第11話
第11話
高校2年生へ進級し、2年生としては初めてとなる高校の制服へと袖を通す。
俺の通っている私立城西高校は部活動において様々な功績を挙げているほとんど部活がメインのような高校だ。
大学へ行くやつはその部活の推薦で行くため偏差値自体はそれほど高くない。
だからあまり勉強のしていない俺でも合格を掴み取る事ができたのだ。
ヒナに洗濯とアイロンがけをしてもらい新品同様の輝きを放つブレザーを羽織り、ネクタイをヒナに締めてもらおうと玄関から出る前にヒナの元へと行く。
自分でネクタイが締めれない訳では無いが、俺が結ぶのとヒナが結ぶのではカッコ良さが段違いなのだ。
俺がヒナにそう頼み込むと、弁当箱を3つ用意していたヒナが
「仕方ないですね.....」
と言いながらも、どこか機嫌が良さそうに俺のネクタイを触り始める。
レインよりよっぽど新妻らしいことやってくれてるなとヒナをぼけーと見つめていると、 裸足で廊下をパタパタと走る音が聞こえ、バタンとリビングの扉が開かれる。
「レン! どう? 似合っいるかしら?」
リビングに現れたのは俺の高校の制服に身を包んだレインだった。
なお靴下は履かず裸足だが。
「おぉー似合ってる似合ってる。流石美少女だな。
.....ん? なんでレインが城西の制服着てるんだ?」
「それはですねお兄ちゃん。レインさんにも城西に通ってもらうになったからなのですよ」
「そうよ、レン! これからガッコウ? というものに一緒に行くのよ!」
.....待て待て展開が急すぎてお兄ちゃん頭が追いつかない。
制服を着て目を輝かせるレイン
全てを知っているようなヒナ
何も知らない俺
......
「お前かぁあぁあ!」
「あぁ、動かないでくださいお兄ちゃん! せっかく上手く結べそうなのに台無しになってしまいます!」
俺はネクタイを結んでいるヒナの肩を激しく揺らした。
......全ては昨日の内に済ませてあったらしい。
俺とレインの話を聞いたヒナはそのあと速攻親父と連絡をとり、全ての事情を話した上でレインを城西に通わせるように取り付けたらしい。
レイン用の制服やその他必要なものも全て昨日のうちに買い揃え、俺を驚かそうした、と。
ちなみに入学に必要な書類やらなんやらは全て親父に丸投げ、学費も親父持ちだ。
可哀想に我が父よ.....国が違えど泣いている親父の顔が目に浮かぶ。
と、そんなこんなでレインは今日から転校生として俺と一緒の城西に通うことになった。
この世界の常識に疎いレインが急に日本の女子高校生として生活を送っていくるのかどうか不安しかないが、俺の隣をとても幸せそうに歩くレインの顔を見ていると、まあなんとかなるかとつい楽観的な思考に陥ってしまう。
レインは登校の道すがら塀の上に丸々野良猫を撫でたりおはようと挨拶をしてくるおばちゃんに元気よく挨拶を返している。
俺がレインの通学を認めざるを得なかった理由はもう一つある。
朝、
「せっかく上手く結べそうだったのに.....」
と言いながらくしゃくしゃになった俺のネクタイをもう一度結び直そうとするヒナの頭を見ながら
「なぁ、なんでレインを城西に通わせることにしたんだ? あいつなら基本的にごろごろしてるだけだから家に留守番でもさせとけばいいのに」
と俺が言うと、ヒナははぁとため息をつきながら
「いいですかお兄ちゃん、そんなことはあってはならないのです。事故みたいなものとはいえ、レインさんがこの世界に来てしまったのは、お兄ちゃんのせいと言っても過言ではないのです! レインさんは年齢もお兄ちゃんと同じような歳なので青春を謳歌する義務があるのです! そしてお兄ちゃんの奥様になる女性なら尚更この世界の常識に早く慣れた方が良いに決まってるのです!」
青春を謳歌するのは義務ではなくて権利だし何をしようが自由だとは思うが、やや思想は強いもののヒナの言っていることは正論なので頷いて納得する。
「それに、レインさんが城西に通うことでお兄ちゃんにもメリットがあるんですよ?」
「メリット? レインが城西に来ることで何のメリットがあるんだ?」
「1つ目はお兄ちゃんにこれ以上悪い虫がつかなくなることです! レインさんだけならまだお兄ちゃんの片腕は空いているので、まだヒナが入れる余地はあります! 2つ目は若干不登校気味になっていたお兄ちゃんが高校二年生になって初めて登校する日にレインさんが転校してくることで、お兄ちゃんへの注目度が下がり、あまり目立たなくなることです!」
「おぉ......ヒナすげぇな、そこまで考えてたのか!」
1つ目の理由はともかく2つ目の理由は確かに俺にメリットしかないじゃないか!
進級してから2週間以上休んでたやつがいきなり登校再開したら嫌でも注目されてしまう。
だが、いい意味でも悪い意味でも目立つレインのような美少女が同じ日に転校生として紹介されれば、一気に俺へのクラスの注目がなくなる!
素晴らしい、素晴らしいぞこれは!
よく授業中にトイレに行きたくなっても席を立つ瞬間にクラス中から注目されるのが嫌で、ひたすらトイレを我慢するしかなかったような俺にとってはとても魅力的なアイデアだ!
俺はヒナのアイデアにとても感心し、ヒナの頭をよくやったとばかりに撫で回していると、
「ちょっとお兄ちゃん、くすぐったいです〜! 朝から激しいですね、そういうのは帰ってからにしてくださいっ」
突然の頭なでなで攻撃に耳まで赤くしたヒナはごにょごにょとなにかを呟く。
円満な兄妹関係にはスキンシップがたくさん必要なのだ。
朝のヒナとの会話を思い出しているといつの間にか学校に着いていた。
城西の生徒はほとんどが部活に所属しており、そしてほとんどの部活が強豪と言われる高校のため、朝練のために学校へ早く来る生徒がほとんどなので始業開始の直前の時間はあまり登校する人がいない。
「.....見てみてあの人ちょーキレイじゃない?」
「え? あ、ホントだ」
.....といっても俺のように部活未所属の生徒もちらほらいるため、何人かは同じように始業開始ギリギリに登校してくる。
レインを見てひそひそ話をしているつもりの女子生徒2人や、スマホを見ながら歩く生徒や自転車で猛スピードをだしながら校門をくぐる生徒、食パンを咥えて走る女の子など。
うん、いつもの光景だ。
学校内には部活のための様々な施設があるため、一般的な高校よりも数倍でかい城西の校舎を見て開いた口がふさがっていないレインの手を引くと、俺はほとんど2ヶ月ぶりとなる校舎の中へと足を踏み入れた。
最後まで見て頂いてありがとうございます!(´▽`)
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