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第4話 歓迎パーリータイム

「戻ったぜぇ」

通太がシェアハウスに帰ってきた頃には日が沈みかけていた。買ってくるものが重かったことに加えて、スーパーが案外遠く、もう足が棒のようだ。

「おかえり~。皆ホールにいるからおいで~」

美和の声がきこえた。(うなが)されるままホールへいくと、机の上には豪華な料理とジュースが並んでいた。

「バッチリ頼まれた物を買ってきたぜ。それにしても凄いな、この料理!!」

通太が言うと美和がクスリと笑って

「そうでしょ!!これ柚くんがつくったのよ。買ってきてくれたのは柚くんに渡してきて。」

「柚はどこにいるんだ?」

「キッチンにいるわ。」

美和に指をさされた先を見ると柚がエプロンを付けて、手際よく調理器具を洗っていた。よく見ると柚の隣で子白がシンクを拭いていた。通太は柚の肩をつついた。

「はい、これ買ってきた。」

柚は少し驚いたようだったがすぐに

「あ、買ってきて下さったのですね。ありがとうございます!!」

と言い、通太の手から買い物袋をとった。先程の恐怖感が抜けている。通太の入居が決定したからだろうか。

「あ、林檎!!子白さん!!これでデザートが作れますね!」

柚が子白に話しかけると子白は満面の笑みを浮かべた。が、通太の視線に気づくと、そっぽをむいてしまった。

「後は僕が全部やるので、子白さんと通太さんは皆さんと一緒にお食事をなさっていてください。」

柚が小さな声でそう言うと子白は

「皆さ~ん、もう食べていてもいいそうですよ~」

と大きな声で言った。すると、住人の皆が食卓についた。が、通太の席がない。彼を含めて9人がこの家にいるのに茶碗が8つしかない。子白の隣の席が空いていたが、椅子と茶碗の大きさからして柚の席だ。通太が立ち尽くしていると、

「すみません。忘れてましたぁ。」

といいながら柚がご飯が山盛りの茶碗を持ってキッチンから走ってきた。

「とりあえず椅子がないので僕の席をお使いください。」

そういって、通太に茶碗を渡すと柚はキッチンに戻っていった。子白を見ると全力で顔をしかめている。

(どんだけ嫌われてんだよ、俺は!?)

申し訳なさそうに椅子に座ると、管理人が

「よーし、全員揃った!!それじゃ、いただきます!」

と手を合わせた。次の瞬間、管理人は箸を超高速で動かしおかずを次々ととっていった。その勢いに若干、気押されながら通太は自分の茶碗に目をやる。とにかく多い。

「ご飯多すぎだろ!」

思わず声が出てしまった。すると管理人が急に箸を止め

「ふっ、まだまだ未熟者よのう。」

と、変な言葉使いで得意気に言った。訳もわからず管理人の席を見ると、そこには丼といってもおかしくないくらい大きな茶碗に山盛りのご飯がよそわれていた。

「ナニソレ?!多っ!」

「あんたは男なのにあたしより食えないのか?」

からかい半分にそう言われ、通太の中の何かがはじけた。

「あぁ?上等だぁ!あんたの2倍は食ってやらぁ!いっそのこと世界中の米を食らいつくしてやるよ!」

そういって、通太は米を一気に口の中へ突っ込んだ。







ー数十分後ー

「あんた、なかなかやるじゃないか。」

「くそッ、負けたっ!!男としての誇りがぁぁ」

通太はあと一歩で管理人に負けた。

(...もう.......お腹がはち切れそうだ.....。管理人の胃袋は4次元ポケットなのか?)

「デザートですよ。」

そういって、柚がパフェを持ってきた。

(林檎(りんご)はこれにつかったんだな。にしてもさっきの料理パフェが作れるなんて、柚の家事力すげぇなぁ.....)。「デザートは別腹だ」なんていいながら管理人がパフェをパクパクと食べている。通太も一口食べてみた。

(美味い!!多分店で売ってても違和感がない!!)

すぐに完食し、あいた容器は柚が回収した。

「通太、お前飲めるか?酒。」

突然、管理人が通太に聞いてきた。

「あぁ、飲めるぞ!」

通太が答えると、再び洗い物をしていた柚に

「柚~、焼酎(しょうちゅう)1本持ってきてくれるか~?」

と頼んだ。柚は即座に2つのコップと焼酎のビンを持ってきた。管理人は2つのコップに焼酎を注ぐと、うすめもしないで、そのうちのひとつを通太に渡した。

「お湯とかで割らねえのか?」

通太が聞くと管理人は当たり前だろ、と言いたそうな顔をして焼酎を口の中へ流し込む。通太もそれにあわせて焼酎を飲む。すぐに顔が火照(ほて)ってきたのがわかる。彼の顔を見て管理人が

「あはははははww酔うの速wwあはははははw

w」

顔を赤くして笑っている。

(管理人も酔うのが速いじゃんか!?。それに、管理人は酒癖が悪いみたいだな.......。)

変なテンションで笑い転げている。

「あらら....管理人さん......お酒苦手なんですから....」

とことこと歩いてきた柚が手を拭きながら管理人を心配そうに見つめた。

「柚!!さっきのパフェうまかったぞ!!ありがとな!!」

「いえ、お気に召したのならよかったです。」

柚は控えめにそう言うと管理人に水を渡した。

「これでも飲んで落ち着いてくださいね。それでは、僕と子白さんはもう寝ますので、二人ともほどほどにしてくださいね。」

そういって、柚は椅子に座ってお茶を飲んでいた子白と共にホールから出ていった。その瞬間、管理人が持っていた水入りのコップを床に捨て、腕を俺の肩に回した。

「なぁ、通太、焼酎がなくなったんだけど、もうないのかぁ~?」

「あ~、他の酒なら買ってきたけど、焼酎はないと思うぞ。他のだったら持ってこようか?」

通太がそう言うと、管理人は彼の首を軽く閉めた。

「ばかやろぉ、酒っていったら焼酎だろうがぁ」

管理人の脳はアルコールによって正常に作動してない。

「ギブ!!ギブ!!」

通太はそう叫び、管理人の腕を叩いたがやめる気配がない。すると、管理人が急に床に倒れ、そのまま寝始めた。美和が駆け寄り、毛布をかけた。

「あらら......結構飲んでる.........通太くんが来てくれて嬉しかったのね。きっと、」

そう言って、微笑む。美和が床に座り込んだのにつられて通太も床に座り込んだ。

「なぁ、本当に俺が入居していいのか?」

「うん。勿論いいんだよ。」

「そっか。ありがとな」

通太が言ったとき、「キャァァァァ」という先程部屋から出ていった二人の叫び声が聞こえた……


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