第13話 とびっきりの笑顔を君に
第13話 とびっきりの笑顔を君に
レインが俺のことをダーリンだとか言い放ってしまったせいでその後はとても大変だった。
レインのみならず俺までもが質問攻めにあってしまったのだ。
最初こそは誰なのかとかなんで休んでたのとか言われていたが、単に学校のことを忘れていたとは言える訳もなく、家庭の事情で2週間学校にこれなかっただけだと言ったらすんなりと納得してくれた。
少しだけ良心が傷んだが、仕方ない。
「つ、疲れた。疲れすぎた......」
「どうしたのよレン、あなたらしくないわね。いつもならまだまだ元気な時間帯じゃない。どうしてそんなに疲れているのかしら?」
そう言いながら俺と2人で昼食をとろうと、ヒナに作ってもらった弁当箱を取り出しながらレインが言う。
レインが俺と結婚しているだとか、一緒に住んでるだとか......爆弾発言をしまくったせいで授業が終わる度にクラス中から質問攻めに会い、授業間の休み時間で席から一歩も離れられないというとても散々な目にあってしまった。
流石に昼休みまでそんな目に会いたくないので4限目が終わるとレインの手を引き爆速で教室から退散し、屋上へ登るための階段へと避難していた。
屋上は開放されていないので実質この場所が校舎で1番高い場所になる。
レインは俺から手を握ったことがよほど嬉しかったらしく、先程からずっとご機嫌だし、なんなら離そうとした俺の手を離すまいとまだ握り続けている。
唯一自由に動かせることの出来る左手で器用にヒナの作った弁当を食っていると
「片手だけじゃ食べづらいわね.....」
と右手だけで弁当を食べようとしているレインが当たり前のことを言ってくる。
「当たり前だろ、いい加減離せよ。片手だけだと食いづらいだろ」
「いやよ、何言ってるの? せっかくレンから握ってくれたのに離すわけないじゃない」
レインはまるで俺の方が間違っていると言わんばかりの表情で言ってくる。
こいつは大概おかしい言動ばかりとるが俺が絡むと何故かその奇行がエスカレートしてしまうようだ。
握力も体力テストで平均以下しかとったことのない俺がステータス完ストのレインに適う訳もなく、されるがままに手を握られ続けることしかできない。
「そうだ、いいこと思いついたわ!」
頭に! マークを浮かべたレインはそう言うと右手で器用に箸を扱い、つまんだ玉子を俺の口に向かって差し出してくる。
「あーん、よ、レン。こうしてお互いに食べさせ合えば難なくヒナのお弁当を食べることが出来るわ!」
手を離せばそんな面倒をせずとも弁当を食べることができるというのに、レインはどうしても離したくないらしい。
レインにあーんされながらヒナの作った料理を食べる。
.....楽園はここにあったのか
「ちょ、レン? なんで泣いてるの!?」
楽園へとたどり着いた俺は何故か溢れ出す涙をとめることができなかった。
レインと互いの弁当を食べさせあっている途中
「そういえば、俺の箸ちょっと使ってたからこれ間接キスになるな」
「!?」
と俺がふと思い出したことを言う。
レインがあーんしてくれる前に俺は左手で少しだけ弁当を食べていた。
その箸を使ってそのままレインにあーんしていたのでこれは俗に言う間接キスというやつに当たるのだ。
まぁレインには頬にちゅーしてもらったこともあるしそんなの今更か。
俺が構わずあーんを続行しようとすると
「.....ッ」
レインはさっきまで何ともなかったのに見る見るうちに顔を赤くしていき、
「や、やっぱり自分で食べることにするわ!」
と言い握っていた手を離し、さっきまで俺にあーんしていた箸で残っているおかずをぱくぱくと食べ始める
.....
「そっちの箸使っても間接キスなのは変わらないんだけどな」
「!?」
ぽんこつ過ぎて心配になるレベルだが、レインは顔を赤くしながらも弁当を食べ進める。
俺はさっきまでレインに握られていた手の温もりが薄れていくことに少しだけ名残惜しさを感じながらも、残った弁当を食べ進めた。
弁当を食べ終わると俺はレインに校舎を案内することにした。
レインは良くも悪くも目立つ外見なので昼休みに歩いていると、中庭などで昼食をとっている生徒たちからむちゃくちゃ見られる。
あまりの目立ちっぷりと美少女っぷりに当然ナンパをしようとする輩も現れるわけで......
「キミ可愛いね、何年生? イソスタ繋がろーよ」
と明らかに遊んでそうな屈強な3年生に声をかけられる。
一応俺が隣にいるのだが、運動部が無駄に多くトレーニング室も充実しているうちの学校の上級生は3年間培った筋肉で無駄にゴツイため、ひょろひょろの俺なんか眼中に無いらしい。
「褒めてくれるのは嬉しけれど、イソスタ? ってなにかしら?」
「今どきイソスタ知らない女子高生とかいないって、いいだろイソスタぐらい教えてくれよ」
イソスタは比較的最近開発されたアプリでそのマッチョが言うように今どき高校生でそのアプリを使っていないという人はいないだろう。
レインの場合はそもそもスマホがなんなのかすら分かっていないレベルだから嘘は言っていない。
その後も知らぬ存ぜぬを突き通すレインにしつこく話しかけてくるので、俺が間に入り本当に知らないんですと言ったところ
「誰? お前、彼氏でもなんでもないなら引っ込んでろよ」
自分よりもでかいマッチョに威圧されると少しチビってしまいそうだ。
こいつの言動にカチンとくるが、喧嘩してもぜったいに敵わないのでどうにか穏便に済ませようとする
「しつけーんだよ、誰だよお前、俺はこの子に用があるんだよお前ぢゃねー!」
とマッチョが俺の胸ぐらを掴んでくる。
おいおいおいこれはヤバイ、足ちょっと浮いてるし、投げ飛ばされたりしたらたまったもんじゃない
「お、お、落ち着いてください。彼女本当に知らないんです。イソスタどころかスマホすら知らないレベルなんです」
「なわけねーだろ、原始人かなんかなのかよ!お前もどうせ彼氏でもなんでもないくせに間に入ってくんなよ」
「俺はこの子の夫だ」
「舐めんな」
俺が真顔で答えると、馬鹿にしていると勘違いしたのかマッチョの機嫌がどんどん悪くなっていく。
別にふざけてないのに.....
「舐めやがって.....少し痛い目見ないと状況が分からないようだな?」
そう言うとマッチョは俺の胸ぐらを掴んだままどんどんと持ち上げ、とうとう足が地面につかなくなる。
今にも俺を投げ飛ばしそうなマッチョの形相に思わず目を瞑ってしまうと
「やめなさい! レンにケガさせたらタダじゃおかないんだから!」
「タダじゃおかない? へ、そんなヒョロヒョロの手足でなにができるって言うんだ......って痛! い、痛い痛い痛い、離せ!」
レインが俺を持ち上げるマッチョの右手の腕の筋肉をちまっと摘み、軽くひねっていた。
少し捻っていただけのように見えたが、余程痛かったのか、マッチョはすぐに俺の胸ぐらを掴んでいた手を離す。
尻もちを着く体勢で落ちそうになる俺をレインが華麗にお姫様抱っこをし救ってくれる。
「大丈夫? レン。ケガとかしてない?」
やだ、レインさんったらカッコイイ! 乙女になっちゃうわ!
まさか人生でお姫様抱っこされる日が来るとは。
至近距離でのレインの顔に思わず見惚れていると
「そ、そんなに見ないで!て、照れるから.....」
王子様かと思ったがやはりレインはお姫様だったらしい。
カッコよくて可愛いレインの一面に改めて惚れ直していると
「痛すぎだろ.....その細い手のどこにこんな力があるんだ......?」
レインに捻られた箇所を抑えながらマッチョが膝を着いた状態で話し出す。
レインに捻られた箇所をよく見てみると青紫色に変色していた。
......レインさん怖えー
俺がレインの馬鹿力にドン引きしていると
「もっと痛い目にあいたくないのならさっさと行きなさい! レンに手をだしたら承知しないんだから! ほら早く行って、しっ、しっ!」
「ちくしょう! お、覚えてろよーー!」
マッチョは体格に似合わず3流の悪党のような捨て台詞を吐いてどこかへと逃げてしまった。
マッチョが見えなくなるまでレインはしっ、しっ! と言いながら手を仰いでいた。
ーーー
「レン、本当に大丈夫? ケガとかしてないわよね?」
「大丈夫だって、少しネクタイが緩んだくらいだから」
レインはベンチに座っている俺を申し訳なさそうに介抱している。
「ごめんね、あたしがレンと一緒に学校に行きたいなんて言ったから.....」
レインは自分のせいで俺を巻き込んだと思い、罪悪感を感じているらしい。
しゅんとなっているレインの頭を撫でながら
「本当に大丈夫だって、それにレインのせいでもないよ。レインが可愛くて他の男からナンパされるなんてちょっと考えれば分かるはずだった。それなのに呑気に校舎案内をしていたのは俺の方なんだから。だからレイン、そんなに気にするなよ」
「でも...むぐっ」
まだなにか言いたげのレインの口が開かないよう、
ほっぺたをむぎゅっとさせる。
「それ以上なにも言うなよ。お前が罪悪感を感じる必要なんかない。ただ、レインが俺以外の男と話してるのについ嫉妬して俺がその男に喧嘩を吹っかけた。
そして負けたけど、レインに助けられた。以上! この話終わり!」
俺がしんみりとした空気を終わらせるため早口で説明し終えたあとレインのほっぺたを解放し、パンっと手を叩く。
レインはほっぺたをむにむにとさせながらも、俺の話を理解してくれたのかにっこりと笑って
「ありがとう、レン.....大好き!」
そう言ったレインはベンチに座る俺の唇を奪うと、今まで見た中で一番の笑顔を見せた。
最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)
よろしければ☆やリアクションで応援してくれるととても励みになります!




