緒で、とても仲良くしてくれている子なんです。性格は私よりも真面目なんですけど、はっきりと物を言えない私と違ってズバズバ言いたいことを言っているのでとても尊敬してますしそんな所を好き、になったん、です......」
言いながら顔を段々と赤くしていくチナツちゃんはまさに恋する乙女である。
「相手のことを想うと胸がドキドキしてどうしようもなくなっちゃ気持ちすごーくわかるわ、チナツちゃん!」
「先輩も同士だったんですね!」
恋に生き、恋に青春の全てをかける女子高生二人は意気投合したのか固い握手を交わしている。
チナツちゃんの想い人がとりあえずは変なやつじゃなさそうで安心した。
俺はそんな2人に向かって人差し指をピンと立てると
「まずは普通に後夜祭に誘うってのはどうなんだ?」
とチナツちゃんに問う。
「それを出来たらいいんですけどね......日常会話なら難なくできるんですけど、後夜祭に誘おうって決意して話しかけると、途端に言葉が出てこなくなっちゃうんです」
「なるほど、確かに好きな人に素直に想いを伝えるのってホントに苦労するわよね......」
「やっぱり先輩は同士です、こんな話お姉ちゃんにできるわけも無いのでレイン先輩がいて良かったです! ところで先輩の好きな人って.....」
チナツちゃんがそんなことを言いながらチラチラと俺 の方を見てくる。
そう聞かれたレインは嬉しいかったのかテンション高めに答える。
「あぁ、好きな人はそこにいるレンだし、あたしのダーリンよ!」
「ダーリンです」
「先輩の裏切り者!」
「ええっ!?」
同士からの裏切り者扱いが相当ショックだったのか固まるレインは交わしていた固い握手の手がほどかれる。
チナツちゃんは恋人同士の俺たちを裏切り者判定したようだった。
「うう、信じてたのに......彼氏がいたなんて......」
「彼氏じゃないわ、ダーリンだって!」
「もっと上じゃないですか!先輩はやっぱり裏切り者です!」
「ええっ!?」
涙を流すチナツちゃんを慰めながら再び固まるレインも同時に慰める。
取り乱す2人をなんとか落ち着かせ、話の続きをすることにした。
「直接誘うのが無理ってならイソスタとかでメッセージで誘ったらどうだ?」
「なるほど、メッセージで送れば緊張で噛んじゃったりすることもないし一番画期的な方法かもしれないわね.....」
俺の意見に感心したようにレインが頷く。
何も直接誘う必要は無いのだ、文面で送れば送る前に自分で色々と添削できるしセリフを噛んじゃったりすることもない。
何より一番緊張する要因であろう相手の顔を見る必要が無いのだ。
そう言うと千夏ちゃんはバツが悪そうに俯いたままま答える。
「相手の子はイソスタとか今どき流行っているSNS全般やってないどころか、スマホすら持ってないんです......」
......
「マジ?」
「マジです」
今どきスマホ持ってない高校生とかいるのか、そんなのマジで絶滅危惧種くらい珍しいぞ。
だって異世界から来たレインとマオでさえもスマホを扱っているのにこの世界の、しかも高校生がスマホもってないとか有り得るのか。
ここは私立だから経済的に厳しいってわけでもないだろうに。
俺が衝撃を受けているとその顔を見て察したのか
「相手の子、ご両親が厳しくて門限とかもあるみたいなんです」
チナツちゃんが付け足して説明をしてくれた。
なるほど、親の教育方針ってやつか。
「そうなるといよいよ難しいな......」
俺とチナツちゃんが共にうーんと頭を悩ませていると
「あたしに良い考えがあるわ!」
胸に手を当てたレインが自信満々にそう言ってきた。
最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)
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