転生
「うーん、ここどこ?」
辺りを見渡すと屋内のようだった。
陽葵は自分が椅子に座っていることに気がついた。そして、自分の足が床についていないことにも。
右には木製と一目でわかるドアがあり、自分の目の前には小物が一つもない机がある。
少し考えた後、ぴょんと飛び降りて自分の身体を調べることにした。
身長は110センチくらい?顔なんかは鏡がないとわからない。
服は少しほつれているワンピースだ。
「いいんだか、悪いんだか」
元の世界では薄汚くて着ようとは思わなかっただろうが、ここは異世界だ。これが普通かもしれない。もしかしたら、もしかしたらだけど虐待とかそういう線もあるかもしれない。その時は神様を末代まで祟ってやる〜。あれ?神様って代とか存在するのかな?
どうでもいいことを考えていると右のドアが開いた。
振り向くと中学生くらいの男の子が立っていた。
(誰?)
「エリン?*¥#:…。€^&+_?」
その瞬間、頭がキーンと響き、クラっとくる。
男の子がなんか言ってるのは分かる。
ただ何を言ってるか全然分からないし、男の子が一言発するたびに頭が痛くなってる気がする。
「々_£※〆‘“.>〜(:%$<・!!!!」
男の子が何か叫んだ時、陽葵は意識を手放した。
次に目をさましたのはベッドの上だった。
ベッドは前世ほどではないが柔らかいというレベルだった。
5000リベルもしたんだ。柔らかいに決まってる。
(・・・ん?リベル?)
そして全てを思い出した。
この世界で私の名前はエリン。中流の家庭に生まれた9歳の女の子。
兄がアキト。母がユーリで、父がガルドだ。
さっきの男の子は兄だったらしい。元が高校生の私から見たら弟なんだけどね。
女の子だからか大切に育てられているし、兄のアキトからも可愛がられているらしい。
(これで虐待はないかな)
一人で安心していると、ドアが開いて女性が飛び込んできた。
そしてそれを眺めているのも束の間、豊満な胸に抱きしめられていた。
(苦しい!苦しい!ちょっと待って死ぬ!!)
死ぬ気で腕をタップしているとやっと離してくれた。
「大丈夫?顔が真っ赤だよ。まだ熱がある?お水飲む?あなた、二日も起きなかったんだからね。もうお母さん心配で心配で」
やっぱり愛されてる。
いや、前半はあなたのせいなんですけどね、母さん。前世がまな板だった私はその凶器(物理的に)を睨む。
そして、ふと気がついた。私も将来有望ではと。
(この世界でも遺伝がありますように!)
命をかけて願った。
そういえば神様も同類だった。
その日の夜、私を含めて家族会議が開かれた。対面に肩幅が広いイカツイおじさんが座っている。
この人が父さんだ。
「エリン、二日前、どこに行っていた?」
会議は父さんの真剣そうな一言から始まった。
(二日前は・・・あれ?記憶がない。他の時間ならだいたい見れるのに。そういえばたまに記憶がない時がある。この合間はなんだろう。)
「また覚えてないのか?」
「また?」
「・・・それも忘れたのか?」
エリンの記憶を探ると何回かあった家族会議でも同じ状況になっている。
気を失ったわけではなかったが。