プロローグ + 第1話
プロローグ
「ーーーなさい、ーわよ.....、起きなさい、おき、起きなさいってば、朝になったわよ!」
まぶたの向こう側がわずかに明るくなっていることから、また憂鬱な一日が始まったことを悟る。
女の子の声のする目覚まし時計など買った覚えもないが、頭上にセットした自分の目覚まし時計に手を伸ばす。
だが手にした時計は既に止まっており、寝ぼけていたのかとわずかに開いた目を再度閉じる。
「あたしを無視して二度寝とはいいご身分ね......起きなさい! そしてあたしの朝食を早く作るのよ」
毛布の中で丸くなる俺の腹の上でもぞもぞとなにかが動きながら自分の朝食をねだってくる。
腹の上に乗るモノの感覚とその声に意識を覚醒させられた俺は微かに目を開け、つい先日のことを思い出していたーー。
第1話
ーーーー普段から自分の部屋に引きこもっている俺は、今日は珍しく外出.....なんてすることもなく普段と変わらず部屋に引きこもり、PCの前で自作のRPGをプレイしていた。
当然自分で作ったわけなのだからストーリーもキャラ相性も全て分かっているが、これは本格的にこの作品を世に出す前の試運転だ。
バクが発生しないか、逆にバグを利用したグリッチを不正判定出来るかどうか.....など試すことはたくさんある。
そもそもバグを無くせばグリッチを防げるのだがこれは俺の性格の悪さの問題だ。
不本意のグリッチならともかく悪質なものはそれまでのセーブデータを初期化するように組んだのだ。
我ながら性格が悪いのは承知だがこの性悪さも含めて俺のゲームは完成する。
......と脳内で性格の悪さを肯定する理由づけをしているといつの間にかゲームをクリアしていた。
「......よし、特に難なくクリアすることが出来たな。バグも減ったしグリッチ判定も正常だ。まさかグリッチ判定が正常か試すだけで999回も初期化されるとは思っていなかったが......」
我ながらアホなことをしているとは思うが、それもこれも時間を持て余しすぎた引きこもりの暇つぶし方法なのだと自分を納得させていたところだった。
<ーーーー、ーーーーーー>
記念すべき1000回目のゲームクリア画面がテレビをアナログ放送に間違えて切り替えてしまった時のような砂嵐を起こし、クリア時の華やかなBGMにはノイズが混じっているように聴こえる。
<ーーーー、ーーーーーー>
「なんだこれ1000回目にして新バグかよ、勘弁してくれ......」
完成していたと思っていた矢先に出現した新たな悩みの種となるこの新バグに、どう対処しようかと考え込んでいると、砂嵐の向こうにあるクリア画面に映るキャラの1人がなにかセリフを話していることに気づく。
<ーーそは、ーーーー界に>
砂嵐が邪魔をしてよく読むことが出来ない。
というか、クリア後にこんな演出は用意していないはずだが......
<次こそは、ーーな世界に>
電気も付いていない暗いままの部屋の中、俺はそのキャラが話していることを読み取ろうと、画面に顔を近づけ......
<次こそは、平和な世界に>
「次こそは、平和な世界に......? なんだこれこんな演出用意してないぞ......ってうわぁ!」
俺がキャラのセリフを口に出した途端、クリア画面は砂嵐に覆われ完全に見えなくなり、画面から猫のような生き物が飛び出してきた!
「な、なんだコレ.....何がどうなってんだ......?」
画面から飛び出してきた生き物はそのまま暗闇に溶け込み、見えなくなってしまった。
「そうだ、電気、電気つければ...」
慌てた俺は部屋の入口の横に付いている部屋の明かりを灯すスイッチを押すために駆け出し
「んニ"ャ"ァァ"..!?」
「......は?」
何も見えない暗闇で、何かを踏んずけバランスを崩しスイッチを押した瞬間にそのまま床に倒れ込んだ。
「今俺何踏んだ?もしかしてさっきの猫か?」
「もしかしなくてもその猫よ」
「そっかそっかまさに猫踏んじゃった......ってえぇえ! なんだコレ猫が喋った!?」
倒れ込んだ俺の目に映ったのは、まるでなにも描かれていない真っ白なキャンバスのような体毛と、雲ひとつない青空のように澄んだ碧眼の瞳を持つ猫だった。
その猫は先程俺に踏まれた箇所を丁寧に毛繕いをしながら再び言葉を紡ぐ。
「あんたがあたしの創造者ね! よくもあんな世界を何回も何周もさせてくれたわね」
「まてまて、猫がなんで喋ってるのかが気になってなにも話が入ってこない。創造者?あんな世界?どういうことだ?」
目の前の光景が信じられないまま、対面する猫との会話が続く。
「あぁ、そうね、この世界はマナの集まりが悪いみたいだわ。少し待ってちょうだい」
「はぁ.....?」
未だ猫が話していることを理解できないまま猫を見つめていると、その猫の体に淡い光の粒のようなものが集まりだした。
「おい、なんだこれは.....」
その淡い光の粒は猫の体をみるみる覆っていくと、最終的には俺と身長が変わらないほどの大きな二足歩行のような形に変形していき......
「じゃーん! 猫というのは仮の姿、そう、あたしの真の姿はこれよ!」
「ほう、これは見事なAカップ」
金髪碧眼美少女が産まれたての姿で俺の前に現れた!
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