第19話 友だち
第19話 友だち
それから魔王さんとリビングでお話をする事にしました。
「お友達になる一番最初のステップといえば、ズバリ自己紹介です!」
「う、うむ!」
魔王さんと向かい合って座っている私は姿勢をピシッと正す魔王さんに向かって
「私は川崎ヒナです、15歳の中学三年生で好きなモノはお兄ちゃんとネコチャン、趣味はお料理です!はい、次魔王さん」
「ぬぇっ!?」
私が足早に自己紹介を終え、魔王さんに自己紹介のバトンを渡すと魔王さんは少し驚きながらも自己紹介をはじめる。
「わ、我は魔王だ、個体名は無い.....。歳は100を超えた辺りからは数えていない、好きなモノ.....好きなモノは人間じゃ。アイツらの絶望の感情からしか得られないぶっキマルモノは他のどの事象よりも至極愉悦じゃ! 趣味は人間狩りじゃな、よろしく頼むぞ!」
本当によろしくしたいのかどうか分からない物騒すぎることを言いながら、人間である私に向かって魔王さんは手を差し出してくる。
私は若干表情を引きつかせながらも差し出されてきた手に素直に応じ、固い握手を交わす。
「あはは、魔王ジョークってヤツですよね.....とても面白いと思いますが、初対面の人にそれをやると友達になってくれない可能性が高いので、やめておいた方がいいと思います.....、それよりも個体名がないって言うことは名前がないってことですよね? ずっと魔王さんって呼ぶのも気が引けるし.....うーん、どうしよう」
冷や汗をかきながらも、魔王さんとより親密な関係を築くために愛称か呼び名的なモノは無いかと思考を巡らす。
「別に冗談じゃないし、魔界では結構ウケてたのじゃが.....」
そう言いながら魔王さんはしょんぼりとしてしまう。
目の前に人間が居るのに趣味を人間狩りと言ってしまうのはやはり常識の違い、いや種族の違いというやつなのですかね.....
魔王さんはお兄ちゃんやレインさんにも魔王と呼ばれているからあまりかけ離れすぎた名前だとかえって言いづらくなってしまうし.....
「うーん、魔王、マオウ、マオ、ウ.....、決めました! 魔王さんは今日からマオという名前で呼ぶことにしましょう!」
そう魔王さんに言ってみると
「なっ、我に名前、じゃと!?」
顔を赤くした魔王さんが勢いよく座っていた椅子から立ち上がり、唇をわなわなと震わせていた。
「あ、やっぱりダメでしたよね! ごめんなさい、魔王さんは魔王なのに気軽に読んでしまって、改めますね」
「だ、ダメとは言ってないじゃろう!ただ、名などつけられ親しく呼ばれたのは初めてでな.....」
そう言ったマオちゃんは100歳をゆうに超えてるような大人の余裕という感じではなく、見た目通り年相応の恥ずかしが方をしていました。
「ーー!マオちゃんは可愛いです、これから一緒に色々なことをして遊びましょう、友達なので!」
マオちゃんのあまりのいじらしさに我慢できなくなった私は思わずマオちゃんに抱きつく。
マオちゃんはひゃっと可愛い悲鳴をだしながらも私の背中に手を回してくれて
「う、うむ。よろしく頼むのじゃ.....」
と小さな声で照れているように言ってきました。
ーーー
「「ただまー」」
「あ、お帰りなさいお兄ちゃん、レインさん」
祝日なのに学校に登校させられていた俺とレインが帰宅すると、玄関までヒナが出迎えに来てくれる。
ヒナはすっかり昨晩のことなど気にしていない様子で、俺とレインの鞄を預かってくれる。
俺だけ悶々とした気持ちで過ごしていたのが馬鹿らしくなるほどヒナは特に何も気にしていない素振りで接してくる。
この分だと本当に昨晩のことは冗談だったと捉えてよさそうだ。
レインと一緒に手洗いうがいをすませ、リビングへと入るとキッチンで夕飯の準備をしているヒナとその横で興味深そうにその様子を眺める魔王の姿があった。
2人はとても仲睦まじげな様子で料理をしている。
「今日一日でだいぶ仲良くなったな」
俺がそう言うとヒナは嬉しそうに
「はい、今日1日たくさんお話してお友達になりました! あ、お兄ちゃんとレインさんに紹介します、私のお友達の魔王さん改めマオちゃんです!」
「「マオちゃん.....?」」
どうやらヒナは魔王にマオという名付けを行ったらしい。
魔王だから頭の2文字をとってマオか....ちょっと安直すぎるんじゃないかと思ったが魔王、マオも満足そうなので特に何も言わなかった。
確かにレインと違って魔王には魔王としか名付けていなかったことを思い出す。
「マオ.....まぁ、いいんじゃないかしら? こっちの世界で魔王のことを魔王って呼び続けるのも変だし、あんたもあたしの事は勇者じゃなくてレインって呼びなさいよね」
「うむ、わかったのじゃ。ゆう、レ、レイン!」
マオとレインは本当に宿敵同士なのかと疑うほどにすんなりとその状況を受け入れ、会話をしていた。
「ほらほら、お兄ちゃんもマオちゃんって呼んであげて下さい!」
ヒナがそんなことを言いながら俺の背中を押す。
マオは俺の目の前まで来るともじもじとしながら上目遣いで俺を見てくる。
少し背伸びをしたら2本のツノに刺されそうなほど近い距離まで来ると
俺とマオの距離感に嫉妬したのかはっとした表情のレインが俺とマオの間に入ってこようとするが、それをヒナが制止する。
「よ、よろしくな。マオ」
面と向かって女の子の名前を呼ぶのに若干緊張しながらも俺が言うと
「よ、よろしくなのじゃ、レンよ」
マオは八重歯をしっかりと見せつけるほどいい笑顔でそう答えた。
途端マオの体が淡く光だし、思わず目を瞑る。
「な、なんだ!? なんかの魔法か!?」
少しの間光ったと思ったマオの体は一瞬にして収まり、目を開けるとそこにあったはずのツノがなくなっていることに気づく。
見下ろすと前までよりも若干穏やかになったような雰囲気のマオがおり、マオが見つめるその先にはマオ自身の露出された腹部があり、そこには今までになかったような紋章が刻まれている。
あちゃーとおでこに手を当て、やらかした時のような表情のレインが一言。
「マオ、あんた今奴隷契約結んじゃったわよ」
「「「え?」」」
.....
え?
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