終わらない初恋
課題 【夏の恋】
字数制限300~600字程度
で書いた作品。
製作時間は15分ほど
7月1日。
感覚的、大っ嫌いな夏の幕開け。
少し茶色の瞳に映る世界は、自然の緑色が五月蠅く飛び込んでくる。
人によっては夏といえば6月、8月からであるという人も居るだろう。しかし、黒髪の彼は断然7月派だ。
最も、昔の彼であれば夏は夏至のある6月からだ。と、断言していただろう。
7月5日。
夏休み直前の期末テストが終わった。
本来であればテスト返却が行われてから「長期休暇」に突入するところだが、彼はある事情から返却前に、みんなより少し早めの夏休みを貰うこととなった。
先生から「じゃあ、元気でな」と、背中を押される。
7月9日。
目的地に着いた彼は一人、蝉の羽化を眺めていた。
偶然通りかかった道の小脇で、殻を破り、翡翠色の成虫が出てきている。
その光景を見て、「懐かしい」と、小さく呟いた。
子供の頃は毎日見ていた光景だったからだ。
7月13日。
持ってきていた制服に身を包んで、彼は花を買いに花屋を訪れていた。
毎年この時期に買いに来ているからか、花屋の店員とは仲がいい。
「去年と同じにする?」と、聞かれたが彼は「今年はこれが良い」。そう、去年は無かった花を指さす。
彼の瞳は少し潤んでいた。
同日。
墓の前で彼は震える拳を握っていた。
もう2度と会えない、最愛の人。
彼女が死んでもう6年になる。
「今年は君と同じ名前の花だよ、桔梗」
花言葉は「永遠の愛」。
彼の初恋は実らず、終わっていなかった。
「終わらない初恋」どうだったでしょうか?
夏の恋がテーマだったので、個人的な「恋」という概念の解釈を加えて一生実ることのない恋を描きました。
感想、評価など、お待ちしております。
では、次の投稿で。