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第16話 魔王参上!

第16話 魔王参上!


5月某日河川敷で魔王を発見した。


河川敷にちょこんと座っているその姿は、まるで一見すると小学生ほどの身長しかない幼女にしか見えないが、よく見ると頭に歪なツノを2本生やしている。


今の日本ではコスプレ文化がだいぶ浸透しているおかげか、周囲を通る人々は特にその娘を気に止める様子はない。


せいぜい面白がって写真をとっているような人が数人いる程度だ。


とても哀愁漂うその後ろ姿は到底俺の作り出した最強の魔王だとは思えないが、俺の手を握り普段見せないようなレインの鬼気迫る顔を見ると、本当に魔王なんだなと理解する。



「どうする? レイン。放っておいたら厄介なコトになりそうだし、俺としてはポーションを回収した時みたいにさっさと家まで連れて帰りたいんだが」



俺が冷や汗を垂らしているレインの顔色を伺いながら問うと、レインはしばらく悩んだ後、仕方ないと言って俺の手を取り、厳しめの口調で言う。



「いいわね、レン。絶対あたしから離れちゃダメよ。何かあった時にいちばん安全ところはあたしの側だから。念の為結界魔法も掛けておくわ、『プロテクト』」



レインが魔法を唱えると俺の体に光の膜のようなものが張り巡らせられるが、その膜は一瞬にして見えなくなる。



「それがあれば大抵の事は大丈夫なはずだから。それじゃあ、行くわよ」



いつになく真剣な表情のレインに俺も思わず緊張してしまう。


気のせいか、いつもなら温もりや優しさがあるレインの手はわずかに震え、力強く握りってきた。


レインの感情が伝染するように俺もレインの手を力強く握り返す。


そうしているうちに魔王と思われる後ろ姿はいつのまにか手を伸ばせば届きそうな距離まで近づいていた。



......



なるほど、これは魔王ですわ。


遠くからはあまり分からなかったが、近づくとレインとはまた別格の禍々しいオーラが半端ない。


いつの日か見たレインの『アイテムボックス』に入っているあのヤバそうな本のオーラと比べてダンチでレベルがちがう。


心無しか魔王の座っている付近の植物が枯れかけているようにも見える。


近づいてきた俺たちの気配に気づいたのか、魔王はゆっくりと振り返り俺たちを見る。


その顔は魔王という名前が付いてしまっているのはもったいないと思えるくらいに可愛らしい顔だった。


髪は綺麗な銀髪のツインテールで大きな赤色の瞳をもち、口元からは小さく八重歯のようなものが覗いている。


見た目の年齢相応の可愛さを持つ魔王だったが、その瞳は絶望に打ちひしがれたようなモノで、体から放たれるオーラとは真逆に瞳には全く覇気や敵意は感じられなかった。


そんな様子にレインも思うところがあったのか



「ちょっと、あんた魔王でしょ? なに腑抜けた面してるのよ。こっちの世界はあんたみたいなのは来ちゃいけないの、元の世界に帰りなさい」



とレインがずんずんと魔王に近づいて言う。


魔王はそんなレインを一瞥すると



「いやじゃ、あんな世界二度と帰らないのじゃ。暗い空間に一人ぼっちで取り残され永遠に一瞬にして狩り続けられる人の気持ち考えたことあるのか?」



魔王はレインに強く反抗し早口でまくし立てる。


その目は据わっていて傍から見てる分でもとても怖い。



「あれは、仕方ないじゃない。不可抗力というやつよ。あんたがあっちの世界の平和を脅かさなければあたしもあんな事する必要なかったんだからね?」



「ぐ、そ、それはだって仕方ないのじゃ! ヌシら人間が生きるために家畜や植物を喰らうように、我々魔族も生きるために人間を喰らう必要があったのじゃ!」



「嘘つきなさい、あんた達魔族は魔力さえあれば生きていける種族のはずよ。人間を狩っていたのは遊びみたいなモノでしょう? それにあたしは何度もあんたを説得しようとしたわ。それでも断り続けるからよ」



そういえばそんな設定も作ったな。


魔族は魔力があれば生きていけるし人間は面白半分で殺す種族......


よくある設定だと思っていたが、それが実際にあると考えるとかなりえげつない設定で作ってしまった。


レインとぎゃいぎゃい言い合いをする魔王の姿は先程までの威厳というか禍々しさは感じられず、ただの年相応の幼女にしか見えなかった。


ヒナにもこんなに可愛い時代があったな......


その頃から相変わらずお兄ちゃんっ子でずっと俺の後ろをひょこひょこ付いてきていたなあ。


とそんな俺の妄想ふけっている視線に気づいたのか、魔王は



「なんじゃ? ヌシ、魔王である我をそのような下卑た視線でジロジロと見るものではないぞ」



「み、見てないわ!」



「レン、魔王とはいえ流石にこんな年端もいかない少女に変な妄想をするのはやめておきなさい」



「だから見てないって!」



俺のヒナとの思い出に浸る崇高な視線を勘違いした2人が俺に対し軽蔑する目を向けてくる。



「......?ヌシ、結界魔法が使えるのか? ヌシもこちら側の世界の住人じゃったのか」



「いや、この人はあたしたちの世界の住人じゃないわ。この人はこの世界に住んでる人、そしてあたしたちの世界を創造した創造者なのよ」



「ッ!?」



魔王がお前が!? といわんばかりの表情で俺の事を凝視してくる。



「信じられないかもしれないけど本当だよ」



俺は今までの経緯を魔王にも話してやることにした。





ーーー


話を終えるとすっかり日も落ち、辺りは暗くなってしまっていた。



「勇者も言っていたように本当に創造者なのじゃな......てっきり創造者はもっと屈強そうな奴かと思っていたのじゃが、我の魔眼によると嘘を言っていないことは一目瞭然なのじゃ。信じるとするのじゃ」



魔王は自らの右目を大きく見開き瞳の中に紋章のようなものを浮かばせながらそう言う。



「てか最初に会った時から思ってたんだけどさ、」



俺が魔王にあることを尋ねようとその大きな瞳に魅入られそうになりながらも言うと、魔王は「うん? 」と首を傾げて続きの言葉を待つ。



「魔王はなんでそんなにちっこくなってるの?」



「.....」



俺の疑問に魔王はすんと押し黙る。


そう、俺の創ったはずの魔王はもっとお姉さんキャラでなおかつ立派な双丘をお持ちになっているはずなのだ。


俺の好みはレインのようなスレンダーな体型だが、俺の作ったゲームをプレイしてくれる人にはきちんと楽しんで欲しいため、敵キャラの胸は男の子の夢と理想を詰め込んだようなバストに設定していたはずだ。


お陰で俺のゲームは毎作主人公は貧乳で敵が巨乳ばかりのため多くの巨乳マニアから「敵を倒すことが出来ない」 などと苦情が寄せられたものだ。


それでも毎作売れていたのは、たくさんの貧乳マニアの方々のお陰でもある。


魔王は俺の質問にやっと答える気になったのか、ようやく口を開くと



「そこの勇者にポンポンポンポン倒されまくったお陰でこの形を維持するのがやっとなくらいまでに魔力が減ってしまったのじゃ!」



魔王はレインを指さしながらそう答えた。


最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)

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